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世界が認めた広島の地域医療 高齢者も医療関係者も「おもしろかった」と思える社会へ【アナたにプレゼン・テレビ派】

2025年2月13日 19:11
世界が認めた広島の地域医療 高齢者も医療関係者も「おもしろかった」と思える社会へ【アナたにプレゼン・テレビ派】

広島県呉市大崎下島発の世界が認める地域医療の取り組みについてお伝えします。

大崎下島は、人口およそ1600人で、65歳以上の高齢者が70%を占めています。島や山間部では、病院や診療所が少ないという課題があります。大崎下島には診療所が2つありますが、常駐している診療所がないという医療課題を抱えています。

しかし2024年、大崎下島のある取り組みが、アジア12カ国・地域が参加する「アジア健康寿命イノベーション賞2024」で大賞に輝きました。

仕掛けているのは「Nurse and Craft」を立ち上げた、深澤裕之さんです。出身は長野県で、父の在宅介護をきっかけに、介護関連の仕事に就くようになりました。とびしま街道には、訪問看護ステーションがないという現状があります。それにより、退院後にパートナーが高齢、あるいは1人暮らしなどで援助がない場合、自宅療養が困難になります。また、バスで呉市内までおよそ1時間半かかり、便数も少ないことから通院治療も難しいため、介護施設に入所せざるを得ないといいます。このような場所に、訪問看護ステーションがない理由は「経営が成り立たないから」だそうです。

それを解決するのが、「Nurse and Craft」の取り組みです。「訪問看護」「高齢者向けヘルスケア」「ヘルスツーリズム」の3つの事業に分かれています。

1つ目の「訪問看護」についてです。ポイントは「孤独を解消する」ことをテーマに置き、塞ぎ込むことで病気の一因になる段階から、一時予防をしていきます。そこで立ち上がったのが「コミュニティランチ」で、月に1回、地元の人々と一緒に料理をしながらコミュニティを作っていく取り組みです。

立ち上げ当初は7人ほどでしたが、現在ではおよそ50人が参加するイベントになりました。季節に応じて外でランチを行ったり、夜には参加者と一緒に踊ることもあるそうです。人と話すことで元気をもらい、地域の人々も元気になる取り組みによって、地域全体の健康を高めていきたいという思いがあります。

2つ目の「高齢者向けヘルスケア」についてです。テクノロジーを活用したヘルスケアで、最先端の機器を使用しています。スマートウォッチをつけることによって、心拍数や睡眠データを自動的に集約します。また、尿検査キットもスマートフォンを使うことによって、AIが分析して栄養状態を管理します。これらを月1回、あるいは月2回の訪問看護で、直接コミュニケーションを取ります。

3つ目の「ヘルスツーリズム」についてです。医療や介護に関わる人々を対象としていることが大きな特徴です。人手不足で離職も多く、精神的な負担を抱える医療関係者のために、海に囲まれた大崎下島の環境を最大限に生かすことができるのではないかと、長野県出身の深澤さんだからこそ感じられたそうです。

まずは、瀬戸内の自然でリフレッシュして気分転換をしてもらいつつ、へき地医療の在り方を体験して学ぶことで、医療関係人口を創出につなげていきます。とびしま海道だけではなく、県外から来た医療関係者も、ここでの経験を活かし、様々な場所で地域医療に関わってもらいたいという思いがあるそうです。この中に先述の「コミュニティランチ」なども組み込むことによって、様々な人々が関わるような仕組みを作っています。

訪問看護ステーションがない理由は「経営が成り立たないから」でした。これを解決するのが、これまで紹介した3本の柱です。「訪問看護」で得る診療・介護報酬から資金を得ること、「高齢者向けヘルスケア」で利用者家族が利用料を支払うこと、「ヘルスツーリズム」でツアー参加者が料金を支払うことで収益化することによって、経営が成り立つ仕組み全体を構成していきます。深澤さんは 「健康寿命を延ばす地域活動やサービスを通じて新たな産業の創出を、そして住む人たちが100年生きたら、おもしろかったと思える社会を目指していきたい」としています。

最終更新日:2025年2月13日 19:11