【ジャムからフルーツへ】多彩な経歴を生かして新たな風を巻き起こす 『アヲハタ』に誕生した初の女性取締役
創業90年余り、ジャム業界でトップシェアを誇る地元企業の「アヲハタ」に、2月に初めての女性取締役が誕生しました。老舗企業の可能性を広げようと奮闘する姿を追いました。
■アヲハタ 研究開発本部新カテゴリーチーム 長谷川和貴さん
「ジェラートみたいな食感になるよねとか、まだちょっと硬いよねとか、ここで甘さが出てきておいしいよねとか、やったことがあります。」
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「そういうのをちゃんとホームページとかで伝えた方がいいよね。」
商品開発のスタッフと意見を交わす藤原かおりさんは、2月に「アヲハタ」初の女性取締役に就任したばかりです。
「アヲハタ」は、1932年に広島県竹原市で創業しました。それから90年余りで、家庭用ジャムのシェアおよそ3割を占める、トップランナーに成長しました。一方で、ジャム市場全体の生産は、この10年で1割減っています。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「年々ジャムの市場自体が少しずつ下がっている。ここから急激に大きく伸びるような市場かというとそうではないかなと思うので、いかに付加価値の高い商品を生み出していけるか。」
経歴は多彩です。「カルビー」で新たな分野を発展させ、「キューピー」で最年少の女性上席執行役員に就任し、マーケティングで実績をあげてきました。
関東出身の藤原さんは現在、東京にいる夫と離れ、三原市で単身生活を送っています。久々のワンルーム暮らしです。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「自転車用にへルメットを買いました。電動自転車買って週末はアクティブに島を自転車で走ったりして楽しんでいます。」
東京のマーケティング本部との往来も多く、旅の日々が続きます。それでも、創業以来、瀬戸内を臨む竹原市に本社を構えることの意味を問うています。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「最初みかんの缶詰とママレードから始まっているので、原料がある産地に工場作る、会社を構えたので、ここで頑張ってるっての、すごくいいことだなって思っていますし、だからこそもっと成長しないといけないなと思います。」
この日は、研究開発チームとの打ち合わせです。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「ジャムのアヲハタからフルーツのアヲハタへと、今掲げていますので。」
今期待するのが、果物を果汁に漬けて凍らせた、その名も「くちどけフローズン」です。議論したのは、その「香り」です。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「本当だ。はじめて。ジャムの開けたときみたいなにおいがするね。香ってから食べてくださいとか伝えたたほうがいいかもしれない。」
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「どう?いちごの香り。もっと香り良くなる?」
■アヲハタ 研究開発本部ジャム・スプレッドチーム 三好幸恵さん
「フレッシュで一番苦労したのが、凍結したときの独特の香りがどうしても出てしまうところを、イチゴ本来の香りでカバーしておいしくしているというのが、もっともっと高めたいですね。」
■アヲハタ 研究開発本部新カテゴリーチーム 長谷川和貴さん
「(藤原さんは)お堅いイメージがあるのかと思っていたけど、全然違って話しやすくて、コミュニケーションをとることで、くちどけフローズンをスピード感をもって進化させていけるような。」
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「どんどんいいものを作ってもらえれば、どんどん発信しますという感じですね。」
竹原市にある本社から車でおよそ1時間半。向かったのは、三次市にある果実を研究するアヲハタ独自の施設です。およそ160種類にも上るイチゴを栽培しており、新たな製品に適した品種を研究しています。
■アヲハタ 研究開発本部育種・栽培研究ユニット 清水克幸さん
「加工っていうのは、手を加えるものなので、手を加えても香りが残るだとか、あとは色が鮮やか。」
着色しなくても、見栄えを良くするという目標を掲げ、中まで赤いイチゴを試験的に栽培しています。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「フルーツのことを知り尽くしてるんですよ、みんな。アヲハタの技術、アヲハタの人、アヲハタの原料、そこをわかりやすくちゃんとお客さんに伝えたいと思っています。」
東京の表参道で、藤原さんが1週間限定の「アヲハタフルーツパーラー」を手掛けたのは、3月上旬でした。期待を胸に向かいますが…
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「どこまで並ぶかなと思っていたけど、ぐるっと動線を作っていたんですけど、意外と並ばない。率直な感想です。」
そんな流れを一気に変えたのが、藤原さんが「アヲハタ」の新たな顔として期待を寄せる、果汁に漬けて冷凍したイチゴを使った「パフェ」の登場でした。白と赤の鮮やかな色彩の共演に、女性客を中心に次々と注文が入ります。
■パフェを食べた客は…
「冷凍というか、生のイチゴぐらい甘い感じが美味しかった。食べやすい。」
「手軽に食べられるなら、嬉しいなと思いました。」
「フローズンがに気になっていて、普通のフローズンじゃなくて果汁につけてフレッシュな感じがして、びっくりしました。」
「すごく美味しかったから、期待が膨らんだ。」
外には行列もでき、マーケティングのプロの面目躍如です。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「できるだけたくさんの人に食べてもらうなら、ルールはわからないけど、外でサンプリングとか試食をしてもらうのも、やれてもよかったかなって。」
店内では、特別にイチゴを摘める仕掛けも用意しています。目指すのは『フルーツのアヲハタ』です。
■アヲハタ 取締役 藤原かおりさん
「通りがかりの方がジャムねって去って行く。やっぱりジャムって呼ばれてんだなって改めて実感しますね。これがジャムじゃないフルーツでって言ってもらえるのは、何年かかるかなって思いながら、今見ていました。」
「フルーツで、人々を幸せにする」。広島という新たな舞台で、老舗企業の可能性を探る女性取締役の取り組みの第1幕が始まりました。
【テレビ派 2024年3月19日放送】