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学校の先生“働かせ放題” 現場レベルで働き方見直しも道半ば 専門家「限界がある」

2023年10月31日 18:00
学校の先生“働かせ放題” 現場レベルで働き方見直しも道半ば 専門家「限界がある」

過酷な長時間労働を背景に、“なり手不足”に陥っている学校の先生についてです。文部科学省の審議会はこの夏、改革の緊急提言をまとめましたが、現場レベルではすでに働き方の見直しがスタートしています。

取材したのは、福岡市西区の下山門小学校で、6年生のクラス担任をしている菊池明日香教諭(39)です。モットーは『いつも笑顔で』という菊池教諭は、朝から子どもたち一人一人と向き合います。

■下山門小学校6年生・村上愛桜さん(12)
「いつもとても明るくて、みんなのことを思ってくれている先生です。」

■下山門小学校6年生・藤野准平さん(12)
「勉強をわかるまで教えてくれる、優しい先生だと思います。大好きです。」

■下山門小学校・菊池 明日香 教諭(39)
「子どもたちは本当にかわいいですので、日々子どもたちと一緒に 自分自身も成長できるかなと思っています。」

子どもたちとともに成長できるやりがいのある仕事ですが、今、先生の『なり手』は減っています。

ことし福岡県の教員採用試験の倍率は、小学校で1.2倍、中学校で2.3倍と過去最低になりました。長時間労働などを背景とする人手不足は深刻で、県内の2割近い学校であわせて200人以上の先生が足りていないといいます。

こうした状況が続く中、ことし8月、中教審=中央教育審議会が教員の働き方改革を進めるための緊急提言をまとめ、文部科学相に手渡しました。

■永岡 文部科学相(当時)
「教師を取り巻く環境の整備を一歩でも前に進められるように。」

提言では、教員を取り巻く環境について「国の未来を左右しかねない危機的な状況」と指摘しました。

改革案としては、教員の負担軽減が期待される小学校高学年での『教科担任制』を強化すること、授業や事務作業をサポートする『教員業務支援員』を全ての小中学校に配置することなどが挙げられています。

菊池教諭が働く下山門小学校では、中教審の提言を先取りしています。

■菊池教諭
「いってらっしゃーい。」

2時間目が終わると、菊池先生は教室から子どもたちを送り出します。

■菊池教諭
「今から職員室へ行きます。隣のクラスの先生が図工をしてくださるので、私は空きになります。ありがたいです。」
「職員室で次の週の時間割を作ったり教材研究をします。」

6年のクラスでは、今年度から『教科担任制』が導入されました。担任のクラス以外でも得意教科を教えることで、授業準備の負担軽減につながるといいます。

■菊池教諭
「1時間目に授業をしたクラスで気づいたことを生かして、 次のクラスでできるということで、授業改善にもつながりますし、せっかく準備したものを再度使えるのはとてもいいなと思っていて。」

【定額働かせ放題…制度に限界も】

働き方改革は、ほかにも見られました。算数の授業をサポートしているのは、現役の大学生です。

■学習支援員
「この円、何等分されとる?」
■児童
「2等分。」
■学習支援員
「ということは?」

『学習支援員』として、福岡市教育委員会に雇用されています。それぞれの児童の学習スピードに合わせて丁寧に指導できるほか、丸つけも分担できます。

■下山門小学校・池辺 英雄 校長
「私が担任をしていたころよりは、 空き時間が生まれて、その間に授業準備などをできていると思われるので、(改革は)ずいぶん進んできているのかなというふうな実感はあります。」

専門家は、現場での取り組みを評価しつつも、次のように述べます。

■西南学院大学 人間科学部・雪丸 武彦 准教授
「これまで数年間、多少は勤務実態調査によって改善されているという実態がありますので、より良くなっている面はあると思いますけれども、劇的に変わってるわけではない。その意味では『限界がある』と考えている。」

公立学校の先生には、月額給与の4パーセントを基本給に上乗せする代わりに、時間外手当などは支給しないと法律で定められていて、“定額働かせ放題”とも指摘されています。

専門家は、こうした法律の抜本的な見直しが必要だと考えています。

■雪丸 准教授
「人をかけずしていい教育ができることはないと思いますので、法令改正を含めて、教職員を増やして改正を進めていくということになるのでは。」

“定額働かせ放題”の温床とされる1971年制定のいわゆる『給特法』について、中教審の提言では、「今後、議論を深めていく」との表現にとどまりました。

働き方の改善を進め、教員を志す人を増やすことができるのか、子どもたちの未来のため、改革は待ったなしです。

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