【特集】「記憶と思い出を残していこう」 沖縄からやってきた女性が作り上げた民芸と伝統を融合した場所 島根県松江市
民芸も楽しめる古民家の飲食店が誕生です。島根県松江市の窯で作られた食器で料理を味わいながら、ものづくりの体験などもできるコミュニティー施設が、1月31日にオープンしました。立ち上げたのは、沖縄県から移住した女性です。
器に華を添える色とりどりの食材。そこは、昭和の雰囲気が漂う古民家。そして、集う人たち。1月31日、島根県松江市にできたのは、器など民芸を楽しむ新たな飲食店です。
島根県松江市の宍道湖近くにオープンした「グローカル スペース&」木造2階建ての小さな古民家を改装して作りました。オープン1か月前の去年12月ー。
岸本さん
「記憶と思い出を残していこう 松江にも」
30年近く誰も住んでいなかった空き家。そこに目をつけたのが島根県松江市地域おこし協力隊として活動する岸本廣美さんです。
岸本廣美さん
「私にとっては見たことのない建物おうち自体が珍しいなって思うので、残していきたいなんだろうすべてがすごい感動します」
沖縄県出身で日本らしい文化の残る移住先を探していた岸本さんは2022年、島根県松江市に移住。地域おこし協力隊として松江の魅力を発信してきました。市内にある陶芸の窯をめぐる中で、器の魅力にはまった岸本さん。陶芸作家の作った皿を広める飲食店の立ち上げを思いつき場所を探していたところ、この空き家と出会いました。
岸本廣美さん
「感動します。小さい間口で小さい階段あたたかみのある感じがいいなと」
岸本さんの出身地である沖縄県は、台風が多いことからコンクリート製の住宅が多く、木造建築はあまり見られないといいます。そこで、古き木造の日本の住宅を残していきたいと松江市のチャレンジショップの補助金などを活用して、去年秋から古民家の改修を始めたのです。去年12月には従業員や関係者が壁に新しいタイルを張り、建物に新たな息吹を吹きこみました。3か月ほどで改修を終え、新しく生まれ変わった古民家。自分たちで張ったタイルも温かみを加え、もとの建物の雰囲気を生かした飲食店となりました。
■提供される器は客自ら器を選ぶ
台所などがあった居間は、白い壁が映える、飲食スペースに。その脇には、島根県松江市内8つの窯元の器が並べられています。この飲食店は、客が自ら器を選んで食事をするというスタイル。普段、飲食店ではあまり見られない器選び。来店客は料理が乗る前の器そのものを見てその後、実際に使うことで民芸が持つ「用の美」を体験できます。
1月31日は、島根県松江市の食材などを使った、いろどり豊かな和定食が提供され、初日から11人分の飲食スペースはすぐに満席になる盛況ぶりでした。
客
「いろんなバラエティな器があるのは選ぶとき楽しいですし、そういった思い付きもいいんじゃないでしょうか」
「食べる前から楽しみで食べてもおいしいです。そういうお皿を選ぶところから楽しむというのが改めてお料理って楽しいなと思いました」
「場所もいいと思いますね。人口が減って高齢者が多い中で新しく寄ってくれるくれるような場所がほかにもできるといいと思います」
■2階はコミュニティスペースとして活用
そして2階は、2部屋あった和室がコミュニティースペースへと生まれ変わりました。この日は、島根県松江市八雲町でつづく伝統の和紙「出雲民芸紙」に触れてもらい小物づくりをするワークショップも開かれました。
出雲民芸紙のワークショップを開催 尾野久子さん
「すごくこの造りとかちょうどいい広さ。この場所で出雲民芸紙の存在を知ってもらって、和紙の魅力を知っていただきたいなと思います」
岸本廣美さん
「私が松江の作家さんのもとを訪問したとき、個性が豊かで自然を意識してっていう方が多いなと思ってたのでまず、その方たちを知ってほしいという素直な意見から生まれたこのお店なので、みなさんが交流できるようなスペースとして使っていただけたらなと思っております」
古民家を活用しながら民芸に触れて、その良さも広めたい。松江の伝統がこのスペースで息づいています。