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【ラムサール登録5年】「豊かな海を守りたい」育まれる地域の原点<南三陸・志津川湾>

2023年12月11日 21:00
【ラムサール登録5年】「豊かな海を守りたい」育まれる地域の原点<南三陸・志津川湾>
南三陸・志津川湾 ラムサール条約登録5年

普段は見ることができない海の中を覗くと、そこに広がるのは眩いほどに茂る海藻。珍しい魚や小さな生き物に溢れ、冬になれば貴重な野鳥が渡ってくる。宮城県南三陸町・志津川湾がラムサール条約に登録されて5年。その節目を記念したシンポジウムが行われた。

<南三陸町 阿部拓三さん>
「志津川湾の自然環境の一番の特徴は海藻の杜や草原を示す〝藻場〟。その〝藻場〟の多様性にあります。いろんな種類の藻場があり、そこに独自の生態系がある」


【豊かな〝藻場〟 そこに集う多様な生き物】


2018年、ラムサール条約への登録が決まった志津川湾。ラムサール条約とは、水鳥などの生息地として国際的に重要な湿地を保全することを目的に定められたもの。志津川湾で対象となる範囲は、歌津・志津川・戸倉の沿岸の約5800ha。暖流と寒流が交じり合う海には200種類を超える海藻や貴重な生き物が生息し、冬になれば国の天然記念物「コクガン」がやってくる。この豊かな環境がラムサール条約への登録地として評価された。

<漁業者>
「ラムサールの海でできた海産物ということで、名前は張れる可能性は出てきますね」

〝豊かな海の証〟は海産物にもプラスになるだろう。漁業者もラムサール条約への登録に期待を寄せていた。

【ラムサール条約への登録 漁業への恩恵は…】


「お!タコ!。大きなタコが入っています」
「三陸産のマダコです」
「〝活き〟がいいですね」

今シーズンの「マダコ」の水揚げが始まった。ラムサール条約の登録から5年。”ラムサールブランド”の恩恵はあるのか・・・

<漁業者>
「ラムサール条約で変わったかというと、多分あまり変わったって感じてる人はいないと思うんですけね。〝ラムサールわかめ〟って名目上はなっているがブランドとして成り立っていない」

これまでのところ、海産物にとってはラムサール条約登録による変化は見えない現状。その一方で〝豊かな海を守りたい〟という共通認識はこの5年、地域に広がり始めているという。

【〝当たり前の大切さ〟 町全体の「共通認識」に】


<地元小学生の発表>
「伊里前川では、シロウオをはじめとするたくさんの生き物を見つけることができました」
「学校で白サケを飼育します。みんなで卵を水槽に入れてシートを被せて暗くし、卵が孵化するのを待ちます」

ラムサール条約登録から5年を記念して開かれたシンポジウムでは、町内の小学生が日頃の授業で学んだ地域の自然環境について発表した。町の職員としてラムサール登録を推進してきた阿部拓三さんはこの5年間を振り返って、町に変化を感じていると話す。

<南三陸町 阿部拓三さん>
「当たり前のようにあるものが、実はものすごく貴重な自然環境だったんだっていうことが、町全体の共通認識として、みなさん言葉にしていいように言えるようになっているという風には感じています」

<地元小学生>
「もうちょっと増やす?捕れるもの…なんか少なくない?」

南三陸町の名足小学校。小学5年生がシンポジウムでの発表に向けて準備を進めていた。

Q.自分たちの町がラムサール条約に登録してあるのは知っていた?
 <地元小学生>「知らなかった。初めて知りました」
Q.なにで知ったの?
 <地元小学生>「授業です」

この町の小学校が教室で行う授業は、自分たちの町の海がラムサール条約に登録されたということだけ。それ以上のことは学校ごとにカリキュラムを組み、この名足小学校では特に、現場で自然と触れ合うことに重きを置いているという。

【〝豊かな海を守りたい〟育まれる「地域の原点」】


ラムサール条約登録から5年を記念したシンポジウムの当日。子どもたちは県内外から訪れた200人ほどの参加者を前に、調査の成果を発表した。

<地元小学生>
「干潟を調査してわかったことが2つあります。1つ目は干潟の水はとてもキレイです。2つ目は小さな生き物にとって干潟は餌を食べる場所。隠れ場、子育てを行うところです。干潟は海の生き物たちにとってとても大切だと思いました」

<南三陸町 阿部拓三さん>
「さらに町内の中での交流も深めていく必要があるなっていうふうに思いました。そこにまた学びの広がりとか深みが出てくる、そういったきっかけに今回なったんじゃないかなと思って、うれしく思ってます」

ラムサール条約登録から5年。〝豊かな海を守りたい〟という地域の原点は、この町を担っていく子どもたちの心の中にも少しづつ芽生え始めています。

<地元小学生>
「このきれいな素晴らしい環境を守っていきたいです」