シリーズ『こどものミライ』 福岡市の未就園児預かり事業スタート 保育士不足に懸念も
子育てを取り巻く環境や子どもたちの成長を見つめるシリーズ『こどものミライ』です。幼稚園や保育園に通っていない子どもでも、週に数回、園で預かる事業が福岡市で8月1日から始まりました。保護者の負担軽減が期待される一方で、受け入れる施設の人材不足が懸念されています。
福岡市中央区の『リトルワールドあゆみ保育園』に、ほとんどの園児が登園を終えた午前9時ごろ、1組の親子がやってきました。
■浜町瑞來さん
「葵くん、お靴を脱ごうか。」
福岡市に住む浜町瑞來さんと、9か月の娘・悠愛ちゃんと2歳の息子・葵くんです。2人ともふだんは保育園には通わず、自宅で母親と過ごしています。
■瑞來さん
「2人年子なので、ずっと見ているのが大変で、家事も進まない。週に1回でも預けられたら、ほかのことができたり、私もリフレッシュできるかなと。」
福岡市の預かり事業の利用を決めた母親の瑞來さんは8月1日、久しぶりに2時間の“自分だけの時間”をとります。
福岡市が1日から始めたのは、保育園や幼稚園に通っていない未就園児を週に1回か2回、定期的に保育園で預かる事業です。自宅で育児をする保護者の負担を軽減するとともに、孤立させないよう行政の支援とつなぐ狙いです。利用は1回1000円で、今年度末まで試験的に市内3箇所の保育園で実施します。
この保育園では8月1日、預かり事業の子どもを4人受け入れました。ふだんから見ている園児と一緒に保育することになりますが、保育士の数はこれまで通りです。
■保育士・塩谷 玲さん
「(きょう初めての子は)ほかの子に比べて、様子をつかむのに時間がかかるので、その分保育が必要。目が必要なので、その分保育士さんも確保してもらえれば、もっと目の行き届いた保育ができるのかなと。」
この保育園では、もともと国の基準よりも多く保育士を配置していますが、今回の事業の開始にあわせて人材を増やしたい考えでした。しかし、8月1日までに十分な人数の採用には至っていません。
■リトルワールドあゆみ保育園・本松ちなみ 園長
「普段でも、もう少し人手は欲しいと思っているんです。命を預かる現場なので、専門的なスキルも大事ですし、人間力も大事。ただ何より、この2つの手で1人だっこできる。でももう2つあれば、もう1人だっこしてあげられるんです。」
1つの打開策として県が進めるのが、保育士の資格を持っていながら保育士の職に就いていない『潜在的な保育士』の掘り起こしです。保育士の求人と求職者をマッチングさせるためのシステムを作ったり、求職者のための支援センターを設置したりしています。
■福岡県 子育て支援課・永瀬竜太 係長
「保育士不足を解消するとともに、保育に従事する人が増えることで、保育の質の向上を目指していきたい。」
福岡市の預かり事業は申し込みが多くキャンセル待ちの状態で、新たな申し込みは受け付けていません。
福岡市は保育士の拡充や受け入れ枠の拡大なども視野に、内容を検証するとしています。