旧陸軍被服支廠で被爆ピアノのコンサート
国内最大級の被爆建物、旧広島陸軍被服支廠は2024年1月、国の重要文化財に指定されました。79年前の惨状を伝える建物でコンサートが開かれ、被爆ピアノの音色が響きました。広島市南区にある旧広島陸軍被服支廠にこの日、屈強な若者の集団がやってきました。
■ラガーマン
「重い!」「おもっ」
隣にある県立広島工業高校ラグビー部の生徒たち。ピアノを運ぶ力仕事を頼まれました。調律師の矢川光則さんです。被爆ピアノを保存して、各地で演奏会を開く活動を続けています。
■矢川光則さん
「普通ピアノいうのはそんなに動かすもんじゃないんじゃけど世界で一番よく動いているピアノでしょう」
建物はかつて兵士の軍服などをつくる軍需工場でした。被爆直後には臨時の救護所となり、多くの人が亡くなりました。
傷みが激しく、保存に向けた耐震化工事が2024年度中に始まる予定です。
多くの人にこの場所を知ってもらいたいと地元の住民がコンサートを企画し、矢川さんに協力をお願いしました。
■矢川さん
「私も被服支廠のこの中に入ったのはきょう初めてなんです。こういう形できれいに残っていたので驚いている」
コンサートで使われるのは同じ南区の段原で被爆したピアノです。ともに被爆した持ち主の女性は2023年、亡くなりました。地元で活動する団体など6組が参加。被爆建物の前で奏でられる被爆ピアノの音色におよそ140人が耳を澄ませました。
■聞いた人
「被爆ピアノ聞いたのは初めてでよかったねと思っています」
■矢川さん
「こういう空気の場所で平和を願うコンサートができ感無量の気持ちでいっぱい」
軍都だった広島の歩みや被爆の記憶が刻まれた建物と、79年が経った今も音を響かせる被爆ピアノ。「ものいわぬ証人」たちの声があの日と今をつなぎます。
【2024年4月10日 放送】