飲酒運転でプロトランペット奏者の夢を奪われ 音楽教諭となった被害女性の訴え
10年前、高校生のときに飲酒運転の事故に遭った女性が15日、佐賀市で講演を行いました。
事故の体験とともに訴えたのは、身勝手な飲酒運転で夢を奪われる人がいない社会の実現です。
10年前、長崎県で飲酒運転の事故に遭った前川希帆さん(28)です。
15日午後、佐賀市の福祉センターで、約180人を前にみずからの経験を語りました。
■前川希帆さん(28)
「事故当時のことは全然思い出せない。今でも記憶としては戻っていない。覚えているのは家を出発した後、記憶が戻って来たのは病院の処置室。」
前川さんが事故に遭ったのは、高校3年生だった2013年11月です。
長崎県佐々町で母親が運転する車の助手席に乗っていたところ、対向車線をはみ出した乗用車に正面衝突されました。
乗用車の運転手は無免許で飲酒運転をしていました。携帯電話の会話に気をとられての事故でした。
母親は胸の骨を折る大ケガで、前川さんは唇や頬が裂け、前歯4本を失いました。
前川さんはプロのトランペット奏者になるという夢を抱き、県外の音楽大学の入試を受けるために駅に向かっている途中でした。
■前川さん
「大好きなトランペットをもう続けられないかもしれない。大好きな音楽を大嫌いになりそうになって、やめそうになったこともある。」
前川さんは、前歯を失ったことで、トランペット奏者になるという夢を諦めざるを得ませんでした。
その後、「音楽を教える」という新たな夢をかなえ、長崎県佐世保市の高校で音楽教諭をしています。
その傍ら、飲酒運転をなくすため、みずからの経験を多くの人に伝える講演を事故直後から続けています。
■前川さん
「たった一度の『ちょっとだけならいいさ』『飲んで少しだけなら』という気持ちで、大切な人を傷つけてしまうかもしれない、自分の大切な人が傷つくかもしれない、ということをよく考えてほしい、やっぱり飲んだら運転しないとか、細心の注意を払うことが大切なことにつながる。」
“人の夢を奪う”飲酒運転で、被害者と加害者を生まない社会をつくっていきたいというのが、前川さんの心からの訴えです。