【冒頭発言】クイーンビートルの浸水隠し「安全を無視して運航」JR九州の古宮社長が定例会見で謝罪 原因究明のため第三者委員会の設置を検討 福岡
博多と韓国・釜山を結ぶ高速船「クイーンビートル」が亀裂による浸水を隠し、4か月間、運航を続けていた問題です。運航する「JR九州高速船」の親会社のJR九州の古宮洋二社長が22日午後、定例会見で謝罪しました。
警報が鳴らないよう浸水センサーをずらす
この問題は、2024年2月、クイーンビートルに浸水が見つかったのに、修理や検査、国への報告をせず、およそ4か月、運航を続けていたものです。
その間、航海日誌に「異常なし」とウソの記載をしたり、浸水警報が頻繁に鳴らないよう、船底から44センチのところにあった警報センサーを、船底から1メートルの高さにずらしたりしていました。8月、国の抜き打ち監査で発覚しました。
クイーンビートルは13日から運休しています。
「安全を無視して運航した」
22日午後2時からの定例会見の冒頭、JR九州高速船の親会社のJR九州の古宮社長は「安全を無視して船を運航した。ゼロから安全を立て直して皆様の信頼回復に努めて参ります。このたびは申し訳ございませんでした」と謝罪しました。
現在、原因究明に努めているとして、上層部へのヒアリングが終わり、今は高速船の社員全員へのヒアリングをしていて、結果の公表にはもう少し時間がかかると説明しました。
その上で、外部の視点からの原因究明や対策の評価をしてもらうとして、第三者委員会の設置をする方向で検討していると述べました。
JR九州高速船の組織や人事については検討中だとしました。
時系列で詳しく
2月に浸水を確認した際に、九州運輸局に報告せず運航を続けたことについて、JR九州は、当時のJR九州高速船の社長で現在は取締役に降格した田中渉氏(56)が判断して指示をしたとしています。
JR九州とJR九州高速船は14日の時点で、問題の経緯について次のように説明しています。
■2023年
2月11日、船首区画の浸水警報が作動し、浸水を確認。12日、クラック(亀裂)を確認して応急措置をした後、JR九州高速船は九州運輸局とJR九州に報告しないまま、運行を継続。
14日、修理計画の説明のため九州運輸局を訪れた際、臨時検査が終わるまでの間の運航停止を指示され、同時にJR九州に報告。15日、海上保安庁に報告し、同じ日から国土交通省が監査を開始。
国交省から運航再開を承認されたのを受け、3月5日に運航を再開。
航海日誌に「異常なし」
■2024年
1月4日、浸水を確認。クラック(亀裂)は確認できず、九州運輸局に報告後、経過を観察。
1月12日、九州運輸局から状況の改善が見られないとして運航停止と臨時検査を指示され、13日、運航を停止。
1月25日、運航を再開。
2月12日、少量の浸水を確認して田中社長(当時)も把握したが、九州運輸局に報告せず。浸水の量に関する管理簿を作成し、これ以降、浸水を確認した場合は浸水量を管理簿に記載する一方で、航海日誌やメンテナンスログなどには「異常なし」と虚偽の記載。管理簿は表に出ないようにしていた。
2月20日、ボートでの外板チェックの結果、喫水線より上部に疑わしい箇所を発見。
4月3日、ドックで応急処置を行うため、7月16日からドックに入ることを決定。
5月27日、博多港に戻った際のチェックで、浸水量が増えたことを確認。
5月28日、浸水警報が頻繁に鳴らないよう、船底から44センチのところにあった警報センサーを、船底から1メートルの位置にずらす。同じ日、ドックに入る日を6月初旬に早める手配を開始。
5月30日、浸水量がさらに増加し、浸水警報が発動したため、九州運輸局に報告。運航を停止し、ドックに入る。
7月4日、臨時検査が結了。
7月11日、運航再開。
8月6日、国土交通省がJR九州高速船を監査。乗務員への聞き取り調査で、浸水を九州運輸局に報告していなかったことが発覚。
8月7日、国土交通省がJR九州高速船の田中社長(当時)ほか、取締役に事情聴取し、今回の問題を確認。
国土交通省は監査を続けていて、海上運送法に基づく行政処分を検討しています。