出自伝えることに不安抱える養育者へのサポートを『こうのとりのゆりかご』検証報告
熊本市の慈恵病院が設置している「こうのとりのゆりかご」の運用をめぐっては、学識者による専門部会が半年に1回検証を行い、国や関係機関に提言などを行うため3年に1回報告書をまとめています。
専門部会の安部計彦部会長は5日、昨年度までの3年分を検証した報告書を熊本市の大西市長に提出しました。大西市長は、ゆりかごが多くの命を救った役割は大きいとした上で、養育環境などの検証が重要だと話しました。
■熊本市 大西一史市長
「預けられた子どもたちがどういう養育環境にあるのかということが、子どもたちのこれからの成長に大きく影響していく」
報告書によりますと、2005年の開設から昨年度までに170人が預け入れられ、このうち135人の身元が判明しています。その後の養育環境で最も多いのが、特別養子縁組の家庭で育っている子どもで63人です。
そうした中で、熊本市児童相談所が一昨年実施した調査で、特別養子縁組の家庭で「ゆりかご」に預け入れられたことを告知したのは18%にとどまることが明らかになっています。
今回の報告書では、子どもたちに出自を伝える「真実告知」に不安や悩みを抱える養育者に対し、里親支援センターなどが中心となったサポートが望まれるとしました。
■こうのとりのゆりかご専門部会 安部計彦部会長
「実の親は、あなたに生きていてほしい、幸せになってほしいと思ってゆりかごに預けたんだ。ゆりかごに預け入れられたことを肯定的に伝えることが大事」
また、国に対しては、慈恵病院が預かった子どもの身元情報について国の機関で安全に継続して保管することなどを要望しました。
報告を受けて、慈恵病院の蓮田健理事長は。
■慈恵病院 蓮田健理事長
「現実は非常に厳しい。子どもにとってダメージ受けるような内容も多々ある。本当は国をあげて議論しなければならない話」
子どもの出自を知る権利の保障をめぐっては、学識者による検討会で議論が進められていて、年内にも国への要望を踏まえた報告書を取りまとめる予定です。