【走行中ドア開く】熊本市電車両の約半分が60年以上前に製造 一気に更新できない現実
2月、熊本市電がドアを開けたまま走行した問題で、国の調査官が現地調査に訪れました。問題が起きた車両は64年前に製造されたものでした。
この問題は2月23日、上熊本電停を出発した熊本市電の乗車ドアが走行中に2回にわたり開いたものです。乗客・乗員にけがはなかったものの、車両は安全装置が作動して停止するまでいずれも20メートルあまり走行しました。
国の運輸安全委員会は、人が落下するなど事故が発生するおそれがある重大インシデントと判断し、2日まで鉄道事故調査官2人を派遣し、関係者から聞き取りを行ったほか、現場の段山電停と洗馬橋電停や、上熊本車両工場でドアが開いた「1353号車」を調べました。
■運輸安全委員会 佐藤裕之鉄道事故調査官
「車両なり運行上の運転なり、いろいろな観点から調査している。原因究明と、それによって再発防止につなげたいと考えております」
運輸安全委員会はおおむね1年を目処に報告書をまとめる方針です。
今回、ドアが開いた1353号車は64年前の1960年に製造された古い車両です。熊本市電をめぐっては、1月にも今回の1353号車と同型の車両がドアを開けたまま走行し、安全装置が機能しなかったとして、運輸安全委員会が重大インシデントに認定しています。
熊本市交通局によりますと、熊本市電の車両、45編成のうち、約半分の22編成が60年以上前に製造されたものだということです。
最新の車両は、10年前に製造され、現在は修理のため運休している通称「COCORO」です。
熊本市交通局は2024年度、10年ぶりに新型車両を2台導入する予定です。熊本市電としては初の3両編成で、一度に110人以上を乗せることができる車両ですが、この10年で資材価格が高騰していることなどもあり、導入にかかる費用は2台で約9億円です。
新型コロナの影響で運賃収入が落ち込み近年、赤字となった年もあった熊本市交通局にとって、車両を一気に更新できない厳しい現実があります。熊本市交通局は、古い車両のメンテナンスを繰り返しながら、運行を維持していきたいとしています。