【ギャンブル依存症】当事者が語る実態「体と手が止まらない」大切な家族さえ後回しで借金「どんどん孤独に」オンラインギャンブルの相談が増える現状も
ドジャース大谷翔平選手の元通訳、水原一平氏による“違法賭博”疑惑で、背景にあったとされるのが「ギャンブル依存症」です。周りに迷惑をかけてもやめられない。当事者が実態を語りました。
■西野 悟志さん(40)
「自分自身が正常じゃないというのは分かっていたが、体と手が止まらないという状況。」
佐賀市に住む会社員の西野悟志さん(40)は2年前、ギャンブル依存症と診断されました。
■西野さん
「ギャンブルをするため、ギャンブルの金を工面するため、この2つが自分の生活の第一優先になってしまった。」
ギャンブル依存症はパチンコや競馬などといった賭け事にのめり込み、借金や不安定な精神状態で日常生活に支障をきたす病気です。
2017年の厚生労働省の発表によりますと、ギャンブル依存症が疑われる20歳以上の人は、全国でおよそ320万人と推計されています。
ドジャース大谷選手の元通訳、水原一平氏も自らをギャンブル依存症と語り、その負債は少なくとも450万ドル、日本円で6億8000万円に上るとされています。
私たちの取材に応じた西野さんがパチンコにハマったのは大学生の時でした。先輩に誘われたのがきっかけでした。
■西野さん
「パチンコ店の雰囲気や日常からかけ離れているキラキラした電飾があって、ギャンブルが本当に刺激的で、こういう世界もあるんだなってどんどんのめり込んでしまった。」
パチンコで負けた金をパチンコで取り戻そうとする負のループにはまり、親に借金を肩代わりさせたこともありました。
しかし、結婚し子どもが生まれてもギャンブルをやめられず、これまで積み上がった借金は500万円にのぼるといいます。
■西野さん
「家族といるからギャンブルに行く時間がないんだって、子どもを産んでしまったからギャンブルに行く時間がないんだって、最終的には自分の頭の中がそうなるぐらい、ギャンブルに支配されてしまっていた。」
大切なものさえ後回しにしてしまう自分をなんとかしたい。西野さんが助けを求めたのは、ギャンブル依存症の支援団体でした。
多くの支援団体では、ギャンブル依存症の人たち同士で悩みや葛藤を共有することを目的に、定期的なミーティングを行っています。
西野さんも、こうしたミーティングに参加し自分を見つめなおしてきました。
■西野さん
「自分が思っていた気持ちや苦しさを打ち明けることで共感してもらって、少しずつ落ち着いて、僕だけじゃなかったんだなというのが分かるようになって。」
それでも、再びパチンコに向かってしまったという西野さん。まもなく仕事を休職し、回復施設に入ります。
ギャンブル依存症をめぐっては、コロナ禍以降に変化があったといいます。そう話すのは、ギャンブル依存症の家族でつくる団体で、福岡の代表を務める村田麿美さんです。
■全国ギャンブル依存症家族の会福岡・村田麿美代表
「オンラインギャンブルの相談が増えている。特に若い人たちがのめり込んで犯罪にもつながるスピードが早い。」
若い世代を中心にオンラインのギャンブルをめぐって相談が増えているといいます。去年、福岡市で強盗事件などを起こしたとして実刑判決を受けた20代の男は、裁判長から「オンラインのギャンブルに入れあげて困窮し、金品を強奪しようとした」と動機を指摘されていました。
■村田代表
「依存症というのはどんどん孤独になっていく。自分と同じ経験をした人たち、その人たちの中にいること、それがこの依存症からの回復、これしかない。」
家族や、同じ経験をした仲間と共に回復を目指すギャンブル依存症。それでも、やめたくてもやめられない病から完全に抜け出すのは容易なことではありません。
改めて整理します。厚生労働省によりますと、
▽ギャンブルをしないと落ち着かない
▽興奮を求め賭け金が増えていく
▽ギャンブルのことでウソをついたり借金したりする
こういった症状があれば、ギャンブル依存症が疑われるということです。
県や福岡市などはギャンブル依存症の人を対象に相談窓口を設けています。一人で抱え込まず、まず相談してみてください。
▽福岡県精神保健福祉センター 092-582-7500
▽福岡市精神保健福祉センター 092-737-8829
▽北九州市精神保健福祉センター 093-522-8729