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【災害関連死】「同じ思いの遺族がつながる場を」熊本地震で4歳の娘を亡くした女性の思い

2024年4月18日 19:55
【災害関連死】「同じ思いの遺族がつながる場を」熊本地震で4歳の娘を亡くした女性の思い
2016年4月に起きた熊本地震では、これまでに273人の方が亡くなりました。このうち223人と8割を占めるのが、災害関連死の人たちです。災害関連死というのは、直接的な災害の被害ではなく、避難中や避難後に亡くなった方で、遺族が申請手続きをしなければなりません。

申請を受けた各市町村が、医師や関係者の判定、専門家による審査会などで災害による死亡か判断します。関連死と認められると、各市町村から遺族へ最大500万円の弔慰金が支給される仕組みです。

熊本地震の後4歳で亡くなりその後、災害関連死と認定された女の子がいます。母親はこの春、今後につなぐための一歩を踏み出しました。

合志市に住む宮﨑さくらさん。熊本地震で4歳の娘を亡くしました。
■宮﨑さくらさん
「悲しいという気持ちはずっと変わらないし、今でも会いたいし、話をしたい」

(携帯電話の動画)
■花梨ちゃん「退院したらいっしょに遊ぼうね。おもちゃでいっぱい遊ぼうね。バイバイ」

娘の花梨ちゃん。先天性の心臓の病気で入院中、熊本地震が起きました。入院していた熊本市民病院は倒壊のおそれがあり、転院を余儀なくされました。本震から5日後。転院の負担も重なり、花梨ちゃんは4歳でこの世を去りました。

リビングに飾られたぬいぐるみや洋服。花梨ちゃんに向けたものです。生きていれば、この春小学校を卒業していた花梨ちゃん。月日がたち、戸惑うことも…。
■宮﨑さくらさん
「最初はおもちゃとかを買っていたんですけど、生きていれば12歳なので、なかなか難しくなってきて想像が…」

こうした中、今さくらさんが大切にしているのが、絵を描く時間です。描くのは、ふたりの女の子。成長した花梨ちゃんとお姉ちゃんです。

■宮﨑さくらさん
「落ち着く時間でもありますし、花梨もよく描いていた。入院中、ベッドの上でクッションを台にして、真剣な顔で。それも思い出すし、思い出の中の花梨と会っているような時間かな。私とお姉ちゃんと花梨をつなぐものなので、すごく大切な時間ですね」

この日、さくらさんに来客が。フリーライターの山川徹さんです。能登半島地震を受けて災害関連死の取材をするため訪れました。
■フリーライター 山川徹さん
「能登の破壊された映像を見ると、過去のこと、8年前の熊本地震やご自身たちが置かれた状況はよみがえりますよね」
■宮﨑さくらさん
「当時に戻りますし、普段思い出さないようにしているような辛いところが一気に戻ってきますし、何ともやるせない気持ちとか、当時の後悔とか、いろんな気持ちになります」

避難生活による心身の不調や病状の悪化などを原因とする災害関連死。東日本大震災では3802人が認定されました。
■宮﨑さくらさん
「当時のことを考えると、災害関連死の申請をするにあたって、ものすごく葛藤があった。その時に、もし誰か近くに聞いてくれる人がいたら違っただろうなと」

「同じ思いを抱える遺族がつながる場をつくりたい」。そんな思いで、東日本大震災から13年がたった今年3月11日、さくらさんは「災害関連死を考える会」をつくりました。さくらさんと共に発起人となったのは、東日本大震災の被災地で災害関連死の認定に携わった弁護士です。今後、山川さんの協力も得て、災害関連死の遺族の声をホームページで発信したり、講演会を開いたりする計画です。

■フリーライター 山川徹さん
「災害関連死は支援政策の失敗事例だと思うんです。きちんと支援政策、サポートが確立されていれば災害関連死は防げるという前提に立てば、彼らの死から学ぶことは非常に多いので、ひとつひとつから目を背けないくみ取っていく、くみ上げていく努力が必要」

■弁護士 在間文康さん
「遺族が手続きを終えた後に問題意識を持っていても、発信するのはなかなか難しい。そこをさくらさんが非常に強い責任感、問題意識を持って発信していただけるのは心強い」

娘が命をかけて残してくれた最期の声。
■宮﨑さくらさん
「ちゃんとあの時のことを知って欲しいし、残していかないといけないと思っているし、命をかけて教えてくれていることと思うので、その方の命を次につながる命に必ずいかしていかないといけない。亡くなった方たちが残してくれたもの、最期の声をできるだけ多く拾って、大切に扱って、そこで終わりにするのではなく、何かの形、次につながる形にもっていけるように私たちも動いていきたい」

震災の記憶を今後につなぐため、遺族が踏み出した新たな一歩です。