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長崎くんち【銀屋町・鯱太鼓】亡き師匠の思い胸に過去最高の奉納を 町の伝統を子へつなぐ親子も《長崎》

2024年9月9日 6:45
長崎くんち【銀屋町・鯱太鼓】亡き師匠の思い胸に過去最高の奉納を 町の伝統を子へつなぐ親子も《長崎》

いよいよ来月に迫った「長崎くんち」銀屋町を紹介します。

亡き師匠の思いを胸に過去最高の「鯱太鼓」の奉納を目指します。

7月、諏訪の踊り馬場。担ぎ手の声が響きます。

10年ぶりに「鯱太鼓」の山飾が入りました。

(長采 髙田 雄康さん(55))
「10年ぶりにあの場に立って、深呼吸してやった。自分が思う鯱太鼓は担ぎ手が一番の主役なので、そこを意識して頑張ってもらいたい」

鯱が激流を昇り、やがて黄金の龍になる様子を表現した銀屋町の『鯱太鼓』。

中国の故事「蓬莱鯱伝説」をもとに作られ、1985年から奉納しています。

今年で6回目の奉納ですが、メンバーには今回、特別な思いがあります。

(棒先 飯谷 友顕さん(48))
「くんちという何年も続いたものを継承していくのは、お前たちの仕事だぞと言われていた」

(長采 髙田 雄康さん(55))
「自分たちがやりたいようにやりなさいと、そのようなことをずっと言っていた。”高木さん” が」

鯱太鼓を一からつくり上げた1人、高木忠弘さん。

長采や実行委員長などを務め、銀屋町の奉納を長く支えてきましたが、4年前に亡くなりました。

メンバーにとっては「師匠」と言える存在。

過去最高の奉納を高木さんに見てもらいたいと考えています。

山飾の担ぎ手は、総勢51人。約半数は新人です。

今年1月から、ランニングなど体力づくりをスタート。

5月上旬から山飾を担ぎ始め、小屋入り後は土日以外のほぼ毎日、稽古をしています。

(長采 髙田 雄康さん(55))
「何回上げられるか分からないけど担ぐぞ」

櫓の上には、まだ「鯱」の姿はありません。

替わりに鉄の粉を入れた袋を乗せています。

重さは約800キロ。これを38人で担ぎます。

山飾は、地面と平行に「上げ」なければなりませんが、重さにふらつき。

なかなかきれいには上がりません。

(長采 髙田 雄康さん(55))
「鯱が乗っていない状態で、練習用の山飾としても、(完成度は)まだ半分くらいじゃないか。(みんなが)一つになった時に、ボンという上げができるのかな」

今年 7月7日。亡き師匠高木さんの、4回目の祥月命日です。

町のメンバーなど 約50人が集まりました。

過去2回、据太鼓として出演し高木さんの指導を受けてきた 大野大輝さん35歳は、今年初めて担ぎ手に挑戦します。

(担ぎ手初挑戦 大野 大輝さん(35))
「私の人生は、今まで全部 高木さんに見てもらって、教えてもらって成長してきたので、成長した姿は高木さんに一番見てほしかった」

(長采 髙田 雄康さん(55))
「(時が経つのは) 早い、4年。天国から高木さんが見ていると、鯱も天高く舞い上がるように奉納したい」

思いを新たにしたメンバーは2日後、諏訪神社で初めての場所踏みに。

(担ぎ手初挑戦 大野 大輝さん(35))
「神事として一番大切な場所なので、気合いは入るんじゃないかな。みんなにとっても。(自分の担当とは) 反対の棒も意識しながら、シンメトリーになれるようにがんばりたい」

大野さんは、今回 初めて長男の晃輝くん4歳と共演します。

晃輝くんは山飾に乗って太鼓をたたく「囃子方」。

この日、櫓には 傷がつかないようにさらしを巻いた鯱が乗りました。

担ぎ手たちの顔も、引き締まります。

(長采 髙田 雄康さん(55))
「諏訪神社場所踏みで、一番最初の稽古になる。

それぞれ思いはあると思うが、がんばれ。昨日までの所作の確認を、ここできちっと意識して全員でやってくれ」

1番の見せ場は “ホーライコ” のかけ声とともに鯱が空に舞う「上げ」です。

かけ声と「囃子方」との呼吸を合わせ、一体感を生み出します。

山飾は 水平に高く。

すべてをそろえなくてはなりません。

晃輝くんも、初めは高さを怖がっていましたが、今では真剣な表情で太鼓をたたきます。

(担ぎ手初挑戦 大野 大輝さん(35))
「ちょっとずつ 子どもなりに成長しているなと思うので、子どもにとってもあと残り3か月間は、すごく大きなものになる」

(青木雄大アナウンサー)
「うまくいったかな?」

(長男 晃輝くん(4))
「うまくいきました」

親から子へ、先輩から若い世代へと『町の伝統』は受け継がれます。

8月に入り、八坂神社での場所踏みで これまでの「上げ」の回数は501回となりました。

稽古での「上げ」は、1000回で一つの節目としている鯱太鼓。

担ぎ手たちの懸命の稽古で、鯱に命が吹き込まれます。

(担ぎ手初挑戦 大野 大輝さん(35))
「お互い、悔いが残らないくんちにしたい」

(長采 髙田 雄康さん(55))
「やっぱり、(高木さんに)褒めてもらえる演技はしたい。褒めてもらえるかな。背負っているものがあるので、頑張りたい」

亡き師匠が見守る大空に向けて 鯱を高く、美しく。

銀屋町は心をひとつに、過去最高の奉納を目指します。