「著しく正義・公平の理念に反する」旧優生保護法で不妊手術を強制 国に賠償を命じる 「除斥期間」は適用せず 福岡地裁
旧優生保護法のもとで聴覚障害のある男性が1960年代に不妊手術を強制されたとして、82歳の妻などが損害賠償を求めていた裁判で、福岡地裁は30日、国に1640万円余りの支払いを命じました。
30日午後3時すぎ、福岡地裁の前で拍手や歓声が上がりました。
この裁判は、聴覚障害のある福岡県内の夫婦が、旧優生保護法のもとで、1960年代に夫が強制的に不妊手術を受けさせられ、子どもを産み、育てる自由を奪われたなどとして、国に損害賠償を求めたものです。
2019年に訴えを起こしましたが、3年前に夫は亡くなり、82歳の妻などが裁判を続けていました。
裁判では、不法行為から20年過ぎると賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」を適用するかが争点でした。
福岡地裁の上田洋幸裁判長は30日の判決で「夫婦が2018年3月に不法行為を初めて認識した後、提訴まで1年9か月を要したのは、手術を受けさせられたことへの深い羞恥心や自責の念、国への責任追及に恐れや不安を感じていたこと、夫の体調が悪化し入院していたことがあり、夫婦の責任とは言えない」と指摘しました。
その上で「除斥期間の適用は著しく正義・公平の理念に反する」として、国に1640万円あまりの賠償の支払いを命じました。
■妻(手話通訳者によると)
「主人の分も頑張ってきました。家に帰ってうれしい報告をしたいと思います。」
国は「判決内容を精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応してまいります」とコメントしています。
旧優生保護法をめぐっては同様の裁判が全国で行われていて、ことし夏にも最高裁判所から統一の見解が示される見込みです。