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【広島・原爆の日】2024年平和記念式典の平和宣言と首相挨拶 池上彰さんが注目した『言葉』とは

2024年8月6日 19:42
【広島・原爆の日】2024年平和記念式典の平和宣言と首相挨拶 池上彰さんが注目した『言葉』とは

2024年平和記念式典の広島市の松井市長の平和宣言と、岸田首相の挨拶を、池上彰さんと振り返ります。

■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
松井市長の平和宣言ですが、注目点はどういったところでしょうか。

■池上彰さん
従来の松井市長の挨拶と言いますと、例えば被爆者の体験の話であるとか、思いを紹介するところから始まっていましたね。ところが今回はですね、ストレートに「皆さん、自国の安全保障のためには、核戦力の強化が必要だという考えをどう思われますか。」という、こういう問いかけから始まってる、直球勝負という感じがしますよね。特に「核抑止力」という言葉が広がっていて、核兵器はやっぱり必要だという思いが広がってることに対して、そうではないんだと。特にゴルバチョフ元大統領の言葉を紹介しながら、やっぱり世界の為政者ですね。政治の指導者たちの決断を求めていく、それによって、この核抑止力という考え方を払拭する、それが可能なんだということを訴えたということだと思いますね。

■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
現在の世界情勢に合わせて、今までと少し平和宣言の内容を変えてきたということになりますね。

■広島テレビ 井上沙恵アナウンサー
一方で、岸田首相の言葉で気になったものはありましたか。

■池上彰さん
そうですね。気になったところがあんまりないというところが、注目点という。つまり、例年の挨拶とあまり変わらなかったということなんですね。あえて紹介しますと「現実的かつ実践的な取り組みを進め、核軍縮に向けた国際社会の機運を高めるべく、国際社会を主導してまいります。」核軍縮に向けた国際社会の機運を高めるという、こういう言い方になっているわけですね。松井市長は平和宣言の中で、日本政府に対して「核兵器禁止条約の締約国になる。せめてその前に、まずオブザーバー参加をしてほしい。」と訴えたわけですけど、それについて、岸田総理は全く触れていないということですね。岸田さんの本人の思いとは別に、やっぱり総理大臣とすると、こういう挨拶になってしまうというところもあるんだろうと、こう思うわけですけど。あくまで「国際社会の機運を高めるべく主導する」、では具体的にどうするんだろうということに対して、やっぱり被爆者の不満というのは残りそうな気がしますね。

■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
岸田首相もそうですし、松井市長もそうなんですけれども、お2人とも言葉の中に「現実的な取り組み」というのがあって。ただ「現実的な取り組み」で松井市長は「核兵器禁止条約にオブザーバー参加してください」という言葉がありました。同じ「現実的」なのに手法が全く違うという。

■池上彰さん
そうですね。つまり「現実の中でどうこちらが進めていくのか」という考え方か、「現実はこうなんだから、その中で何をするか考えようよ」という姿勢の違いかなと思いますね。

■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
つまり、政府と被爆地・広島の違いというところですか。

■池上彰さん
違いが出るということですよね。やはり岸田総理、この被爆地・広島選出の国会議員だというので、特に被爆者の方々からの期待も大きかったと思うんですが、これまでのところ、ちっとも変りがない、変化がないよという、そういう思いをやっぱり強くしてるんだろうと思いますね。

■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
平和宣言の内容を変えた松井市長に対して、挨拶があまり変わらなかった岸田首相ということで、お互い少し対象的な今回の式典の挨拶ということになりました。

【2024年8月6日放送】