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広島県初の快挙! 「職員の人間力が入居者の安心に繋がる」 全国の模範にふさわしい介護事業所をプレゼン ~後編~ 【アナたにプレゼン・テレビ派】

2024年4月19日 19:27
広島県初の快挙! 「職員の人間力が入居者の安心に繋がる」 全国の模範にふさわしい介護事業所をプレゼン ~後編~ 【アナたにプレゼン・テレビ派】

広島テレビのアナウンサーが、気になるテーマを自ら取材して、お伝えする『アナたにプレゼン』。馬場のぶえアナウンサーのテーマは「子育て」や「福祉」。今回は、最優秀賞を受賞した介護事業所で取り組んでいる「ユマニチュード」についてプレゼンします。

前回プレゼンした、働きやすさと地域貢献で最優秀賞を受賞した広島市西区の不二ビルサービスのケア事業部が、組織的に取り組んでいる『ユマニチュード』という介護のやり方を紹介します。

『ユマニチュード』とは、フランス語の造語で「人間らしさを取り戻す」という意味です。フランスの体育学の教師が作ったケア技法で、45年の歴史があります。「ケアする人とは何かを考える哲学」と「その哲学を実現するための技術」からなり、認知症の症状の改善や介護する側の負担の軽減、また、薬剤やおむつの使用量の減少など医療費削減の報告があります。

日本ユマニチュード学会事務局長の永井美保子さんは「ユマニチュードは、あなたのことを大切に思っていますよと伝える技術」と言います。自宅などで家族の介護をしている人の中には「優しくできない」と悩んでいる人も多いのですが、永井さんは「お世話をしている時点で、十分優しい方です。その優しさを伝える方法が、ユマニチュードです。」と話しています。

ユマニチュードには「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの柱があります。この4つは普段の行動や言動ですが、相手に優しい気持ちが伝わる見方や話し方などがあります。

まず「見る」についてです。介護をする時、相手を見ているようで、意外と手元を見ていることが多いと言います。そのため、相手に優しさを伝えるためには、同じ目の高さ、近くからもしくは正面から見ることが大切です。また、相手に優しさが伝わる距離は、ユマニチュードでは20cmだそうです。

続いて「話す」についてです。優しさが伝わる話し方として、ユマニチュードが大切にしていることは「低めで大きすぎない声」「前向きな言葉」「手が行っていることを言葉にする」です。例えば、相手の着替えを手伝う時に、「右手を上げますよ。昨日よりよく伸びますね。嬉しいです。」と会話をしていきます。お世話をする時は、集中して無口になってしまうので、意識して行うことが大切だそうです。

続いては「触れる」についてです。「広い面積で触れること」「つかまないこと」がポイントとなります。遠慮して触れる面積が小さくなると、戸惑いを相手に与えてしまいます。また、つかまれると無理やり何かをされているような気持ちにしてしまうそうです。

最後に「立つ」についてです。ユマニチュードでは「1日合計20分立つこと」を推奨しています。介護の時に、できるだけ立つことを増やすことで、寝たきりの状態を防げるそうです。具体例として「立って着替えてみる」「食堂へ歩いて移動してみる」というのが挙げられます。施設によっては、転倒の危険があることから、できるだけ車いすで移動するという考え方もありますが、ユマニチュードは、本人が持っている能力をできる限り使うことで、健康維持や向上を目指しています。

ユマニチュードに組織を挙げて取り組んでいる不二ビルサービスの中で、「グループホームふじの家瀬野」は、2023年に国内の介護事業所としては初となるブロンズ認証を取得しました。

ホームでは、ユマニチュードの日めくりカレンダーを作りました。ユマニチュードの技術や哲学をカレンダーに載せて、常に職員が意識できるように工夫しています。また、ユマニチュードは自分のことを自分で決める「自律」を大切にしており、食事や寝具のシーツも入居者が自分で選んでいます。自己決定の機会を増やすことで、入居者に変化が現れているそうです。

「グループホームふじの家瀬野」の槇田征臣施設長によると、入居者の表情が柔らかくなり、介護を拒否されることが少なくなったんだそうです。また、精神的に落ち着いて、薬の量が減った入居者もいるということでした。


実際に元々持っていた能力を、ユマニチュードで引き出した入居者もいます。波多野美代子さんは、ホームに入居する前、こたつから立ち上がるのも難しく、紙のパンツが欠かせなかったそうですが、ユマニチュードに触れて、自分でトイレに行けるようになったと言います。娘の直美さんは「自分でトイレに行こうという意欲が出て驚いた。笑顔も増えて嬉しい。」と話していました。

入居者だけでなく、スタッフにも変化があると言います。不二ビルサービスケア事業部「ふじケア」の冨田祐介部長は「スタッフも入居者の変化を感じて、そこからやりがいを感じ、さらに優しさを届けるケアに学びを深めている。今後は、入居者の自由と自律を尊重し、スタッフがその生活の中に喜びを感じられる事業所にしていきたい。」と話していました。最優秀賞を受賞した介護事業所が取り組む、介護する側とされる側の双方が幸せを目指す『ユマニチュード』を紹介しました。