「社会で生きていく力をいかにつけさせるか」子どもたちが “自分らしく輝く”進路に選択肢を《長崎》
年々増加する不登校。
新たな学びの場やサポートも増えていますが、自立しきれない子どもも多いそうです。
求められる支援のカタチ、そして子どもたちが選ぶ未来とは。
教室で英語の授業を受ける高校1年生24人。
この生徒の多くに、ある共通の経験があります。それは「不登校」。
(1年)
「中学の時、毎日6時間行けていたわけではないので」
(1年)
「学校行きたくないといって休んでいて親も困っていたけど、今は楽しく自分から学校にいきたいというようになった」
長崎市の「こころ未来高校」。
2016年に開校した県内初の、県外からも入学できる広域の通信制高校です。
現在773人(2月1日時点)の生徒が在籍していますが、7割が不登校を経験したあとに、入学、転入してきました。
学校では、登校日を月2回から週4日まで選択できるほか、在宅の通信制コースもあるなど、自分にあった通学スタイルを選べます。
(こころ未来高校 小川琢次 教頭)
「だいたいが中学校の時に教室に入れなかったり、別の教室で勉強していたり、そういう生徒が多い」
全国的に増加傾向にある不登校。
文部科学省が行った調査では、県内の小中学校と高校で昨年度(2022年度)は、3452人と前年よりも668人増え、7年連続で増加。
過去最多を更新しています。
生活リズムの乱れや無気力、不安など本人による問題のほか「友人関係」が原因となるケースも増えているそうです。
さまざまな悩みを抱え、学校に通えなくなってしまう生徒たち。
一方、「こころ未来」に通い始めると、学校が好きになったと話す生徒が多くいます。
(1年)
「学校帰りとかに、恋愛の話をしたりして楽しく帰っている。前の学校では(教室が)凍り付いたような緊張感があって無理だった」
(3年)
「人と話すのが中学生の時は苦手だったけど、高校生になって楽しくなった。文化祭の時と かにたくさん友達ができて、とても思い出に残っている」
▼“社会で生きていく力をいかにつけさせるか”
この春卒業の池田 圭さん。
中学時代、学校に通えなくなった時期もありましたが、高校では得意のゲームを活かし、eスポーツ部の部長を務めていました。
(池田 圭さん)
「仲間と楽しく過ごすことができた。親には顔が明るくなったといわれる」
(こころ未来高校 小川琢次 教頭)
「優しい先生が多いので安心した学校ということで来やすいのではないか」
生徒同士も一度学校に通えなくなったという「同じ思い」を抱えているため、認め合うことができるそうです。
ただ・・・
(こころ未来高校 小川琢次 教頭)
「うちにきて、自信をもって卒業してくれる人も多くはいるが、中には休んだり、遅刻したりで、社会に出てどうかなという生徒がいるのも事実。本来の目標は、“社会で生きていく力をいかにつけさせるか” というところになるが、そこにはやはり厳しさが必要になってくる」
生徒たちの「この先の人生」を考えたとき「学校に通えることがゴールではない」といいます。
▼出口があるか分からないトンネル 一緒に歩くことを目指す支援者
県の子ども若者総合相談センター「ゆめおす」を受託運営し、不登校やひきこもりの訪問支援を行っている NPO法人「心澄」。
活動してきた14年で、4000人以上から相談を受けてきました。
理事長の宮本 鷹明さんは、学校や社会にうまく適応できない期間を「トンネル」と表現しています。
(NPO法人「心澄」宮本 鷹明 理事長)
「悩んでる時ってよく “抜けないトンネルはない” っていうじゃないですか。でも、悩んでいる人たちにとっては、いつ出口があるか分からない。ずっとトンネルなんです。やっとこの出口抜けるかもと思って、抜けたと思ったら、AからBのトンネルに変わるだけ」
「心澄」には、一冊のノートが置いてあります。
それは、相談者同士が情報交換をする「お金をかけない遊び方ノート」。
中には、素直な気持ちが書かれていました。
「私はイラストを通じて、東京に住む女の子と電話しながらイラストを描いたりするくらい仲良しになりました」
「長与川には、カワセミ、エメラルドグリーンの鳥がいます。見かけたらラッキー!」
似た悩みを抱える相手には、臆することなく、自分の考えを素直に伝えられます。
宮本さんが支援者として目指すのは「トンネル」を一緒に歩ける存在です。
(NPO法人「心澄」宮本 鷹明 理事長)
「トンネルをひとりで歩くのはちょっと大変。でもそこで、一緒に歩く人がいれば、『ちょっと石ころあったね、なんか水落ちてきたね、怖いね』みたいな。それを分かち合う相手がいるといないで、だいぶ違うじゃないですか」
3月、こころ未来高校を卒業する池田 圭さん。
学校に通えないというトンネルを1つ抜け出せたことで、自信と新たな夢を持つことができました。
ケガをした子どもをサポートする介護福祉士になることです。
(池田 圭さん)
「医療や介護系の専門学校に行くことにした。(ケガした人は)きっと気分が沈んでいると思う。それを盛り上げていけるように(なりたい)」
「昔の自分は頼りなかったので、今はどんどん自分を強くしていくというか、自分が頼ってもらえる人になるために、頑張っていきます。」
大人でさえも生きるのが難しく、誰もがトンネルに迷い込むことがある現代社会。
自分なりの出口を探す子どもたちに対して、柔軟な支援が求められます。