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【あと21年…】進まない除染土の県外最終処分…自分ごとにできない課題の背景には…【福島県】

2024年3月6日 18:58
【あと21年…】進まない除染土の県外最終処分…自分ごとにできない課題の背景には…【福島県】

シリーズ「ふくしまの未来」。中間貯蔵施設に保管されるいわゆる除染土についてです。除染土は2045年までに福島県外で最終処分することが決まっていますが、どこで、どのように処分するか、その具体的な議論は、ほとんど進んでいないのが現状です。約束の期限まであと21年。苦渋の思いで施設を受け入れた住民は、この状況を複雑な気持ちで見つめます。福島が抱える重い課題をどうすれば解決できるか、そのカギを探りました。

東京・霞が関にある環境省。大臣の部屋に置かれているのがー

■環境省 環境再生事業担当 中野 哲哉参事官
「こちらが除去土壌を用いた鉢植えになります。環境大臣室に置いている」

表面を別の土で覆い観葉植物を植えた鉢植えを置き、部屋を訪れた人たちに、空間の放射線量が以前と変わらないことを説明しています。

■中野 哲哉 参事官
「この除去土壌は、今は福島県内に中間貯蔵されているが、これを30年以内に県外で最終処分するという大きな『約束』があって」

大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設には、福島県内の除染で出た土=除染土が保管されています。その量は東京ドームおよそ11杯分です。ここはあくまで「中間」の保管施設。除染土は2045年3月までに福島県外で最終処分することが法律で定められています。このうち放射能の濃度が低い土について、国は公共事業で再利用する計画で、福島県内で実証事業を進めてきました。その安全性を広く発信しようと東京や埼玉などでも実証事業を試みましたがー

■反対する住民
「何で汚染土を入れるんですか」

実証に反対する署名活動も行われました。大きな課題の一つが全国的な理解度です。除染土の問題を知っていると答えた人は福島県内で半数を超える程度、県外では4分の1ほどです。こうした現状に施設がある双葉町は…。

■双葉町 伊沢史朗町長
「結局は迷惑施設だということ。自分のところで迷惑施設の一端でも協力できるかということに尽きると思う。犠牲になるところだけが、いつまでも犠牲になっていいのかということも合わせて、皆さんにしっかりと考えてもらうような時間じゃないかと考えている。」

行き場が決まらない除染土。中間貯蔵施設の建設は福島の復興を進めるための苦渋の決断でした。土地を提供した地権者の一人、双葉町の大須賀義幸さん80歳。ずっと複雑な気持ちを抱えています。

■双葉町 大須賀 義幸さん(80)
「行政的な約束事だから(除染土を)出してもらいたいといっても引き受けるところもない状態。どこの県でも町でも気持ちよく引き受けてくれるところがなかったら『二重の苦』。自分たちが受けた苦しみが、そっちに行って苦になるのであれば」

結局は、自分と同じような思いをする人が増えるだけなのかもしれない。こうしたジレンマを解決するカギは…。私たちが向かったのは茨城県。国内最大級の研究機関=産業技術総合研究所で進められているのが…。

■産業技術総合研究所 保高徹生 博士
「今までのいくつかの事例を見てもわかる通り、処分場が近くに来ると皆さん嫌がる、嫌だという気持ちには人それぞれ色々な理由がある。どのようなものであれば、皆さんが受け入れても良いと思うのか、どういうことをしっかりやれば、少しでも皆さんが受け入れやすくなるかを事前に調べて、社会的な要素に着目して研究を進めています」

保高さんたちは全国4000人を対象に除染土の県外最終処分についてウェブアンケートを実施。受け入れる場合に重視する点を調べました。

■保高徹生 博士
「(処分場は)一か所に比べて、8か所、46か所というほうが好ましいと考えることが分かった。この結果から言えることは、場所が遠くなればなるほど受け入れやすいというのと同じくらいに手続き的な公正や分配的な公正、意見が反映されるか否か、もしくはみんなが負担を分かち合っているか否かということで、受容性が上がることが分かった」

処分場の数を複数か所で検討するほうが好ましいことや、受け入れを決める方法は住民の意見を反映する方が好ましいことなどがわかりました。さらに保高さんが強調するのが、この問題をじぶんごとと捉えることです。

■保高 徹生 博士
「東京電力の発電所が福島にあり、関東に電力を送るために発電をしていた、そこで事故が生じた。そういった中で土を他で処分するということ自体は、福島の問題、大熊、双葉の問題だけでなくて『自分の問題』として、自分のところで受けれられるかどうか考えてみようと説明することが重要ですし、国もちゃんと説明する必要がある」

中間貯蔵施設の敷地の中にある双葉町の神社。震災後に建てられた石碑には住民たちの願いがこう刻まれています。

「再び、人々の営みが蘇ることを願い、この鳥居を建立する」

施設の地権者の大須賀さんはふるさとの将来についてこんな想いを持っています。

■双葉町 大須賀 義幸さん(80)
「自分としては環境整備をして公園などで周って歩けるような、100年後くらいになったらものすごいいい土地になっているのではと思う」

約束の期限、2045年まであと…21年です。