【特集】気候変動と農業「りんご」暑さに強い品種は?別の果物へ?
青森地方気象台のデータによると県内各地で気温の上昇傾向が見られ、温暖化対策が進まない場合21世紀末の県の平均気温はおよそ4.7度上昇すると予測されています。この気候変動に対する現状と取り組みを探ります。
県産りんごは記録的猛暑だった去年「つがる」など早生種の日焼け「ジョナゴールド」など中生種の収穫前の落果、色づきが悪くなるなどの被害が多発し、収穫量は37万トンあまりで過去3番目の少なさとなりました。
去年の猛暑はことしの花芽の数にも影響し結実が少ない園地も見られました。
暑さに強いりんごはないのか。品種改良を行う「りんご研究所」です。
りんごの品種改良は交配しその果実の種を土に植えるところから始まります。種まきした苗はハウスで育成されます。
★りんご研究所品種開発部 初山慶道総括研究管理員
「種5,000個に対して1個品種になれば良いかなと 全然残らないケースもあるし運が良ければいくつか品種になることもある」
翌年には育てた苗の枝を台木に接ぎ木し畑に植え替えます。
★初山慶道総括研究管理員
「交配1年、温室で1年、このほ場で1年 3年でようやくここまで あとは選抜ほ場に植えてから3年 実がなるまでにかかります」
果実ができるまでは少なくても6年、そして品種の登録には20年から30年ほどかかります。最近では6年前に甘さと酸味のバランスが良い「紅はつみ」が誕生。落果も少なく高温でも色が付きやすいのが特長です。ただ研究所の100年近い歴史の中で品種となったのはわずか40あまり、手間と根気を要します。
★青森放送 能代谷俊朗
「こちらはりんごの遺伝子解析などを行っている部屋です 近い将来遺伝子解析室として生まれ変わりより効率的に品種開発が進められることが期待されます」
りんご研究所は老朽化などを理由に2027年度現在の建物の隣りに新築・移転し機能の充実を図ります。
県は新しく「遺伝子解析室」を設置する方針でこれまでの解析に加えどんな果実ができるか予測が可能になるとしています。これにより交配から品種登録まで15年に短縮できる見通しです。
また「人工気象室」も設置され日焼け被害につながる気候が再現できるとしています。
ただ現在の遺伝子解析では落果しやすいか、粉っぽい食感か、病気に弱くないかなどの特性は判別できますが、暑さや日焼けに強い遺伝子の研究はまだ途上段階です。
★初山慶道総括研究管理員
「暑さに強いという遺伝子は今のところりんごではっきりわかっていないので、これから研究がどんどん進んでそういうものが見つかってくれれば良いと思っています」
この日焼け被害が多い「つがる」から別の果物に切り替えるりんご農家もいます。平川市の小野友之さんです。
★りんご農家 小野友之さん
「今見えているところ全部『つがる』の畑だったけれどもモモに切り替えて今モモ」
小野さんは10品種のりんごのほか30アールほどの園地で比較的暖かい地域が主な産地のモモを育てています。
★小野友之さん
「今から15年くらい前に農家を始めましたが始めた年に夏は暑くて早生りんごの『つがる』が葉取りとツル回しをしたら全部日焼けしてしまってそれで『つがる」の代わりに作るものがないかと思って」
猛暑や温暖化が進むことを見据えモモの可能性にかけています。
★小野友之さん
「日焼けしないし台風が来ても大丈夫だし、りんごよりは作りやすいと思っています」
小野さんが所属する農協では現在88人がモモを栽培。「津軽の桃」としてブランド化に取り組んでいます。年間の生産量も200トンを超え徐々に増えています。
★小野友之さん
「りんごよりキロ単価が少し高いのではないかな 青森県=りんごのイメージなのでできるだけりんごをメインに作っていきたいですが、できるのであれば今のままずっと(りんごとモモを)最後まで続けていきたい もしダメだっから南の方の果物サクランボなど北に上がってきて取れるようになっていくのではそれに合わせて作っていくことができたら」
県産りんごの研究施設や生産現場では気候変動に適応するための模索が始まっています。