「なんとかして生きていこう…」障がいによる幻覚の恐怖を表現した『日常』に込めた思いとは 青森県七戸町で作品を展示
特集は障がい者芸術世界展で入選を果たした男性です。
自分の感じる不安や怖さを絵で表現しています。
今月26日に七戸町立鷹山宇一記念美術館で始まった「Art to You!障がい者芸術世界展」。
社会生活で何らかのハンディキャップがある人たちが制作した絵画や工芸など、入選した132点が展示されています。
こちらの作品は「日常」。
日常の姿といつやってくるかわからない幻覚の恐怖をボールペンで表現し、ことしの障がい者芸術世界展で入選を果たしました。
描いたのは平川市の活動支援施設「おらんど」に通う對馬考哉さんです。
この作品を描いたきっかけは…。
★對馬考哉さん
「最近の異常気象とか能登の地震とかいろいろあって、情勢がニュースで見ていて不安定で、それがすごく心が痛んでぐちゃぐちゃと描いたものが不安みたいなものに見えたので、そこに生きる自分ということで」
平川市で生まれ育った對馬さんは北海道の大学に進学しましたが、新しい暮らしになじめず統合失調症を患い地元に戻りました。
そして、「おらんど」へ通うようになり絵を描き始めました。
對馬さんはいつも何を描くか事前に決めずに鉛筆やクレヨン、筆を走らせそこで見えてきたものや感じたことを作品に仕上げていきます。
通所者の多くが表現活動を行っている「おらんど」では、これまでに数回作品展を開いています。
★社会福祉法人ほほえみ 今井隆太副理事長
「障がいのある方の生の生活が見えてくるようなアートを一般の方々に見ていただきたいという思いで 自分の価値観を通して作品を見て、皆さまが思い思いに受け取っていただければ良いかなと思います」
今月弘前市で開催された3回目の作品展では、47人の絵画や工作を展示。
對馬さんの絵も飾られていました。
「マグロ解体」
紙に垂らした赤い絵の具から大きなマグロが解体されている姿を連想し完成させた作品です。
★訪れた人
「いろんな想像をかき立てられる作品だなという感じがします」
「おらんど」に通い始めてからたくさんの絵を描き上げてきた對馬さん。
障がい者芸術世界展に出品した「日常」は特に思い入れの強い作品です。
★對馬考哉さん
「常に何があるかわからない不安みたいなものを抱えて生きていることは、健常者も障がい者も同じだと思っているので、何かその不安を受け入れるでもないですけど、なんとかして生きていこうというポジティブな方向に考えていただければ良いなと思っています」
統合失調症による幻覚などに悩まされ不安に襲われることも多い對馬さんですが、その對島さんだからこそ表現できる世界観があります。
★十和田市現代美術館 元館長 藤浩志さん
「自分がここにいることによって、自分の恐ろしさとか恐怖をちょっと引いて見ている そこに作品の強さがあるんじゃないかという気がします。この線にしても勢いがあったりとか細かく揺れていたりとか」
對馬さんの「日常」も展示している「Art toYou!障がい者芸術世界展」は入場無料で、来月17日まで開かれています。