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“廃鶏グルメ”で村おこし!「大好きな豊根村に住み続けたい!」パワフル女社長の奮闘記

2024年1月10日 18:04
“廃鶏グルメ”で村おこし!「大好きな豊根村に住み続けたい!」パワフル女社長の奮闘記

3年前に愛知県で販売し、いまや全国に広がった豊根村発のローカルグルメ「廃鶏(ハイケイ)」。今まで村民の間でしか食べられてこなかった「廃鶏」がなぜ、これほど全国区になったのか。「廃鶏」の販路を全国に拡大し、わずか3年で売上を約40倍に伸ばした、若き女社長に密着。“やれることは全部やらないと”と類いまれなる行動力で突き進む思いには、豊根村への愛が溢れていた。

愛知県豊根村発のローカルグルメ「廃鶏」とは?

豊かな自然に囲まれた、人口約960人の小さな村・豊根村。この村で生まれたローカルグルメ「味付け廃鶏(ハイケイ)」が、今話題を集めている。

“廃鶏”とは、卵を生み終わった親鶏のことで、柔らかな若鶏とは対照的に歯ごたえがあり、コリコリとした食感が特徴。この「廃鶏」を秘伝にタレにつけ込んだものが「味付け廃鶏」だ。地元民からは、“噛めば噛むほど味が出る”、“ご飯片手に、ビール片手に廃鶏をかき込むのが最高!”など、多くのラブコールが寄せるなど地元民溺愛のソウルフードだ。

おいしさの秘密は、みそ・しょうゆをベースに、リンゴやニンニク、砂糖などを混ぜ合わせた“秘伝のタレ”。ガツンと濃い味付けの秘伝のタレを、食べやすく切った廃鶏に染みこませて仕上げていく。

この「味付け廃鶏」を全国に売り出したい!と一念発起したのが、名古屋市から豊根村に嫁いできた胡桃珠音さん26歳。いまや廃鶏グルメの販路を全国に拡大し、わずか3年で売上をおよそ40倍に伸ばしたパワフル女社長だ。

明るい笑顔で周りを巻き込み、道を切り開いてきた珠音さん。しかし、全国展開に至るまでは、さまざまな壁があった。

“ソウルフード「味付け廃鶏」をどうしても全国に売り出したい”

固い決意で奮闘する彼女の3年間に密着した。

“廃鶏の唐揚げ”で物産展出店に挑戦

「いらっしゃいませ、こんにちは~!お肉いかがですか~?」
密着1年目、珠音さんと珠音さんの夫・芳太郎さんは、名古屋市の「オアシス21」の物産展にいた。冷凍肉として販売していた「味付け廃鶏」を、手軽に食べられる唐揚げとしても売り出すことを開始したのだ。販売商品のメインは、廃鶏を唐揚げにした「ハイカラ」(650円)だ。

呼び込み担当は、夫・芳太郎さん。仕事では、社員として珠音さんを支えるパートナーだ。オアシス21で呼び込みを続ける夫婦だが、なかなかお客さんに立ち止まってもらうことができない。そこで珠音さんは、その場でお皿を調達。パッと見て何が売られているか分かりやすいよう、中身をディスプレイすることしたのだ。「やれることはやらないと」と、次々と唐揚げをお皿に盛り付けていく珠音さん。作戦は功を奏し、徐々にお客さんが足を止め、唐揚げを購入してもらえるように。

購入したお客さんからは、「味もしっかりついていておいしいです」など高評価。しかし、「“揚げたて”だったらもっとおいしいかも」「ちょっと冷えちゃっているので、もうちょっと温かいのとか、揚げたてが食べられるとおいしいかなと」など声を寄せられるなど、次回への課題が見つかった物産展となった。

キッチンカー販売で大盛況!

厳しい意見も寄せられた物産展から2ヶ月後、珠音さんは豊根村で開催されていた「茶臼山高原の芝桜まつり」に出店していた。販売場所は、調理機器などもついたキッチンカー!なんと、“できたてアツアツの廃鶏グルメを食べてほしい”という想いから、250万円かけてキッチンカーを作ったのだ。

また、メニューも大幅にリニューアル!イベントでは、焼きたての廃鶏をごはんの上にのせて温玉とマヨネーズで味わう「廃鶏丼」(850円)、廃鶏を卵とチーズでサンドした「廃鶏バーガー」(850円)、食べ応えのある太めの麺と特製のタレで楽しむ「廃鶏油そば」(850円)の3品を追加。新メニューは、子どもから大人まで大好評で次から次へとお客さんが来店!ピーク時には30分近い待ち時間が発生するなど、大盛況で幕を閉じた。

「大好きな豊根村にこの先も住み続けたい」

「自分のことを信じて、豊根村に来て結婚してくれた。(仕事では)本当にしっかりした社長なので、信じてついていっています」と珠音さんに深い信頼を寄せる夫・芳太郎さん。

2人が出会ったのは、珠音さんが地域おこし協力隊として村に訪れていた20歳の時。そこからすぐに交際をスタートし、4年前にゴールインした。ケンカもするけれど、普段はとても仲良しな2人。結婚について2人は、「よっちゃん(芳太郎さん)の功績なんですよ、私と結婚したことは。村民のみんなに、“よくやった芳太郎”って言われて(笑)」と話し、続けて芳太郎さんが「村民一人増やすだけで相当な功績なんです」と笑顔で振り返った。

過疎が進む豊根村。30年後には人口が半分以下になる試算もあるといわれている。こうした豊根村の現状について、珠音さんは「今、頑張らないと、30~40年後に豊根村に住めないかもしれない。生涯豊根村にいたくても、住めないかもしれない。なので、“廃鶏”をきっかけに、村おこしを事業としてやっていこうと思いました」と話す。

“大好きな豊根村にこの先もずっと住み続けたい”

この想いこそ、珠音さんが廃鶏グルメの販売を頑張る理由だったのだ。

単に利益を上げるためではなく、目的は村全体を活性化。珠音さんは、味付け廃鶏の販路拡大に注力し、そこからわずか1年で取引先を全国26社へ拡大することに成功。北は北海道から、南は岡山まで販路を拡大し、“廃鶏”を全国区のローカルグルメとして押し上げたのだ。

常設店舗の新メニューはホットドック!

珠音さんが次に挑戦することになったのは、“常設の店舗”での廃鶏グルメの提供。なんと、愛知県設楽町の「つぐ高原グリーンパーク」にて、期間限定で常設店舗を出店することになったのだ。

メニューは、キッチンカーで大好評だった3品に加えて、豊根村で作られているフランクを使った「手作りのホットドッグ」(850円)。期間限定の出店ではあったが、“廃鶏”だけでなく、豊根村をPRする新たな一歩となった。

「雇用選択肢を増やしたい!」アパレル事業に込めた想い

珠音さんが豊根村を盛り上げる取り組みはさらに進化。なんと、新規事業として、アパレルブランド「和輪」を立ち上げることを決めたのだ。起業の理由について、「地域の根本問題を解決していくには、地域の子どもたちの未来を広げるということで、職種の選択肢を増やすとか、“村内でもこんな仕事ができるんだよ”という、道を示していかなければいけないなと思いました」と語る珠音さん。

その熱意が自治体にも伝わり、「和輪」は中学生の職場体験先にも選ばれた。「和輪」としての目標は、近い将来に村の若者を雇用すること。「廃鶏」だけにとどまらず、珠音さんの“村おこし”の取り組みは様々な形で続いていく。

そんな珠音さんの取り組みについて、豊根村の人々は「“若さ”ならではのパワー。進むぞという力がすごく強い」、「こうして若い人が来て、仕事をしてくれたり、こういうものを作ってくれるのはすごい大事。なんとしてでも、応援したい」など笑顔が話す。

密着して3年。現在の思いについて、珠音さんは「“地域活性”って、わずか3年で成せるようなものではないなと、この3年で本当に思いました。3年だけでは、まだ手応えはないけれど、着実につながっているなとは思う。このまま折れずに、頑張っていきたいなと思います」と語った。

豊根村への愛をもって、“村おこし”に奔走する若き女社長。彼女の取り組みを、今後も応援し続けたい。

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