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被爆者の“記憶” “願い”未来につなぐ「平和活動」“ゲーム”活用し当時の生活をリアルに体感《長崎》

2024年8月8日 6:00
被爆者の“記憶” “願い”未来につなぐ「平和活動」“ゲーム”活用し当時の生活をリアルに体感《長崎》

被爆者の “記憶” と “願い” を未来につなぐ新しい形の展示イベントです。

見て。触って。

最新テクノロジーを駆使した平和活動が進められています。

(東京大学大学院 渡邉 英徳教授)
「長崎の被害は全部 昔のことだから写真。でも今のウクライナの戦争は3Dで記録することができる」

(小学生)
「爆破された家。マンションみたい。戦争ってやっぱ嫌、ひどいなと思う」

4日から 始まった新しい形の展示イベント『ミライの平和活動展』。

被爆者の写真や証言が被爆した地点に浮かび上がり、当時の写真は AI=人工知能でカラーに。

「ゲーム」を活用し、被爆前の生活を体感します。

(東京大学大学院 渡邉 英徳教授)
「最新の技術を使って、なるべく若い世代の人々に親しみやすい形で伝わるように開催している」

平和活動展は、東京大学大学院の渡邉 英徳教授と研究室の学生らが企画しました。

去年、広島で初めて行われ、長崎では初めての開催。開催前日に会場で展示の準備を行いました。

メンバーの1人 片山 実咲さんは、先月東京から単身、長崎へ

被爆者の 池田 道明さんと会うためです。

片山さんは、広島の被爆3世。

長崎の平和活動展では、小学生向けにゲームを活用して原爆投下前の街並みを再現するワークショップを行うため、池田さんに協力を依頼しました。

(東京大学大学院 片山 実咲さん)
「被爆者の方の大切な記憶を子どもたちが、子どもたちなりに理解して表現していくところで、私たちも学びたいという気持ちをしっかりと持ちつつ、少しずつやっていきたい」

その4日後には、森吉 蓉子さんらメンバー3人が原爆資料館に。

展示を前に理解を深めようと見学に訪れました。

(東京大学大学院 森吉 蓉子さん)
「勉強不足を感じさせられるとともに、もうちょっと いろいろたくさんのことを知りたい」

迎えた「平和活動展」当日の8月4日。

会場には、最新テクノロジーを駆使した展示物が並びました。

(東京大学大学院 森吉 蓉子さん)
「爆心地近くの人の証言って、聞いたことがありますか。あまり聞いたことないですよね。そういう人たちの証言をデジタルで残せることは大きな特徴」

7枚のモニターを組み合わせた大画面の地図。

被爆地点に、被爆者の写真が浮かび上がります。

顔写真をタッチすると被爆証言を聞くことができます。

白黒の戦時下の写真はAI=人工知能を活用しカラーに。

当時をよりリアルに感じることができます。

会場には、被爆者も訪れました。

(被爆者 市來 嚴代さん(93))
「やっぱりこんなに、あそこはあんなだったと思うことはあるけどね。やっぱり戦争は嫌だ」

被爆直後のまちを体感することもでき、自らの分身(=アバター)をつくると、焼野原を探索することができます。

(高校生)
「ちょっと似ている。すごい、イメージわきやすい。こうやって見てみたら。歩いている感じだったら分かりやすい」

(長崎東高校 鳥居 正洋教諭)
「普段 社会科の教員なので、いかに止まっている画を臨場感持って伝えるかということで授業をやるが、これは一発でふっと入れる」

VR=バーチャルリアリティーのコーナーでは、ゴーグルをつけた子ども達の目の前にウクライナの現状が…。

破壊された家やマンションなど被害の様子が広がります。

(小学生)
「ボロボロ」

(小学生)
「自分がその中にいるみたい。かわいそう。住めない状態だから」

(東京大学大学院 森吉 蓉子さん)
「まずは知ってもらう所から。歴史を知るというのが教訓になると思う。一人一人考えるきっかけになればいい」

そして 片山さんが担当するワークショップには、被爆者池田 道明さんの姿が。

6歳の時に爆心地から約700メートルで被爆していて、その体験を参加した25人の小学生に語りました。

(被爆者 池田 道明さん(85))
「いろんな物が飛んできて(長崎医大付属病院の)中庭で燃えている。中庭は火の海。火の海の中にあちこちで人が死んでいる」

この後、子どもたちはグループごとにパソコンへ。

写真資料を見ながら被爆前の街並みを確認し、仮想空間にブロックを積み上げるなどして建物の再現に挑戦しました。

(小学生)
「本棚もいるでしょう。図書室もあるはずだ」

(小学生)
「浦上天主堂の正面。上のドームのところが難しい」

(司会)
「頑張って!チーム一丸となって頑張って」

少しずつ、原爆投下前の山王神社や浦上天主堂、城山国民学校などの姿が。

原爆で失われた日常に思いを馳せます。

(小学生)
「楽しかった。(難しかったのは)色の表現」

(小学生)
「すごく楽しみながら、よくわかった気がする」

(東京大学大学院 片山 実咲さん)
「子ども達がすごく集中力を切らすことなく、半日以上原爆について学ぶ機会に取り組んでくれたことがうれしかった」

原爆投下から79年。

被爆者の “記憶” や “思い” を共有し、継承へ。

若い世代の発想力で『新しい平和活動』が進められています。

(東京大学大学院 片山 実咲さん)
「色々な人々の思いを途切れさせないために、新しい取り組みができるのかと、もう一歩踏み出してみる。
やったことのないことでもチャレンジしてみる。
そこで生まれた課題をもう一回持ち帰って、どういったふうにデジタルやデジタルツールを使いながらやっていけるか。引き続き研究していきたい」