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手作り漬物に“消滅の危機” 改正食品衛生法で許可制に 「販売をやめる」人も 福岡

2024年2月14日 17:51
手作り漬物に“消滅の危機” 改正食品衛生法で許可制に 「販売をやめる」人も 福岡
手作りの漬物が6月に店から消える?

地元で採れた新鮮な野菜や果物が手に入るのが、道の駅など直売所の魅力です。ですが今、直売所に並ぶ手作りの漬物が、ある変化の時を迎えています。

■元木寛人フィールドキャスター
「糸島市の産直市場です。見てください、地元の人、手作りの漬物がずらりと並んでいるんですが、これらの漬物が6月以降、見られなくなるかもしれないんです。」

そのわけは『改正食品衛生法』です。

2021年に施行された改正食品衛生法で、「漬物製造」が許可制になりました。

3年間の猶予期間を経て、ことし6月から、許可を得ていない業者や農家は販売できなくなります。

許可を取るためには、手を触れなくても水が出るセンサー式手洗い場など、衛生状態を保つための設備が求められています。

ただ、改修費用が負担になります。

■JA糸島直販課・藤川秀則 課長
「(漬物販売を)やめる人もいると思います。漬物を楽しみに来店している客も多いので、一人でも多くの生産者に残ってもらいたい。」

“おばあちゃんの味”消滅の危機に、客の反応です。

■漬物を買う客
「長年使っている道具で作られている。いい菌が付いていて、それがいい味を出している。」

こちらは結婚式場の料理長です。

■客のマリーゴールド料理長
「(漬物がなくなるのは)困ります。味がおいしいので。作り手の顔が出るものは安心して食べられる。」

糸島市でたくあんのぬか漬けや高菜漬けを出品している樗木(ちしゃき)タツエさん、84歳です。

■みそや漬物の生産者・樗木タツエさん(84)
「ここで漬けている。今は空になっている。」

1981年から40年以上にわたって、母から受け継いだという味噌づくりとともに、高菜漬けやたくあんなどの漬物づくりを続けてきました。

■元木キャスター
「ものすごく酸っぱいです。酸味が口の中いっぱいに広がって、お酒が欲しくなるようなおいしさです。」

この長年受け継いできた自慢の味が途絶えることにもなりかねず、樗木さんは複雑な思いです。

■樗木さん
「どうして許可まで取らなくてはいけないのか…。(Q.一緒にやってきた人でもうやめる人も?)もう(漬物販売を)やめる人もいる。『許可まで取ってせんばい』と言って。」

樗木さんは今後、営業許可を申請し、漬物づくりを続けたいと話します。

■樗木さん
「“手作り”という伝統。みそも漬物も。いろんな知恵で加工してきたことを一部だが引き継いできている。どうにかして(許可を)取りにいかなければいけないと思っている。」

食中毒による思わぬ事故を防ぐ目的で改正された食品衛生法ですが、福岡県などによりますと、2015年以降、これまでに漬物が原因の食中毒は起きていません。