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【カープ・新井の言葉】『自分のことだけ考えろ』大瀬良大地投手に掛けた言葉 指揮官の真意とは

2024年9月9日 18:00
【カープ・新井の言葉】『自分のことだけ考えろ』大瀬良大地投手に掛けた言葉 指揮官の真意とは

し烈な優勝争いを繰り広げる新井カープ。『新井の言葉』として、カープの新井貴浩監督のポジティブな言葉と、その真意を受け取った選手との絆から、チームの強さの秘密を深掘りします。1回目は、大瀬良大地投手です。

今シーズン、先発の柱の一人として投手陣を引っ張る大瀬良大地。6月のロッテ戦では史上90人目のノーヒットノーランを達成しました。リーグトップの防御率(9月3日時点)をマークするなど抜群の安定感で、首位奪還を目指すチームの原動力となっています。1年前、大瀬良は苦しいシーズンを送っていました。5年連続の開幕投手を務めながら、自己ワーストの11敗。オフには、違和感のあった右ひじの手術に踏み切りました。どん底からの復活。その裏には、新井監督の『自分のことだけ考えろ』という言葉がありました。その言葉をかけられたのは、キャンプインを直前に控えた2024年1月。手術明けで投球制限のある自分が、1軍に帯同していいのか…そんな葛藤を抱えていたときでした。

■カープ 大瀬良大地投手
「『周りにどう思われるかとか、いろいろ考えることはあるのかもしれないけど、そんなの一切考えなくて、自分のことだけ考えて、いい形でシーズンに入れるような準備ができる環境でやってくれたらいいよ』というふうに(新井監督に)言われれて、そこでちょっと吹っ切れたというか。」

悩める大瀬良にかけた言葉。新井監督が、その意図を明かしてくれました。

■カープ 新井貴浩監督
「昨年、彼は今までのキャリアの中で一番うまくいかなったシーズンだったと思うんですよね。苦しかったシーズンだったと思うんですね。私は現役時代から彼を知っていますので、彼の真面目な性格、責任感の強さはすごくわかっていますから、真面目すぎるが故に、自分の気持ちを押し殺してマウンドに立っているように見えたんですよね。」

かつての自分と重なった大瀬良投手にかけた言葉

昨シーズンまでの2年間、選手会長を務めた大瀬良。どんなに苦しい状況でも「チームの顔」として、「エース」として、マウンドの上では表情を変えず、平静を装ってきました。

■カープ 大瀬良大地投手
「何をするにしても、特に若い子とか(の前では)、プラスになるような姿でいないといけないなとずっと思っていましたね。」

自身も、プロ9年目の年に選手会長を経験した新井監督。昨シーズンの大瀬良の姿を、当時の自分と重ね合わせて見ていたといいます。

■カープ 新井貴浩監督
「自分の状態がいいときは影響はないんですけど、なかなか自分の状態が上がらないときは、選手会長や肩書がさらに重しになってくる場合も。私もそういう経験をしたのでね。全部背負い込んでしまうので「背負い込みすぎなくていいから、ありのままでいきなさい」という気持ちで、そういう声かけをしました。」

■カープ 大瀬良大地投手
「自分がどう映るかとか、見えるかみたいなところを、ずっと気にして過ごしてきた部分があるので、自分に目を向ける度合というか、そういったものが増えたかなとその言葉で。それは僕にとってはありがたく、大きなことだったと思います。」

指揮官の言葉に背中を押された大瀬良。今シーズン、投球スタイルにある「変化」が起きていました。

■カープ 大瀬良大地投手
「喜怒哀楽というか、抑えてうれしければガッツポーズすることもあるし、悔しかったら天を仰ぐというか、そういうこともあるし。どっちかというと感情が(表に)出るタイプのピッチャーだと思うので、自分が思うがままにプレーしようと。」

〝自分らしさ”を取り戻し、復活を遂げた大瀬良。6年ぶりのリーグ制覇へ突き進むチームのため、そして自分を変えてくれた指揮官のために、がむしゃらに腕を振り続けます。

■カープ 大瀬良大地投手
「本当に監督は裏表がなくて、みんなをいい方に導いてくれるような言葉をたくさんかけてくれたから、みんながそれを信じてやってきて、今の順位にきていると思うので、優勝することが一番の恩返しになると思うので、(自分)〝らしさ”を全面にグラウンドで表現して、最後監督を胴上げしたいなと思います。」

大瀬良大地投手を支える「新井の言葉」は、『自分のことだけ考えろ』でした。以前、大瀬良投手は「自分はあまり言葉で伝えるのが得意ではないから、自分の背中とか立ち振舞で見せないといけない。だから厳しいダッシュを繰り返すメニューがあったとしても、途中の休憩の時に、本当は膝に手をついて、楽な姿勢を取りたいけれども、そこをグっとこらえて、若い選手の前で「いや、大丈夫なんだ」というような姿を見せないといけないという風に、そこまで自分がどう見られてるかというのを考えていた。」と話していました。しかし、監督の言葉がそれを取っ払ってくれたと言います。では、新井監督は選手に言葉をかける上で、どんなことを気をつけているのか、考えているのでしょうか。

■カープ 新井貴浩監督
「飾らず本音で対話をするというのは心がけていています。なぜかというと心にない言葉を、取り繕った言葉で選手と会話してしまうと、後々整合性がとれなくなるのが嫌なので。私がかけた言葉は選手はずっと覚えていると思うんですよね。かけた言葉が、2・3か月後に違う言葉になっていたら、選手は戸惑うと思いますので、その都度、その都度、自分の気持ちに正直な言葉を各選手に掛けるようにしています。」

選手たちに対して、ポジティブな言葉をかけていることについては…

■カープ 新井貴浩監督
「私が上手な選手ではなかったので、うまくいかない選手の気持ち、失敗した時の悔しい気持ちを、私は誰よりもわかっていると思いますので。プラス、そんなに簡単に野球が上達するものではない、簡単なものではないということも私は経験していいますので。努めてポジティブな言葉をかけようとは思っていないです。そんなに簡単にはうまくいかないよと思うので、そこも正直に出ている言葉だと思います。」

新井監督が残り試合で、どんなマネジメントをしていくのか、またどんな言葉がこれから出てくるのかにも注目です。さらに『自分のことだけ考えろ』と言われた大瀬良投手のピッチングに、今後も期待しましょう。
《2024年9月3日 広島テレビ「テレビ派」で放送》