特集「キャッチ」漫画で“1型糖尿病”に理解を 突然発症し生涯インスリン注射が必要 姉の病がきっかけで描いた漫画は映画化へ 福岡
■主人公・かこ
「春からずっと体がだるくて。入院した病院で『1型糖尿病です』って言われた。」
漫画の主人公は小学5年生の少女「かこ」です。
「1型糖尿病」を患ったかこが、同じ病気と闘う子どもたちとさまざまな体験をする「サマーキャンプ」を舞台に、仲間と助け合い成長する姿が描かれています。
作者は北九州市門司区の漫画家、山田圭子さん(58)です。
■漫画家・山田圭子さん(58)
「1型糖尿病は、社会認知活動で様々な人達が努力しているが、なかなか広がり切れず、知ってほしい。それに尽きる。」
この漫画を書くきっかけになったのは、小学生の時に1型糖尿病を発症した姉の康子さんでした。
■山田さん
「絶対誰にも知られたくないと、姉はずっと身内以外には決して言いません、見せません、みたいな感じだった。今でさえ、1型糖尿病のことを知らない人がいるし、2型との区別がつかない人たちがいっぱいいる。簡単にカミングアウトするのは難しい。」
血糖値を一定に保つホルモン・インスリンの働きが悪くなるのが、糖尿病の主な要因です。
糖尿病には1型と2型があり、日本糖尿病協会によると、患者の9割近くが体質や生活習慣などが原因で中高年に多く発症する「2型」です。
これに対し、「1型」は生活習慣と関わりなく誰もが突然発症する可能性があり、子どもに多いのも特徴です。
膵臓にある細胞が壊されてインスリンが出なくなり、生涯、インスリンを補充しなければなりません。
福岡市南区にある糖尿病専門のクリニックには、約2000人の患者が通院しています。
■医師
「夜間に低血糖になったりとかは?」
■中島さん
「特にないですね。」
この日、診察に訪れたのは中島拓海さん(48)です。中島さんは福岡市城南区の米店で店主を務めています。4年前に「1型糖尿病」と診断されました。
■中島さん
「血糖値は血で測るのが正確だが、アプリとセンサーを連動させて24時間測ることができる。」
データは常に計測されアプリに表示されます。
■中島さん
「失礼します。お米とお餅ですね。」
中島さんは1日に最大20件の配達をこなします。一度に20kgの米を手際よく運びますが、突然、低血糖を知らせるアラートが鳴りました。すぐに血糖値を上げるため、常備しているドーナツを食べてしのぎます。
1型糖尿病は、低血糖になり場合によっては意識を失う事もあるといいます。この日は4回、アラートが鳴りました。
■中島さん
「低血糖なら2つくらい食べていいし、備えるためなら1つ。(糖分を)全く持たない状態は考えられない。」
中島さんが配達から帰ってきました。昼食は母親手作りの鮭の塩焼きです。食べる前にも必ずしなくてはいけないことがあります。
■中島さん
「大体、僕は12単位ですね。」
血糖値をコントロールするためのインスリン注射を、食前と、体調によっては寝る前にも自分で打ちます。
■中島さん
「インスリンは非常に大切。インスリンがなくなると栄養が行き届かなくなるので、痩せ衰えて最後は亡くなる。これは自分の臓器。内臓と同じです。それを持ち歩くという感じ。」
この日、中島さんは業務用の棚を作っていました。
■中島さん
「なぜ今やるかというと、血糖値が200あって安心だから。高いうちにやってしまえば。」
生活の中で常に血糖値を気にしなければなりません。
■中島さん
「血糖値でやることが変わる。周りの理解は必ずいります。訳の分からない行動しているふうにしか見えないと思うので。」
中島さんは病気を公表し、同じ1型糖尿病の人を支えようと情報を発信しています。
■中島さん
「1型の方も訪ねてきて、その時に説明で使っている。大丈夫なんだよって、普通に働けて、いろんなこともできると広めていければ、隠さなくてもいい社会ができてくるのかなって。」
■主人公・かこ
「毎朝、糖尿病の勉強して、運動会に水遊びに。ほんとに何でも出来るんだってわかってきたよ。」
1型糖尿病を正しく理解してほしいと書いた山田さんの漫画は、映画になることが決まりました。ことし中に製作が始まる予定です。
■山田さん
「病気はたまたまなったもの。病気のために生きているんじゃない。だからこそ、この1型糖尿病の漫画・映画が、希望にあふれてキラキラ輝いたものであってほしい。そして一緒に学んでほしい。」
1型糖尿病の患者は全国に約10万人といわれます。その人たちが病気を隠さず生き生きと過ごせるように、そんな社会の実現を願っています。
山田さんが描いた漫画はウェブで無料で見ることができます。タイトルの「げんきの森日記」で検索してください。