「チラシに水のトラブル119番って書いてあった…」不要不急の通報も一定割合…命を守る消防の通信指令室に密着【福島県】
火事現場の消火活動や人命救助を担う消防で、119番通報を専門に扱う通信指令室の話題です。市民の命と消防隊員との「架け橋」となる通信指令室ですが、取材を進めると、その大変さとある課題が見えてきました。
命にかかわる突然の体調不良に…。事故や災害現場での救助活動。そして、火事。こうした現場の最前線で活動にあたる消防隊員ですが、その助けを求めるために私たちは「119番」で消防に通報を行います。その通報は、最寄りの消防本部に設置されている通信指令室に接続。
■福島市消防本部 通信指令課 佐藤 靖浩さん
「119番消防です。もしもし」
今回、福島市消防本部の通信指令室に私たちのカメラが入りました。
■福島市消防本部 通信指令課 佐藤 靖浩さん
「市民と活動隊をつなげる重要な役割」
取材したのは、消防士になって16年、佐藤靖浩さんです。ここには、実にさまざまな通報が入ります。
■隊員と通報者とのやりとり
「119番消防です。火事ですか?救急ですか?」
隊員「何が止まらないの?」
高齢男性「鼻血!」
隊員「鼻血?何分前から続いてます?」
高齢男性「うー、5分前!早く来て!」
隊員「玄関のカギは開いてますか?」
高齢男性「開いてる!早く!」
隊員「うん、では救急車・・・あ、切られちゃった」
動揺する通報者に対し、冷静に状況を把握することがこの仕事には欠かせません。
■やり取り
「福島消防から西救急1、本人通報…」
通報から3分で、救急車を現場へと向かわせます。
■福島市消防本部 通信指令課 佐藤 靖浩さん
「出血が継続することによって、ショック状態になりまして、心肺停止になったりとかも考えられるので決して侮ってはいけない症状」
その後、通報した男性は病院に搬送されましたが、幸い、命に別条はなかったそうです。
福島市消防本部によりますと、通報件数は去年1年間で2万2千件あまり。年々増加傾向にあるといいます。
■隊員
「急に倒れた?いま?いまって意識状態どうですか?…お話はできるけど目は閉じている」
いつ、どんな通報があるのか気が休まらない仕事です。
癒しの時間は、お昼のランチタイム。
■福島市消防本部 通信指令課 佐藤 靖浩さん
「きのうの夜つくったものをお弁当に持ってきた。午前・午後の切り替えにもなるし、精神的な部分とか体の部分でもリセット、リフレッシュになる」
そうはいっても、ランチタイムはわずか15分程度。職員交替で昼休憩をとり通報に対応できるような体制を維持しなければなりません。一分一秒を争うような通報がある一方で、なかには…。
■通報者女性
「チラシに水のトラブル119番って書いてあったから。」
緊急性の低い通報も後を絶ちません。福島市消防本部では去年、こうした通報が、通報全体の15パーセント近くを占めたそうです。コロナ禍で、消防への通報が急増したときには、不要不急の通報をめぐって大きな社会問題に。
東京消防庁も、「不要不急の電話は、最後までお話しを聞かずに切断する場合があります」と異例の呼びかけをしました。それは、通信指令室が市民の命と消防隊員とのまさに「架け橋」として向き合わなければならないからです。
■福島市消防本部 通信指令課 佐藤 靖浩さん
「119番(通報)を必要とする人が多数いると思うので、必要な人に必要な隊を届けられるようにがんばっていきたい」
助けを必要とする人がいる限り、通信指令室は24時間365日、休むことなく動き続けます。