輪島塗研修施設が被災 研修生らが高岡で制作再開 能登半島地震
地震は、伝統工芸の技術継承にも影を落としています。輪島塗など漆工芸の技術を伝える石川県の研修施設が地震で使えなくなりました。研修生の一部が高岡市に拠点を移し、活動を再開しています。 高橋記者のリポートです。
制作に取り組んでいるのは、石川県立輪島漆芸技術研修所の研修生たちです。
中川綾子さん
「すごいありがたい環境をつくっていただいて感謝しています」
研修生たちが学んでいた輪島市の研修所は地震後、休講を続けています。設備が被害を受けたうえ、断水した影響で漆を研ぐことができなくなったためで、授業再開の目途は立っていません。
中には、卒業を控え卒業制作に取り組んでいた研修生もいましたが、創作活動を続けることが困難となっていました。そこで、教員同士の交流があり漆の専門教員が在籍する富山大学芸術文化学部が研修生を受け入れました。
吉田有沙さん
「両校の先生方が力を尽くしてくださって、こういう環境を準備してくださったので、非常にありがたいなと思っています」
研修生の一人、吉田有紗さんです。卒業制作として2023年、輪島で見た夜の街並みを描く考えで、今、下絵に取り組んでいます。
吉田有紗さん
「去年の今頃に結構制作が大詰めで、疲れて家に帰っている途中だったんですけど、川と家の街並みから出てくる光がすごく温かくて、川も光も人の生活にすごく必要なもので、それが目の前にある温かさを感じて、それをそのまま作品にできたらいいかなと思って、考えて描きました」
心に残る輪島の景色に思いを馳せていました。
吉田有紗さん
「景色に対する思いも変わってきたというか…、街並みとか光も一度失われて、また戻っていく過程がこれから見れるのかなと思うと、考えるところがあります」
同じく研修生の中川綾子さんです。震災当時は東京にいたといい、先週、輪島を訪れた際、町の変わり様に驚いたといいます。
中川綾子さん
「実感が湧かなくて、見ても映画のセットにいるような気分で、これがリアルの世界なのか分からない状態だった」
卒業制作では、香りのよい花を早春に咲かせるチンチョウゲを描いています。
中川綾子さん
「(タイトルは)春のかほり、みなさんの春がきますようにって感じですね」
例年、卒業制作の作品は、研修所で展示されていますが、2024年の展示については決まっていません。研修所の講師も高岡市で作品の完成までできる限りの支援をしたいと話します。
坂本康則講師
「せっかくの作品なんで見ていただける環境を作っていきたいと思っている。途中で作品を諦めると本人としても酷でしょうし、指導者としても残念なので、できたらこのまま仕上げていきたいと思う」
研修生たちは3月末までに卒業制作を仕上げる予定です。