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【認知症】2025年には5人に1人とされる… 地域の支えと共に、施設と自宅で介護を目指して 福山市鞆町の介護施設の取り組み 

2024年4月12日 16:24
【認知症】2025年には5人に1人とされる… 地域の支えと共に、施設と自宅で介護を目指して 福山市鞆町の介護施設の取り組み 

厚生労働省によると、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推定されています。そんな中、広島県福山市のある町で介護施設を中心に地域の人たちに協力を仰ぎながら、介護が必要な人が自宅で過ごせるよう取り組んでいます。その現状を取材しました。

福山市鞆町で暮らす土居利昭さんは77歳。その横で薬を飲むよう促すのは、土居さんの介護を支援しているケアマネージャーの石川裕子さんです。妻と2人の息子と4人で暮らす土居さんは、およそ7年前から認知症を患っています。今は、自分の名前が分からなくなる時があり、トイレなどの介護がなければ日常生活を送れません。

妻の洋子さんに見送られて、土居さんと石川さんが向かうのは、自宅から歩いて10分ほどにある介護施設「さくらホーム」です。土居さんは週6日、ホームのデイサービスを利用しています。石川さんは、ホームのケアマネージャーです。

■さくらホームケアマネージャー 石川裕子さん
「(施設では)基本的に必要なお風呂に入ったり、トイレのこととかさせてもらっているが、あとはゆっくり過ごしている。ほかの利用者と体を動かしたりとか。」

ホームを立ち上げたのは、羽田冨美江さんです。「さくらホーム」は、築350年の古民家を改装し、20年前に開所しました。利用者は全員、福山市鞆町内に住む高齢者です。

■さくらホーム施設長 羽田冨美江さん
「『鞆酢花浪』というお酢屋だったが、そこが閉めて、空き家に何年もなっていた。」

羽田さんは、施設と在宅介護を併用し、利用者が自宅で暮らせることを目指してきました。

■さくらホーム施設長 羽田冨美江さん
「そこの家の経済状況もいろいろあるし、ご夫婦で認知症の方もいる。2人とも(夫婦で)施設に入ればいいのではないかと地域の人は簡単に言うが、2人(夫婦で)施設に入ったらどれだけお金がかかるのかということなんですよね。」

認知症になっても、これまで通り自宅で生活するには、地域住民の理解や協力が重要になります。散歩中の土居さんに近所の人たちが声をかけに集まってきます。

■近所の人は…
「かわいそうに。急に(認知症が)進んだ。手を貸すというのではなく、声掛け。」

「さくらホーム」のスタッフは、利用者の近所の人たちに病状などを説明しています。利用者の見守りや声掛けをお願いするためです。今では多くの人が協力してくれていますが、20年前は状況が全く違いました。

■さくらホーム施設長 羽田冨美江さん
「『早く(入居型の)施設に入れないと家族がかわいそう』とか、『この町を認知症だらけにするのか』とか、たくさん苦情をもらった。10年目くらいから散歩していたら、声をかけてくれたり(するようになった)。」

利用者が自宅で生活する中で生じる困りごとや悩みについて、ホームは利用者から連絡を受けるとすぐに駆け付けます。この日、利用者の家族から「足の状態を確認してほしい」と連絡があり、石川さんが対応します。石川さんのスマホには、次から次へと相談の連絡が入ってきます。急いで車に乗り込み、次の利用者のもとへ駆けつけます。自宅で物が見つからないという相談もしばしばです。石川さんは多いときは、1日に20軒ほど利用者の自宅を訪問します。スマホの着信も50件を超えることもあります。

■さくらホームケアマネージャー 石川裕子さん
「大変なのかな…。色んなことが起きるので大変だけど、飽きずに働けているので、ラッキーな感じ。」

さくらホームのスタッフは、24時間365日いつでも駆け付けます。そのため、利用者はホームから半径400メートルの地域に住む人に限定しています。

■さくらホーム施設長 羽田冨美江さん
「きっと何かあったら、さくらホームが解決してくれるだろうと地域の人たちが思ってくれているので、(地域の人たちが)自分たちのできることは、できる限り手伝ってやろうと思ってくれてるんだなと。」

また、地域の祭りやイベントにも積極的に参加します。利用者が作った小物や焼き芋を販売するなど、交流を通して地域の人と顔なじみの関係を作ってきました。

■さくらホームスタッフ 高本友子さん
「『さくらホームの高本です』と言っただけで、(地域の人が)受け入れてくれる感じがある。」

介護が必要な人が増える一方、介護する人が急激に増えることはないからこそ、地域全体で取り組む介護が必要になると、さくらホームは考えています。

■さくらホーム施設長 羽田冨美江さん
「仕方がない時代に来たので。安心して暮らせる町を、地域の人と共同していって、やっと維持できると思う。」

利用者とスタッフ、そして地域の人たちが、それぞれの役割を果たして介護する。近づく超高齢化社会が、これからの介護の在り方を問いかけています。