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【おとなり図鑑】 江津湖 豊富な湧水量誇る熊本のオアシスには生態系脅かす生き物も

2023年9月26日 20:04
【おとなり図鑑】 江津湖 豊富な湧水量誇る熊本のオアシスには生態系脅かす生き物も

熊本の自然や生き物を調査し学ぶ、新シリーズ「おとなり図鑑」。あなたの“おとなり”にもこんな植物やあんな生き物がいるかもしれませんよ。1回目は、熊本市民の憩いの場「江津湖」です。自然豊かな場所ですがある問題も。

■上山音アナウンサー
「やって来ました、江津湖!本当に広大で、まさに熊本市のオアシスですよね。きょうは、ここにどんな生き物たちが住んでいるのか探検しにいきます!」

熊本市動植物園のおとなりにある江津湖。周囲6キロ、湖の広さは約50ヘクタール。1日40万トンに及ぶ豊富な湧水量を誇り、まさに日本一の地下水都市・熊本のシンボル的存在です。

今回、江津湖を一緒に調査してくれるのが…。

■熊本博物館 清水稔学芸員
「博物館の清水です宜しくお願いします」

熊本博物館学芸員の清水稔さん。専門は動物生態学。学生時代はアフリカで魚類の研究をするなど、水生生物のエキスパートです。

■上山音アナウンサー
「清水さん、江津湖にはどういう生き物がいるんですか?」

■熊本博物館 清水稔学芸員
「色んな生き物がいますよ。水辺なので魚は非常に多い。ちゃんとカウントすれば、軽く1000は超えます」
■上山音アナウンサー
「そんなにいるんですか?せいぜい100ちょっとかと思ってました」

豊富な地下水が湧き出る江津湖は年間を通して水温の変化が小さく、魚だけでも約50種類が生息しています。中には全国的に数が減っているタナゴ類など、希少な魚も見ることができます。

今回探索するのは「下江津湖エリア」。ここの公園にはいくつもの水路が流れていて、水遊びをする子どもたちにも大人気のスポットです!

いきなり網を持って水に入る清水さん。水草の下を“ガサガサ”すると…。

■熊本博物館 清水稔学芸員
「これは在来種なんですが、ミナミヌマエビ」

江津湖では超メジャーな生き物、ミナミヌマエビ。こうした小型のエビが数多く住む水辺は、それを食べる小魚にとって住みやすい環境でもあるということなんです。

そんな自然豊かな江津湖にいるのは日本の生き物だけではありません。

(ガサガサ網で捕まえる)

■熊本博物館 清水稔学芸員
「外来種が2種類。大きい方がジルティラピア。アフリカ原産の魚ですね。これがカダヤシという魚で特定外来生物」

■上山音アナウンサー
「特定外来生物ってことは、普通の外来生物とは違うんですか?」

■熊本博物館 清水稔学芸員
「違います。法律で取り扱いが規制されている」

江津湖でも増えている特定外来生物

特定外来生物は、外国から日本に持ち込まれ、元々ある生態系を壊したり、人に危害を加えたりするかもしれない生き物のこと。ペットとして飼うことや、外へ逃がすことなどが原則禁止されています。

江津湖ではブルーギルやオオクチバスが駆除の対象になっています。

そして、今年6月から新たに特定外来生物に指定された生き物が…。

(ガサガサ)

■ザリガニを持つ上山音アナウンサー
「いた!」

そう、アメリカザリガニ!昔から、私たちにとても身近な生き物ですよね。しかしアメリカザリガニは雑食性で、魚だけではなく水草も食べてしまいます。そのため、魚のすみかを奪ったり、水が濁ってしまったりするなど、様々な問題を引き起こしてしまうのです。

さらにさらに、江津湖で増殖しているのが…。

■上山音アナウンサー
「きたー!ミシシッピアカミミガメだ!」
■熊本博物館 清水稔学芸員
「若いオスですね」

通称「ミドリガメ」として知られるミシシッピアカミミガメ。元々はアメリカのミシシッピ川にいたカメですが、今から70年以上前にペットとして日本に持ち込まれました。

その後、捨てられたり、外に逃げ出したりしていまは全国に生息していると言われています。でも、ペットとして飼っているけど大丈夫なのでしょうか?

実は大丈夫なんです。アメリカザリガニとアカミミガメが指定されたのは、一部の規制をしない「条件付」特定外来生物。これまで通り、捕まえたりペットとして飼ったりすることができますが、外に逃がしたり、店で販売したりすることは禁止されています。

この日獲れた生き物は約1時間で10種類。そのうち半分の5種類が外来種でした。
(外来種:アメリカザリガニ、ジルティラピア、カダヤシ、ミシシッピアカミミガメ)
(在来種:ミナミヌマエビ、ドジョウ、タモロコ、ドンコ、トウヨシノボリ、モクズガニ)

自然を守るためにできることは

■上山音アナウンサー
「とってもかわいいです。でも、やっぱりかわいいだけじゃないから、最後まで一緒に暮らせるかをよく考えないといけないなと思います」
■熊本博物館 清水稔学芸員
「これでも普通に飼って30年は生きる。自分の30年後が想像できますか」

自然を守るには、わたしたち一人ひとりが正しい知識をもつことが大切だと清水さんは話します。

■熊本博物館 清水稔学芸員
「みんなにできる事は、今より悪くしない。身近に起きている外来種問題は、知らずに広げている人も多い。一度興味を持って外来種ってなんだろうと、広げる可能性ってどんなのがあるんだろうちょっと調べていただけるとうれしい」

Q生き物と共生するとは?
■熊本博物館 清水稔学芸員
「ペットにするということは、完全に人間のエゴ。野外にいる命を狭い場所に閉じ込めてしまう。動物にとっていいことなのかというと難しい人間の勝手でそういうことをやっているなら、責任を持って飼う。強い意識を持って飼育に臨んで欲しい」

■上山音アナウンサー
「生き物調査員として新米なんですが、たくさん勉強させていただきました」

■熊本博物館 清水稔学芸員
「ぜひぜひ学んでいきましょう」

ミシシッピアカミミガメは、体長がメスで20センチ、オスで30センチくらいまで大きくなります。また、アメリカザリガニは、繁殖すると500個以上の卵を産みますから、家では簡単に増やさないということも大切です。今年6月から条件付特定外来生物に指定されたことで、飼育は問題ありませんが野外に逃がすことなどが禁止されました。

環境省によりますと、もしどうしても飼いきれなくなってしまった場合は、決して外へ逃がさず、自分で引き取り先を探してほしいということです。詳しい規制の内容や相談についてしりたい方は、環境省のHPにアクセスするか、相談ダイヤル(0570-013-110)までお問い合わせください。