岐阜・土岐市で「出張輪島朝市」開催 海産物や輪島塗などを販売する12店舗が出店 豪雨の犠牲となった中学生も過去に手伝いを…
復興への道半ばで起きた豪雨被害 「今回はダメージが大きい」
10月5日、岐阜県土岐市の「イオンモール土岐」で復興支援イベントとして行われた「出張輪島朝市」。海産物や輪島塗など、輪島の魅力が詰まった商品を販売する12店舗が出店しました。
1000年以上の歴史を持つ輪島の朝市は、石川県にある奥能登の名物の一つとされています。しかし、今年元日の能登半島地震による大規模な火災で、ほぼ全域が焼けてしまいました。
その後、伝統の輪島朝市は“出張”という形で再開しましたが、9月21日に記録的な豪雨が発生。14人が亡くなり、いまだ1人の安否が不明なままです。
輪島市で塩を作り販売している橋本さんも、塩を袋に詰める作業などをする場所が、床上浸水の被害にあってしまったそうで、商品が作れない状態だといいます。
豪雨で被災した 橋本三奈子さん:
「今回は泥水がついてしまったので、全部外に出して。けっこう廃棄するものばっかりでダメージが大きいです」
今回の「出張輪島朝市」へは無事だった塩を持ってきたそうです。
豪雨の犠牲となった中学生も過去に「出張輪島朝市」を手伝っていた…
実は、今回の「出張輪島朝市」には13店舗が参加予定だったのですが、 1店舗だけキャンセルになっていました。
出店を見合わせたのは、漆器の販売をしている喜三(きそ)さん。9月の豪雨で犠牲になった、輪島市の中学3年生・喜三翼音(はのん)さん(14)の家族です。
翼音さんは、あの日、自宅の2階にいて家ごと流されたとみられています。
今年3月に金沢市で行われた「出張輪島朝市」では、輪島塗職人の祖父を手伝う翼音さんの姿がありました。塩を販売する橋本さんによると、翼音さんは大人しい感じで、お客さんに「いらっしゃいませ」と大きな声をかけるのは、まだ恥ずかしい様子だったと話します。
翼音さんの祖父:
「『じいちゃん、ばあちゃん、私も手伝ってあげるよ』ってところからね、ほとんどの出張朝市も一緒にやってて、お客さんの呼び込みから、お金の勘定から、すべて自分でできるようになった」
絵が好きだったという翼音さん。輪島塗の仕事にも興味をもっていたといいます。豪雨により、尊い命が奪われてしまいました。
二度の被災で出店を休もうと考える人も…
今回出店した人の中には、次の「出張輪島朝市」から休もうと考えている人もいました。ご主人が作った輪島塗の箸などを朝市で売っていた鮓井(すしい)さんです。
豪雨で被災した 鮓井喜代美さん:
「今(地震後の)振り出しどころか(豪雨で)マイナススタートになってしまって。私は、今月いっぱいは輪島にいて、市役所に行ったり片付けとか」
鮓井さんは、地震で自宅の横にあった漆塗りの工房が全壊。豪雨では、市から提供してもらった仮設工房が泥水に襲われました。さらに、自宅の裏山が崩れ、大量の土砂が室内に流れ込んだそうです。
こうした被害により、ご主人が1年がかりで仕上げた取り箸も現在は作ることができず、残り少なくなってしまったそうです。
それでも、「出張朝市にやってくると『頑張ってね』と声をかけてもらえるので勇気づけられる」と話し、笑顔を見せてくれました。
身近な場所で「出張輪島朝市」が開催されると直接的な応援もしやすくなりますが、今はそれもままならない状況のようです。一日でも早く輪島で朝市が開かれる日を迎えるために、私たち一人ひとりが支援を続けていく必要がありそうです。