【J3サバイバルマッチ最終盤】FC今治・司令塔が語る“昇格に今、必要なこととは―”ロングインタビュー
J3リーグは残り7試合の佳境を迎えている。
FC今治は現在4位(第31節終了時点)で昇格圏までの勝ち点差はわずか4。
史上稀に見るこの昇格サバイバルマッチを生き抜くため、今こそこの選手の言葉に耳を傾けたい。プロ生活15年目、MF三門雄大 (みかどゆうた) 選手36歳。
今シーズンはここまで全31試合先発し、プレータイムも断トツでチーム最多。
司令塔として欠かせない、名実ともにチームの大黒柱である。
「年齢を重ねて来た割には逆にコンディションが上がっていて。
凄く充実したシーンを過ごせているんです」と笑う三門選手。
そんなベテランに南海放送テレビ『KICKOFF!EHIME』(10月21日午前10:15~10:30)が密着した。
ここでは番組内に入りきらなかった独占インタビューをデレクターズカット版でお届けする。
*10月5日インタビュアー:南海放送アナウンサー江刺伯洋
(まずはチームの現状について)
もちろん満足はしてないし、昇格圏にしっかり入って上の愛媛FC(現1位)を追いかけたい。今年のJ3は稀に見るかなりの混戦です。1試合で10位くらいまで落ちていた可能性もあるし、逆に1試合で2位になる可能性もある。現状、終盤戦で昇格を争う状況に入れているので高いモチベーションを保てています。
いち早く2位以内に自分たちが入って、少しでも相手にプレッシャーをかけたい。
なので、まずは昇格圏内に入ることを目標にしています。
(これを勝てばもうひとランク上に行けたのに…という試合も)
おっしゃる通りで、去年夏に今治に加入してから今治の良い部分も見ていますが、逆に勝負弱さもしかりです。2位以内に入れるチャンスを自分たちで逃し続けたり…
このゲーム勝てば連勝でノッていけたはずの試合を、自分たちのミスがらみや退場者、立ち上がりの失点で負けたりとか。あと逆転勝ちがないんですよね。
そこを変えていかないと昇格には届かないし、たとえ昇格しても1年で逆戻りもあるので。
僕らの目標はJ2に上がることですが、J2を勝ち抜きJ1に挑戦するのがさらにその先の目標で夢なんですよね。それを考えるとそういうゲームを落とし続けるのは、そこに手が届かない要因になる。そこを全員で改善したいんです。
質問に静かに丁寧に答える三門選手。
これまでのプロ生活でアルビレックス新潟や横浜F・マリノス、アビスパ福岡でJ1を経験。
J2の大宮アルディージャではキャプテンを務めるなど、精神的支柱としても活躍してきた。
そんな三門選手が今治にやって来たのは昨年の夏だった。
実績のある選手がカテゴリーを落としてプレーすることに抵抗はなかったのだろうか。
その答えもやはり、誠実でそして明確だった。
(キャリアで初めてJ3リーグ移籍という決断だったが)
僕がサッカーをする上で大事にしていることでもあるのですが、
(FC今治が)自分に対して期待してくれるのがすごくうれしくて。
移籍の前は試合に絡めなかったり苦しい時期が多かったり…
若い時は(移籍は)ステップアップでしたが、今治に来る時の決断はチームが僕の力を
貸してほしいと、還元して欲しいと言ってくれた時点で悩みはしなかったですね。
逆に僕の力で良ければって感じでした。環境はJ1、J2とは違うが気にしなかった。
ここに来てサッカーをして、自分に刺激を与えたいし皆からいい刺激を貰って、
ホントに心の底からサッカー楽しめているんで。
今治に来てよかったと心の底から思っています。
(自身の役割は、昨シーズンとは違う?)
去年は(シーズン)途中加入だったし、(移籍直前の)大宮では主将をやらせてもらっていたこともあって、自分が言ったことが若い選手らに影響を与え過ぎていると思ったんです。
僕が「右から攻めよう」と言うと「ミカさんが言ってるから」みたいになったし。
それが良いことではないと思ったので去年はほぼ何も言わなかった。
勝っても負けても特にアプローチをしませんでした。
今年はプレシーズンが凄く良くて、このままいったら絶対いいぞと思っていたら、シーズンに入ると… (上手くいかない)。練習では良いものを出せているけど、ゲームでの緊張感とか、責任や期待を背負ってプレーするとか、年間を通してプレーする事の難しさを感じている選手が多いのではないかと思います。
自分のせいで負けたくないとか、自分のところからやられたら…とかという
ネガティブなマインドに持っていかれるのが見受けられたんです。そうじゃないよって。
ゲームに関われて、チームの勝敗に関われるのってすごく幸せなことで
そういう経験をたくさんするから選手として成長していく。
年齢を重ねた時に選手としての価値に繋がっていく。
今でいうと残り試合が少なくなって、残り3試合とかってすごいシビレる。
それを経験するかしないか。昇格争いや降格争いを経験するかしないか。
いろんな経験が選手のものになっていく。
そういう話を今年は色んな選手に伝えていきたいと思っています。
(今治でのプライベートの生活は?)
大宮時代は子どもたちも公園に行って…とか少なかったけど、今治ではしょっちゅう外で遊んだりしていて楽しそうなんです。僕がサッカーで充実しているからこそ、子どもたちや家族が楽しそうにしているので言うことない。ご飯も美味しいですし。
(プレーだけでなく、今治という地域を盛り上げる役目もある?)
コロナもあって交流が少なくなっていたけど、(9月に)初めてファン感謝祭を商店街でやって、今治というクラブがどんどん大きくなっているのを肌で感じたんです。その恩返しはJ2にあがること。それが全てです。勝てばサポーターが盛り上がってくれる、クラブが大きくなる。その中で手の届かない存在ではなく、より近くで交流できているのが今治の良さですよね。色んな所で「頑張ってね!」、「応援してます」っていう声かけが増えて。距離が近い。その為にも勝つことなんです。
ただ、クラブの為には勝つことなんだけど、それ以外にも自分がベテランとして今治に来たのは、今までやってきたクラブでキャプテンをしたり選手会長をしたりして学んできた、という意味もある。ベテランだからこそクラブに言えることもある。
今年は(櫻内)渚が来て「あいさつ・みまもり活動」(FC今治の選手・スタッフが市内の小学校で登下校の児童にあいさつや声掛けをする運動)を始めたりしてくれて、息子と娘のいる小学校でもやらせてもらいました。そういうことは自分がやれることの一つ。
おじいちゃんおばあちゃんとの交流がもっと増えたらいいなとか、クラブに伝えていきたいですね。
ついに昇格サバイバルマッチは最終盤を迎える。
愛媛県民が期待しているのはFC今治と愛媛FCによる
史上初、同県2チームの同時昇格だ。
両チームが上位に居続けているのは、お互いの存在が影響しているのは間違いない。
三門選手は“昇格”に対して人一倍悔しい思いをしてきた経験を持つ。
FC今治が逆転昇格を達成するために今、必要なこととは—
福岡の時も(J2に)落ちて1年目にプレーオフで負けて。大宮も1,2年目で負けて。
“昇格”に対して悔しい想いがある。
あとちょっとで昇格圏なのに負けてきたのもたくさんある。
でも残り3試合のシビレる時に選手の価値が上がるんです。自分はそれを経験してきた。
どういうマインドになるか分かっているので、経験が少ない選手には話したいけど
プレッシャーになる選手もいるので使い分けたいと思っています。
上手い下手でなく僕みたいなオジサンが戦っているのだったら、“俺らも”って若い選手が感じてくれるのが一番伝わると思っています。
どんな状況になっても最後まで諦めずボールを追っかけて、相手のゴールに1点でも多く入れること。自分が先頭切って戦うことが、まずは今治のためになる。その姿を見せれば昇格に届く。届かせたい。自分が先頭切ってやっていたい。
(残りのシーズン、どう臨む?)
平常心でいきたいが難しい。緊張感、一喜一憂も出てくる。
でも、ピッチに出られる選手だけじゃない色んな人の想いを背負ってピッチに立っているってことを感じていれば諦めることは出来ない。
一つのボールに対する執着心を出すのは当たり前になる。それが全てです。
今治はホームで強いけどアウェイで全然だねって言われていたら昇格は出来ない。
言い訳とか、ネガティブになるんじゃなく、そういう時こそ一歩でも前に前に進むのが
昇格に必ず必要。全員が一歩でも前に進むことが全てですね。