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「ここまで大きな地震になるというのは…」専門家の予想を上回った能登半島地震 新潟で自らも強い揺れに見舞われた専門家が解説 得られる教訓とは?

2024年1月10日 17:47
「ここまで大きな地震になるというのは…」専門家の予想を上回った能登半島地震 新潟で自らも強い揺れに見舞われた専門家が解説 得られる教訓とは?
能登半島地震の発生から10日目。今後、私たちはどのようなことに備えるべきなのでしょうかー。今回の地震では、山陰でも揺れや津波が観測されました。現段階で分かっていることなどを、地震研究が専門の、鳥取大学・香川教授に聞きました。

■専門家の予想を上回った地震

鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「専門家も含めてここまで大きな地震になるというのは…ちょっと予想よりも大きかったかなと思います」

1月1日、新潟県を訪れていた鳥取大学の香川敬生教授。大きな揺れに見舞われました。

鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「この辺にいたんですけど震度5強かな。(石川県の断層では)新潟はそんなに揺れないだろうと思っていたのが相当揺れたのと、結構揺れた時間が長かった」

石川県では2020年12月ごろから群発地震が発生していました。そんな中、今回の地震の大きさが専門家の予想を上回った理由はー。

鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「通常、群発地震というのは大きくてもマグニチュード6くらいを最大としてやがて収束していくというのが多いんですけど、(能登半島地震は)7を超える、しかも7.6は相当大きいですので、こういう地震が群発地震の中で起こったというのがこれまでには例がない。観測をしている年代の中では例がない」

こちらは、1月1日午後4時からの24時間に確認された地震の震源を示したものです。その数、なんと1749回。能登半島から佐渡島に向かって細長く広がっていて、ここに、長さ150キロに及ぶ「逆断層」があると考えられています。

■逆断層とは

「逆断層」とは、上下に重なり合っていて縦に動く断層のことです。海底の断層が動くことで、その上に乗っている海水が上下に揺さぶられ、津波を引き起こします。これは東日本大震災と同じメカニズムですが、今回は、日本海ならではの特徴がー。

鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「日本海って閉じていますよね。なのでここで起こった津波が比較的、短い時間でロシアの方とかに反射して日本海全体が薄いお盆のような感じで、ちゃぷんちゃぷん揺れ続けるので、それがどう作用して三角波みたいな感じで津波を起こすかわからないので、気象庁としても長い間、注意報を解除できなかったという経緯はあると思います」

今回の地震では、震源から300キロ以上離れた山陰沿岸でも最大で60センチの津波を観測。しかし、これ以上の大きな津波が予想される断層は、実は今回よりも遠くにあるというのです。

鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「このあたり(東北地方)で起こった津波が、大和堆の浅いところで屈折するように回り込んでくるんですね。山陰方向を目指して大きな津波がやってくる。実際に過去にも1983年の日本海中部であるとか、93年の北海道南西沖地震でも1mまではいかないですけど、60センチ70センチの津波が境港で観測されるという事実があります」

山陰に大きな津波被害をもたらす恐れがあるのは、東北地方の断層。震源との距離に関わらず、大きな地震によって津波警報・注意報が出された場合は、速やかに避難することが大切です。

■地震の「揺れ方」から分かる事とは

また、「揺れ方」から分かることもあります。こちらは、今回の地震について揺れが1往復する時間「周期」を分析したものです。

青色の部分は1秒間に2、3往復くらいの細かい揺れ。木造家屋が揺れて崩れやすい状態になります。耐震改修すればこの影響は少なく抑えられます。

赤色の部分は1秒から2秒かけて1往復するくらいの、ゆったりした揺れです。青色で崩れかかって強度が下がってしまった家が更なる揺れを受け倒壊する、と考えられます。

今回の能登半島地震で震度6強を観測した石川県穴水町のデータですが、特徴的なのが弱った住宅にとどめを刺すような赤色の揺れが非常に大きいことです。

最近は耐震性能の高い住宅も増えてきましたが、石川県では17年前に震度6強、30年前にも震度5と大きな地震を経験していて、香川教授によると『少しずつ住宅が弱まっていって、今回の揺れで一気に倒壊した』と考えられるということです。丈夫な住宅でも複数回の揺れには耐えられないというデータもあります。

こちらは防災科学技術研究所が行った実験映像。右が、耐震補強をした住宅です。左の家は、1回目の揺れで、崩れはしなかったものの、あちこちに被害が出て、2回目の揺れで一気に倒壊してしまいました。

また、耐震補強した右の家も4回目の揺れで、倒壊しています。

鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「(鳥取県)西部地震や中部地震で被災した家は特にしっかり耐震診断をして、必要であれば補強していくというのが、次に来る南海トラフの地震に耐えるためにも、重要な要素になると思います」

食料や水の備蓄ももちろん大切なんですが、香川教授は最初の揺れから身を守らなければ意味がない。住宅の耐震が最も重要と話します。また、今回は大規模な火災も発生しました。火の始末は大切ですが、大きな揺れの中では動けず、すぐそこにある暖房器具にも手が届かなかったそうです。揺れると自動でブレーカーが落ちる機器の導入を検討するのもよい、ということでした。

いざという時、命を守るために今一度、災害への備えを見直すことが重要です。