【特集】高校事務員に農園スタッフも 社会人ラグビー『ルリーロ福岡』最高峰へ地域とスクラム
福岡県うきは市に去年誕生した社会人ラグビーチーム『ルリーロ福岡』が目指すのは、国内最高峰・リーグワンへの参入です。一つの企業に頼らず、地域とスクラムを組んで目標に突き進む2年目の挑戦を追いました。
相手の攻撃を止める力強いタックルや、華麗なパス回しからキレのあるステップで相手をかわしトライを決める様子などを見せてくれたのは、ラグビーの国内最高峰・リーグワンを目指して去年誕生した社会人チーム『ルリーロ福岡』です。
■ルリーロ福岡 キャプテン・西村光太 選手
「(昨季は)本当に時間がない中だったんですけど、今季はしっかり時間があって、1年間自分たちができる100%の準備をしてきた。」
福岡県うきは市に拠点を置く『ルリーロ』は普段、地元の高校のグラウンドを借りて、練習しています。現在、メンバーは48人です。廃部したり活動を休止したりしたトップレベルの福岡のチームから加入した選手や、ほかの社会人チームから移ってきた選手もいます。
ほとんどの社会人チームは一つの企業を中心に運営されていますが、『ルリーロ』は違います。
■ルリーロ福岡・竹内嘉章 選手
「私は浮羽究真館高校の事務員として働いています。」
フッカーの竹内選手は、高校の事務員です。
■ルリーロ福岡・川原勇大 選手
「僕は農園で働いています。」
フランカーの川原選手は、農園のスタッフです。選手たちは、それぞれ異なる職場で働きながら競技を続けています。
チームの運営を担うのは、代表の島川大輝さん(40)です。兵庫県出身で、仕事の縁で福岡に移ってきました。
高校からラグビーを始め、コーチの経験も豊富なことから声がかかり、チームの立ち上げに関わるようになったといいます。
■ルリーロ福岡・島川大輝 代表
「今回ラグビーチームの設立にあたって、地域に人が入ってきた。そこに人やモノ・金が入ってきて、地域が潤うような世界観の中心にスポーツチームがなる。その挑戦をしたいと思っています。」
10月20日に代表の島川さんが足を運んだのは、福岡県筑後市の筑後市役所です。
■児玉悠一朗 記者
「今から何をされるんですか?」
■島川代表
「筑後市役所に。“筑後エリアをホームに”とルリーロ福岡は掲げているので、筑後市もホーム(エリア)になってくれないかなとアピールしてきます。」
『ルリーロ』は拠点を置く福岡県うきは市に加え、近くの朝倉市・大刀洗町とも地域活性化のための連携協定を結んでいます。筑後市にも協力を求めたい考えを伝えました。
■島川代表
「我々の夢なんかを聞いていただいて、具体的にどんなことができるかをお話できたらうれしいなと思っています。」
■筑後市の担当者
「包括的な連携をしたほうがいいのか、スポーツに特化した取り組みのほうがいいのか、改めて後日ご相談を。」
筑後市との話を終えると、島川さんはすぐにスマートフォンを取り出します。
■島川代表
「すみません、筑後市役所が今終わりました。」
休む間もなく、協力関係を模索する東京の会社とオンラインでミーティングです。
続いて訪れたのは、地元・うきは市の歯科医院、チームのスポンサーの一つです。
■島川代表
「チームパンフレットができたのでお渡しします。」
■院長
「いいじゃん。」
「さらに上を目指してやっていってほしい。僕も仕事に張り合いが出ます。」
島川さんは、支えてくれる人たちのもとに、自ら足を運ぶことを大切にしています。ゼロから始まったプロジェクトに対して、初めのころは、懐疑的な見方も多かったと明かします。
■島川代表
「うきは市役所の担当の人が、2年半前に話を聞いたときに『絶対に無理やろと思った』と言っていましたけど、みんなそうでしたもんね。」
それでも、一人でも多くの人にチームのことを知ってもらおうと、筑後地域を中心に120以上のイベントに参加してきました。
“地域に長く愛されるチームにしたい”という思いが伝わり、スポンサーになってくれた会社や個人は280にのぼります。
■島川代表
「うきはだけにとどまらず広域にあるので、選手が地元にいるというところで全体がホームになるという世界観にチャレンジしたいです。」
国内最高峰・リーグワンの一つ下のカテゴリー、トップキュウシュウリーグに参戦している『ルリーロ福岡』は10月29日、久留米市の競技場で、今シーズンのホーム開幕戦を迎えるはずでしたが、相手チームの選手にケガ人が続出するなどしたため、不戦勝となりました。
■島川代表
「なんとか久留米でお披露目の機会をということで、本当にスピーディーに強引に意地で、きょうという日を迎えられました。」
■アナウンス
「ルリーロ福岡チームマッチ、いよいよ開始されます。」
ホーム開幕戦を心待ちにしていたファンのために、『ルリーロ』の選手たちを2チームに分けて、試合をすることにしたのです。
公式試合ではなくても全力でプレーする選手たちの姿に、詰めかけた1000人以上のファンからは、熱い声援が送られました。
■訪れたファン
「練習もすごく楽しそうだし、試合もすごく頑張っているので、そこが魅力だと思います。」
■訪れたファン
「きょう出ている久田選手が私たちと同じ課で働いているので、応援に来ました。」
リーグワンへの新規参入は、財務状況とこれまでの戦績を踏まえた審査基準で判断されます。
『ルリーロ』は目標達成に向け、まずは2年連続の九州王者がかかる11月25日の大一番に集中しています。
■島川代表
「3年でリーグワン昇格を掲げていたので、それが年明けの来年1月末には結果が出る。みんなもう、やる気満々ですよ。」
ゼロから積み上げてきた2年目の挑戦です。地域の期待を背負い、瑠璃色の戦士たちが躍動します。