「気候アパルトヘイト」とは…気候変動で格差拡大のワケ COP29開幕【#きっかけ解説】
──今週、気候変動への対策などを話し合うCOP29が始まりました。日本でも11月に夏日があって気温の上昇を肌で感じますが、気候変動への危機感はどれくらい高まっているのでしょうか。
今、本腰を入れなければ、本当に取り返しがつかなくなると言われています。世界の平均気温が、産業革命のときからどれくらい上昇したかを見てみると、ここ50年ほどで急上昇しているのがわかります。
背景にあるのは温室効果ガスで、世界の二酸化炭素の排出量は今年、過去最高になる見込みです。
WMO=世界気象機関は11日、2024年の1月から9月までの平均気温が、18世紀に始まった産業革命以前と比べて1.54度高かったと発表しました。この「1.5度を上回った」というのは非常に深刻な事態なんです。
2015年のパリ協定では、産業革命以降の気温の上昇幅を1.5度以内におさえるという国際的な目標が掲げられています。その数字を超えてしまうと、人間の努力ではどうにもできなくなり、気候変動による悪影響がはるかに大きくなるとされています。
その影響が異常気象としてあらわれています。例えば、先月スペインでは、洪水で200人以上が亡くなりました。今、世界中で洪水や、熱波、干ばつ、森林火災が多発していて、多くの犠牲者も出ています。
さらに今、問題となっているのが気候変動の被害を「受けやすい人」と「受けにくい人」の格差です。これは「気候アパルトヘイト」と呼ばれています。
──この言葉、初めて聞きました。
「アパルトヘイト」は「分離」などを意味する言葉なのですが、先進国と発展途上国との間にある格差が、気候変動によってさらに広がってしまうのが「気候アパルトヘイト」なのです。
例えば、暑ければエアコンをつける、洪水が起きれば丈夫で高い建物に避難する、といった私たちにとって当たり前のことができない国が多くあります。
発展途上国は、災害をしのぐ手段がそもそも少ないんですね。それに加えて、気候変動が原因で家が壊れて住めない、食料が確保できない、また感染症がはやりやすいといったことから、それまでと同じ生活ができなくなり、さらに貧しくなるという問題も起きてくるのです。
しかも、先進国は二酸化炭素をより多く排出していて、発展途上国はあまり排出していないという「矛盾」もあります。
──こうした問題への対策はとられているのでしょうか?
先進国が発展途上国に対して、気候変動の被害を埋め合わせるための基金が、ロス&ダメージファンド=「損失と損害」基金というものです。
国ごとの二酸化炭素の排出量ランキングと「損失と損害」基金への拠出額ランキングを見てみると、排出量1位の中国は基金に参加していません。2位のアメリカも拠出額は11番目です。日本は世界5位の排出国ですが、上から15番目の拠出額となっています。
──このニュースで、小坂記者が一番知ってほしいことは何ですか?
「気候変動のしわ寄せ」です。日本のような先進国が気候変動への抜本的な対策をとらなければ、特に発展途上国がその被害にあえぐことになります。
そして、この現状を変えるには、私たちひとりひとりの意識だけではなく、大きな力を持っている政府や企業の姿勢が変わっていく必要があると思います。【#きっかけ解説】