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博多ストーカー殺人から1年 福岡県警へのストーカー相談は4年連続で全国最多 加害者への「治療」とは

2024年1月16日 18:26
博多ストーカー殺人から1年 福岡県警へのストーカー相談は4年連続で全国最多 加害者への「治療」とは
博多ストーカー殺人から1年 加害者の「治療」とは

去年1月、JR博多駅の近くで、元交際相手から女性がストーカー行為の末に殺害された事件から16日で1年を迎えます。

こちら、2019年から2022年に、福岡県内で警察に寄せられたストーカー行為の相談件数です。毎年1000件を超え、4年連続で「全国最多」となっています。去年も、暫定値で1429件と件数はほぼ横ばいのままです。同じ悲劇を繰り返さないためには何が必要なのでしょうか。

16日、福岡市の博多駅前の事件現場には花を手向ける女性がいました。

■花を手向けた人
「ちょうど1年だから。会ったこともないですが、事件が事件だったので。(当時は)何も言えなかった。あぜんとしました。」

■樋口淳哉記者
「現場は博多駅前のホテルが建ち並ぶ場所です。こちらの道には50メートルほど規制線が張られています。」

1年前の1月16日、福岡県那珂川市の川野美樹さん(当時38)は、JR博多駅前で命を奪われました。

川野さんを殺害したなどの罪で起訴されているのは、元交際相手の寺内進被告(32)です。

事件の発端となったのは寺内被告の「ストーカー行為」でした。

寺内被告は川野さんからの別れ話に納得できず、川野さんの職場に押しかけるなどの行為を繰り返したため、警察は、おととし11月、ストーカー規制法に基づく「禁止命令」を出していました。

しかし、そのおよそ2か月後の去年1月、寺内被告は、職場から帰宅する川野さんを待ち伏せし、頭や胸などを包丁で刺し殺害したとされています。

事件直後、FBSの取材に対し寺内被告は「気が狂ったようになった。記憶ないです。刺すことになったことが、いまだに信じられない」と、当時の衝動的な感情を口にしていました。

福岡県警は事件を受け、ストーカー事案の担当を12人増やし体制を強化しました。また、ストーカー行為をする人に対し、医療機関の受診や精神保健福祉士の面談など「治療」するよう働きかけを続けています。

去年、福岡県警が「治療」を働きかけたのは233人です。ただ、現在の法律では治療は「強制的」ではなく、あくまで「任意」のため、実際に受診をしたのは51人でした。

私たちはストーカー加害者が「なぜストーカー行為に至るのか」を知るため、ストーカー行為で過去に逮捕されたことがある人に取材をしました。

「つきまといした自覚はない」
「悪くないと思っている」
「言いがかりをつけられてこちらの方が被害者だ」

話を聞くことができた人の多くが、ストーカーをした自覚がないと語りました。

この現状に、自らのストーカー被害の経験をもとに撲滅活動を行っている小早川明子さんは、治療の義務化を訴えます。

■NPOヒューマニティ・小早川明子理事長
「一部の衝動が止まらない、自分の理性では自分の行動を制御できない人には、治療は不可欠だと思っています。自分は病気じゃないと考えている人は(病院に)つながらないから、どうしても義務化というのは必要になってくると思う。」

ストーカー加害者の治療に携わる専門家は、ストーカー行為は治療やリスク管理によって、ある程度、制御できると話す一方、近年のストーカー行為がSNSの普及で複雑化していると指摘します。

■精神科医・福井裕輝さん
「SNSが加わったことで、急速に人との気持ちが接近したり、逆に憎しみが湧いたり、感情の動きにスピード感も出てきた。伝え方も、口頭で直接話している間においては、表情や細かな仕草から情報が得られるので、言葉でも誤解を受けることがそんなにないが、(SNSだと)誤解を招きやすいというのはあると思います。」

対策に大きな変化はないまま、ストーカー行為は複雑化しています。今後、ストーカー被害をなくすには、社会全体が関心と関わりを持つことが必要だと言います。

■福井さん
「警察だけではなくて、それぞれの専門家の考えを出し合うことで、対応策を考える。どうやって社会全体で防いでいくのかを考えていく必要はある。」

博多駅でストーカーにより1人の女性の命が奪われてから16日で1年です。同じ犠牲者を出さないために、さらなる対策が急がれています。