2016年の北京の映像ですが、高層ビルが並ぶ北京中心部の空が白くかすんでいます。当時は大気汚染物質PM2.5の値が日本の環境基準の10倍以上に達することもありました。

18日に撮影した映像と比べると、その差は歴然です。現在も冬場は時々PM2.5が確認される日もありますが、以前に比べると大幅に改善しています。

中国は2010年代から環境対策に力を入れていて、街中には緑色のナンバーを付けたEV＝電気自動車が多く走っています。習近平国家主席は2060年までにCO2排出を実質ゼロにすると宣言。総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は現在58.3％にのぼり、大きく伸びているのです。

中国メディアも、世界から中国の取り組みが賞賛されたとアピールしていて、COP29を報じた中国共産党系の新聞を見てみますと、「中国の努力が認められた」と報じていて、「中国は、他の国よりもはるかに速いスピードで再生可能エネルギーを導入した」と自画自賛しています。

――長谷川さん、中国こうした取り組み、一方でウラの「本当の狙い」は何なのでしょうか？

中国の動きを考える上で注目すべきはトランプ氏の動向で、今を絶好のチャンスと捉えているとみられます。アメリカ大統領選で、トランプ氏は地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」から離脱する方針を示していて、気候変動問題への取り組みを後退させる恐れがあります。

このため中国にとってこの問題はアメリカに取って代わり、世界のリーダーとしてアピールする絶好の機会となります。先ほどのCOP29を報じた新聞では、「中国が国際社会の協力を呼びかけ、拍手喝采を浴びた」などとしているのです。

その一方で、国際社会から批判を浴びているのは「中国の立ち位置」です。COP29では、先進国が、途上国の気候変動対策を資金面でどこまで支援するか大きな争点となっています。中国の丁薛祥副首相は演説で「先進国に対し途上国への資金援助を拡大するよう求める」と発言。

実はこれ、中国は途上国、つまり資金援助を受け取る側としての発言です。世界第二の経済大国で、温室効果ガスの排出でも世界一の中国は今でも自らを「途上国」としています。ただ、各国からは資金を提供する側に回るよう、求められているのです。

また、国が主導し、一気呵成に進めた気候変動対策のひずみも現れています。国が強力に推し進めたEV車ですが、過剰生産しすぎて空き地に数百台が放置され、まるで“EVの墓場”のようになっている場所もあるのです。

22日、閉幕するCOP29。中国にはいまアピールだけでは無い大国としての責任が問われています。【#きっかけ解説】