担い手不足に高齢化など2024年問題解決を模索「物流を守る」トラック業界の取り組み《長崎》
「物流の2024年問題」について考えます。
トラックやバスの運転手など自動車運転業務の「時間外労働」は、労使間で合意すれば、これまで実質、制限はありませんでした。
▼ドライバーが足らない「物流の2024年問題」
しかし、今年4月以降は「年間960時間」に制限されることになります。
2019年に施行された「働き方改革関連法」に伴うもので、ドライバーに関しては「5年間の猶予期間」が設けられていましたが、これが終了します。
長時間労働が是正される一方で「物流業界のドライバー不足」の深刻化が不安視される「2024年問題」。
県内のトラック運送の現状を取材しました。
運行前。タイヤの状態やランプの点灯など、30項目以上を点検します。
佐世保市の運送業「東部運輸」。
(点呼)「体の状況はどうですか?」
(ドライバー)「大丈夫です」
(点呼)「疲れはありませんか?」
(ドライバー)「大丈夫です」
点呼では、ドライバーの体調に加え、アルコールチェックや運転免許証も確認。
安全運行を徹底しています。
(点呼)「いってらっしゃい、気をつけて」
トラックのドライバーは20人いて、県の内外に建設現場の重機や資材などを運送しています。
国内で輸送されている貨物は、年間 約42億トン。
トラックは、そのうちの9割もの輸送を担っています。
▼長時間労働が是正されても稼げないジレンマ
一方、現在、物流業界で大きな課題となっているのが、「2024年問題」。
県内では、現在、6000台あまりの営業用トラックが稼働しています。
(県トラック協会青年部 古川 智憲会長)
「長時間労働をして、ドライバーはある程度の給料がもらえると、皆さんこの業界に入ってくる。働く時間が少なくなるということは、その分、賃金や給料も減っていくということになる。ただでさえ人材不足なのに、離職率がどんどん高まると思っている」
県トラック協会が、去年、加入事業者を対象に行った調査では、67.4%が「人手が不足している」と回答。
県内では、ドライバーが600人あまり足りない現状です。
(県トラック協会青年部 古川 智憲会長)
「運転手人材の確保をするためには、もう1段階、2段階くらい運賃の値上げをしないと、このまま何もしないでおくと、2030年には、今の30%の物量が運べなくなるということが実感としてある」
トラック協会は、ドライバー確保のための取り組みを進めています。
▼新たな方面へも運送業の魅力アピール
全国に先駆け、障害者や刑務所での刑を終えた人たちの雇用に向けて検討を開始。
小学校での出前授業も始めました。
学校でトラックを展示し、子どもたちに仕事の魅力を伝えました。
(東部運輸 陶山 亮課長)
「トラックの中でも大きいものを運べる “トレーラー” というタイプ」
運送で使われるトラックには、様々な種類があります。
2つの車両が連結したトレーラーや、主に重機などの運搬で活躍するセルフローダー。
車両とクレーンが一体となった「移動式クレーン車」など、運ぶものによって、使い分けられています。
そんなトラックを操るのが、技術を持ったドライバーです。
坂本 健一さんは、ドライバー歴20年です。
長崎特有の狭い坂道もハンドルを巧みに操り、スムーズに運転します。
(東部運輸 坂本 健一さん)
「結構道沿いに(家が)建っていたら、大きいトラックが通った時は地面が揺れる。そういったことも気を付けながら、ゆっくりと焦らず走行するようにしている」
歩行者や対向車など、安全面に最大限配慮しながら日々、ハンドルを握っています。
(東部運輸 坂本 健一さん)
「働き手にも家庭があって、守るものがあるので、その辺をしっかりやっていけるような体制が整えば、この業界も人が増えていくのではないかと思っている」
運転技術を受け継ぐ若手ドライバーも奮闘しています。
田﨑 正嗣さんは、東部運輸に入社して4年目。
(東部運輸 田﨑 正嗣さん)
「特に大型は運転するのは楽しい」
県トラック協会の調査では、半数以上の会社がドライバーの平均年齢は50代以上と回答。
技術の継承や若手の育成も、喫緊の課題です。
(東部運輸 坂本 健一さん)
「今のうちに技術などをしっかり先輩方に教えてもらい、自分が20年、30年してきたことを、新しい後輩に教えていきたい」
運送業だけでなく、幅広い職種や消費者への影響も懸念されている2024年問題。
トラック協会は、労働環境を整えるチャンスと捉え、業界の改革を進める考えです。
(県トラック協会青年部 古川 智憲会長)
「魅力的な業界になってこそ、本当の2024年問題がクリアできると思っている。自分たちが皆さんの豊かな暮らしを支えているんだという気概を持って、いろんな諸問題に対して、解決に向けてそれぞれが努力していきたいと思っている」