事故で全身まひに 手作り装具で描き続けた画家の遺作展
事故で全身まひになりながらも多くの絵画を描き続け、今年亡くなった熊本市の画家、石田澄男さんの遺作展が熊本市で開かれています。作品から浮かび上がる創作の舞台裏を取材しました。
「手」と題した石田澄男さんの油彩画。自由に動かすことが出来ない自らの手を無数の点で描いています。腕を固定したため自由に絵筆を使うことができず、点描で描かれています。しかしその制限が、石田さんの描き方を生み出しました。
■東島大デスク
「この絵のサイズで描くのは大変ですよね」
■熊本市現代美術館 坂本顕子学芸員
「途方もない時間がかかると思います。この画面全体で、本当に余すことなく、手を抜いてるところが一つももないんです。完璧に仕上げているなって」
益城町出身の石田澄男さん。若いころは料理人を目指していました。20歳の頃、事故でけい椎を損傷し、首から下を自由に動かすことができなくなりました。しかし、絵筆を手に固定する手作りの装具を使って絵を描き続け、毎年公募展に出品。入賞を重ねるまでになりました。創作を続ける中で今年7月、突然の病に倒れ帰らぬ人となった石田さん。70歳でした。
遺作となった作品「ジャンパー」。自宅のアトリエで見つかりました。
■熊本市現代美術館 坂本顕子学芸員
「石田さんの作品は、全体をこう、なんていうのかな。 えも言われない夕焼け色というか、優しいオレンジ、暖色系の色が包んでいるんですけど、これ、背面のところは全部グレイ系の色でつぶされていますよね。どういうふうに後ろを完成させていこうと思われてたのかなって、未完成なだけに思いが巡らされます」
石田さんは一人で暮らしながら絵を描き続けるためにいろいろな工夫をしていました。自宅のアトリエを見ると、カンバスにひもがつながっています。その先についているのは重り。この重りを引っ張るとカンバスが上がる仕組みです。わずかな力でカンバスを上げ下げ出来るように工夫して作った装置です。こうやって、石田さんは自分にできことは全て自分でやりながら、創作活動を続けていました。
今回の遺作展は石田さんと親交のあった人たちが協力して開かれ、公募展で入賞した作品など6点が展示されています。遺作展は、熊本市中央区九品寺の熊本県教育会館ロビーで11月26日まで開かれています。(入場無料)