【時系列で詳しく】クイーンビートル「浸水隠し」航海日誌に「異常なし」浸水警報が鳴らないようセンサーを上にずらし運航続ける 国が抜き打ち監査で乗務員に聞き取り発覚 当時の社長の指示だった JR九州が初会見で謝罪 福岡
博多と韓国・釜山を結ぶ高速船「クイーンビートル」が亀裂による浸水を隠し、4か月間、運航を続けていた問題です。この問題を受けて、運航する「JR九州高速船」と親会社のJR九州は14日午前、初めて記者会見を開きました。
この問題は、2024年2月、クイーンビートルに浸水が見つかったのに、修理や検査、国への報告をせず、およそ4か月、運航を続けていたものです。
その間、浸水のデータを改ざんしたり、浸水センサーの位置を故意にずらしたりしていました。8月、国の抜き打ち監査で発覚しました。
クイーンビートルは13日から運休しています。
14日午前11時から始まった会見には、13日付でJR九州高速船の社長に就任した大羽健司氏(56)と、JR九州の常務で総合企画本部長の松下琢磨 氏、JR九州の山根久資 総務部長が出席しました。
JR九州高速船の社長を退き、取締役となった田中渉氏(56)は出席しませんでした。
会見の冒頭、JR九州の松下常務は「重大な安全確保に関する問題を発生させてしまいました。関係の皆様、多くのステークホルダーの皆様、国土交通省の皆様にご心配とご迷惑をおかけし、何より夏休みに入り旅行などで楽しみにされていた多くのお客様のご期待を裏切ることになってしまいました。誠に申し訳なく思っております。お詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」と謝罪しました。
2月に浸水を確認した際に、九州運輸局に報告せず運航を続けたことについては当時、JR九州高速船の社長だった田中氏が判断して指示したとしました。
「浸水隠し」のため、航海日誌に「異常なし」と虚偽の記載をしたことや、表に出さないセンサーの位置をずらしたことについても、田中氏は把握していたということです。
「浸水隠し」の理由など、田中氏への聞き取りの内容については今後、しっかり調べた上で明らかにしたいとして、会見の場では明らかにしませんでした。
航海日誌に「異常なし」時系列で詳しく
JR九州とJR九州高速船は14日、問題の経緯について、2023年にさかのぼり、次のように説明しました。
■2023年
2月11日、船首区画の浸水警報が作動し、浸水を確認。12日、クラック(亀裂)を確認して応急措置をした後、JR九州高速船は九州運輸局とJR九州に報告しないまま、運行を継続。
14日、修理計画の説明のため九州運輸局を訪れた際、臨時検査が終わるまでの間の運航停止を指示され、同時にJR九州に報告。15日、海上保安庁に報告し、同じ日から国土交通省が監査を開始。
国交省から運航再開を承認されたのを受け、3月5日に運航を再開。
■2024年
1月4日、浸水を確認。クラック(亀裂)は確認できず、九州運輸局に報告後、経過を観察。
1月12日、九州運輸局から状況の改善が見られないとして運航停止と臨時検査を指示され、13日、運航を停止。
1月25日、運航を再開。
2月12日、少量の浸水を確認して田中社長(当時)も把握したが、九州運輸局に報告せず。浸水の量に関する管理簿を作成し、これ以降、浸水を確認した場合は浸水量を管理簿に記載する一方で、航海日誌やメンテナンスログなどには「異常なし」と虚偽の記載。管理簿は表に出ないようにしていた。
2月20日、ボートでの外板チェックの結果、喫水線より上部に疑わしい箇所を発見。
4月3日、ドックで応急処置を行うため、7月16日からドックに入ることを決定。
5月27日、博多港に戻った際のチェックで、浸水量が増えたことを確認。
5月28日、浸水警報が頻繁に鳴らないよう、船底から44センチのところにあった警報センサーを、船底から1メートルの位置にずらす。同じ日、ドックに入る日を6月初旬に早める手配を開始。
5月30日、浸水量がさらに増加し、浸水警報が発動したため、九州運輸局に報告。運航を停止し、ドックに入る。
7月4日、臨時検査が結了。
7月11日、運航再開。
8月6日、国土交通省がJR九州高速船を監査。乗務員への聞き取り調査で、浸水を九州運輸局に報告していなかったことが発覚。
8月7日、国土交通省がJR九州高速船の田中社長(当時)ほか、取締役に事情聴取し、今回の問題を確認。
JR九州は「安全体制の見直しと社内の意識改革を図る」としていて、これが進むまで、13日から運休しているクイーンビートルは運航を再開しないとしています。
国土交通省は監査を続けていて、海上運送法に基づく行政処分を検討しています。