【企画】女性同士のカップルが福岡市で公開結婚式 「“ふうふ”になりたい」2人の思い
11月4日に、“公開”で結婚式を挙げた女性同士のカップルについてです。多くの人が見守る中で愛を誓った2人の思いに迫ります。
■アナウンス
「皆さま、盛大な拍手でお迎えください。」
和装に身を包み笑顔を浮かべるのは、福岡市に住むみえさんと、かよさん、交際9年目のカップルです。11月4日、福岡市の公園で“公開結婚式”を挙げました。
■みえさん(39)
「洗濯物にティッシュを入れたままにしません。」
■かよさん(39)
「お酒はほどほどにします。」
■2人
「この誓いを守り、お互いを一生愛し続けることをここに誓います。」
10年前に友人の紹介で知り合ったみえさんと、かよさんは、出会って半年後に交際を始めました。
すぐに一緒に暮らすようになり、次第に“家族になりたい”という思いを募らせていった2人は去年、マイホームも購入しました。
しかし、そこで2人が直面したのは、同性カップルであるがゆえの“大きな壁”でした。
■みえさん
「普通の男女は“紙切れ一枚”で結婚できて、家の購入もスムーズにできるんです。ただ同性同士となると、不動産にカミングアウトから始めますよね。そこで『前例がありません』って言われます。ただ『前例がないなら前例作ってください』って頼みます。」
住宅ローンは2人が別々に組むことになるため、手数料が2倍になります。2人の関係を証明する公正証書の提出も必要で、費用も時間も、負担を強いられました。
2人は福岡県と福岡市が導入している『パートナーシップ宣誓制度』を利用し、“婚姻相当”の行政サービスを受けることはできます。
しかし、“ふうふ”としての権利がすべて保障されるわけではありません。
■みえさん
「やっぱり誰にも迷惑をかけずに生きていきたいっていう思いが強いんですね、私たち。」
同性同士の結婚が認められないのは憲法に違反するとして、国を訴えた裁判が全国で行われています。
ことし6月、一審の福岡地方裁判所は、「憲法に違反している状態」とする判断を示し、原告側は「国に法制化を促すためさらに進んだ司法判断が必要だ」として控訴しました。
福岡高等裁判所での裁判は、来年2月に始まります。
11月5日に、『LGBTQ』『性的マイノリティー』と呼ばれる人への理解を深めようというイベント、九州レインボープライドが福岡市で開かれました。そのイベントの主催者から、みえさんとかよさんに「公開結婚式をしてくれないか」と依頼がありました。
■みえさん
「やっぱり名前も年齢も顔も出るわけなので、家族とか影響がないかっていう心配はあった。でも、そう言っていたら何もできないなと思った。」
■かよさん
「その話がきた瞬間に、あ、(みえさんは)やるんだろうなと。やろっか、みたいな。」
2人は同性婚が法的に認められたあとで、結婚式を挙げようと考えていました。しかし、多くの人に同性カップルの結婚式を見てもらうことで“社会が一歩動き出せば”と、公開で式を挙げることを決めました。
そして当日、式は福岡市内の公園で行われました。たまたま通りがかった人も、2人の“公開結婚式”に足を止めていました。
ちょうどこの日は、かよさんの39回目の誕生日です。みえさんがサプライズで、かよさんへの手紙を読み上げました。
■みえさん
「私たちの結婚式とかよの誕生日が偶然重なり、何十倍もおめでたい日になりました。もう家族同然なのに法的に家族になれないのは悔しいけど、こうして挙式できたことはうれしく思います。この先の人生を共に歩ける人と出会えたことに感謝して、これからも精一杯大事にしていきます。」
みえさんと、かよさんを祝福してくれた多くの人たちの中に、2人の両親の姿はありませんでした。法的に2人が“ふうふ”、そして“家族”になったときに改めて結婚式を開き、招待しようと考えているからです。
■みえさん
「これから、いろんなことを乗り越えていこうという節目になったと思います。」
■かよさん
「私たちの結婚式を見ることで、勇気を与えられたり希望になれたりしていたらいいなと思います。」
■参列した人
「世間の理解がない中で、みなさんに理解していただくいい機会になる結婚式だったと思います。」
■みえさん
「まずは私たちとしては、家族になりたいというのがありますので。結婚が、できる・できないの選択肢ができればいいなと思っています。」
性別に関係なく誰もが愛する人との未来を思い描ける社会へ、2人のささやかな願いです。