「トイレがないマンション」原発の"核のごみ"受け入れる?熊本の自治体に独自調査
原発はトイレがないマンション?
(緒方太郎キャスター)
「記者のコトバ」今回のテーマはこちら。「トイレがないマンション」です。
何のことかといいますと、そう例えられているのは「原子力発電所」なんですね。
私は福島県で暮らしていたので、事故を起こした原発をめぐる問題を取材してきました。
九州では2か所で原発が稼働していて、熊本県に住む多くの人たちも原発が生む電気を使って生活しています。
なぜ原発はトイレがないマンションと例えられているのでしょうか?
【VTR】
「トイレがないマンション」。原子力発電所がそう例えられている理由は、原発から電気を生んだ後に出る放射性廃棄物を処分する場所が全く決まっていないからなんです。
これは、人が近づけば十数秒で死にいたるほどの強い放射線を出します。当たり前に電気を使う一方、危険な「核のごみ」は処分場がないまま今も増え続けているのです。
街の人は知っている?
■街の人
Q電気を作った後のごみってどうなるか知っていますか?
「えーわからないです」
「あまり考えたことがなかったですね」
「危険なものだと思いますけど、地震がある日本だと問題ですよね」
電気を使う私たちにとって決して他人事ではありません。
KKTでは、県内の市町村にこの問題について独自にアンケートをしました。
あなたの街は、どう考えているのでしょうか?
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
国は地下300メートルより深いところに埋めて、最終的に処分することを法律で決めていますが、処分場が決まるまでには20年近くの調査を要します。今年この問題に一石を投じたのが、お隣・佐賀県の町でした。
調査受け入れた佐賀県の町
■佐賀県玄海町・山伸太郎町長
「これまでの町議会でのご意見や議論、加えて国からの要請を熟考した結果、文献調査を受け入れる決断に至りました」
佐賀県の玄海町長が、最終処分場を誘致する第1段階となる調査を受け入れたのです。玄海原発がある町として、住民グループからの強い抵抗もある中での決定でした。この調査に手を挙げたのは、北海道の2つの自治体に続き玄海町が全国3例目です。
九州でも手が挙がった処分場受け入れに向けた調査。熊本県の木村知事はどう考えているのでしょうか?
■熊本県・木村敬知事
「熊本県内に原子力発電所が立地していないことをもって、他人事のように言うことはできないと思っています。国においてしっかりと議論していく事項だと思っています」
全市町村にKKTが独自のアンケート調査
【スタジオ】
長年、国が放置してきたことで、国民的な議論が進まぬ中、お隣の県で動きが起きたわけです。この問題を知ることに意味があると考え、KKTでは県内全ての市町村にアンケートを配り、45市町村のうちの36市町村から回答を得ました。
まずは、
「処分場誘致の第1段階・文献調査を受け入れる考えはありますか?」の質問です。
【各自治体からの回答】
▽ある 0
▽あり得る 0
▽否定的だ 0
▽ない 29
▽どちらとも言えない 7
▽回答なし 9
「ない」の主な理由は以下の通り。
▼八代市
「農業が盛んな本市において受け入れた場合、風評被害がはかり知れないと考える」
▼熊本市、阿蘇市など複数
「『科学的特性マップ』で『好ましくない特性があると推定される地域』とされている」
経済産業省が公表した地図です。最終処分場に適する土地と適さない土地を色分けして示しています。オレンジやグレーの「好ましくない特性があると推定」する自治体では、調査を受け入れない回答が多くあった印象です。
「どちらとも言えない」の主な理由は以下の通り。
▼水俣市
「検討しておりません」
▼玉東町
「住民との丁寧な議論を重ねる必要がある」
そもそも検討していない自治体も一定数ありました。
では、最終処分場の必要性をどう認識していますか?とも問いました。
▼熊本市
「原子力安全・防災対策の観点から、国において適切に検討されるべきもの」
▼玉名市
「将来の世代に負担をかけてはならず、必要性は認識している」
▼宇土市
「国には安全性について十分な根拠を示してもらいたい。それがないと永遠に決まらないのではないか」
▼南阿蘇村
「原子力発電は必要なものであり、どこかの自治体が受け入れなければならない」
つまり我が街では受け入れ難いが、どこかに施設が必要だという考えがほとんどでした。
私たち1人1人はこの問題をどう考えるべきか、専門家に聞きました。
「どこかに負担押しつける」専門家が語る「理解の必要」
【VTR】
原子力規制委員会でかつて委員長代理を務めていた長崎大学の鈴木達治郎教授です。
■長崎大学・鈴木達治郎教授
「原子力発電を利用した国民全体の責任と考えた方が良くて、どこかに負担を押しつけることになるから、それについて国民全体で理解をしていく必要があると思いますね」
【スタジオ】
きょうの記者のコトバは「まずは核のごみに関心を」です。子どもや孫、その先の世代まで関わる話です。みんなが関心を持つことが国にはっぱをかける形で解決へつながると思います。