【リニア】新年の進展は…カギ握るか“静岡市の解決策”難波市長に直撃(2023年12月28日放送「every.しずおか年末SP2023」)
話を聞いたのは、静岡市の難波喬司市長。難波市長は岡山県出身の67歳で、国土交通省の官僚を経て2014年、副知事に就任。川勝知事の“右腕”として、JRに対する厳しい姿勢で存在感を発揮したのがリニア問題でした。県を退職して4月の市長選で初当選を果たした難波市長。就任後は一転して、県に“モノ申す”場面が目立ちます。
(静岡市 難波市長)
「(県は)ボーリング調査は認めないと言われてますけど、あれは全く理がないと思う」
東京ー名古屋間の2027年開業が難しくなっているリニア新幹線。こう着する県とJRの協議を打開する役割を期待される中、難波市長が考える「リニア問題」解決の見通しは?
(永見キャスター)
「初登庁が4月13日。きょうが246日目です。市長の公務はここまでいかがですか?」
(静岡市 難波市長)
「忙しかったですね。休みがほとんどない。15分単位で予定が入る。なかなか大変ですね」
市長就任から8か月。リニアについて積極的に発信する難波市長にたずねたのは、“あの会見”について。
(永見キャスター)
「難波市長はダイコンを使って『こうだ』っていうのを証明されたり、あれはどのように考えられたのか?」
水が流出することを懸念して、トンネル工事に向けたボーリング調査を行わないよう求めた県に対し、難波市長は「正当性がない」と指摘。その際、トンネルを見立てて説明に使ったのは“ダイコン”でした。
(静岡市 難波市長)
「どう説明するのが1番理解していただけるかなと思って、朝風呂の中でいつも考えるんですけど」
(永見キャスター)
「その中でダイコンとなった?」
(静岡市 難波市長)
「ダイコンがたぶん1番わかりやすくて、水圧は串を刺すのがわかりやすいんじゃないか」
県に異論を唱える場面が目立つ中、気になるのは“元上司”である川勝知事との関係について。その知事がリニア問題の“解決策”として主張しているのが…
(川勝知事)
「現行ルートを前提にした上で、開通できる状況になった部分から開通させるということが、営業実績となり、解決策になると考えている」
神奈川と山梨の間を先に開業させる“部分開業論”です。“元上司”の持論について難波市長はどう捉えているのでしょうか。
(静岡市 難波市長)
「(知事は)リニア推進派だと思う。私が県にいる時から『リニアはやるべきもの』とおっしゃってましたから。ただ推進の仕方。部分開業、あれも推進です。早く世に出そうと思ったら、部分開業が一番いいと思っている。私はリニアの部分開業はあり得ないと思いますが、川勝知事は本当にそう思っておられるから」
知事は「リニア推進派」としながらも「手法に問題がある」と指摘しました。
リニア工事をめぐっては「大井川の水量減少」と「南アルプスの環境保全」という2つの課題があります。このうち「水問題」は、田代ダムの取水を抑えて大井川の水量を確保する案がJR東海と東京電力側で基本合意し、大きく前進。もう一つの「南アルプスの環境」をめぐる議論については、国の有識者会議が「工事を進めながら対策を見直す」とする報告書をまとめましたが、県は「工事をする前」に詳細な調査を求めています。
(川勝知事)
「沢周辺の生態系について事前に予測されていない。こうした課題に対して、有識者会議では十分に議論されず、解決されないまま報告書が取りまとめられた」
静岡市北部にある「南アルプスの環境」をめぐる議論について、静岡市のトップとしてどう考えているのでしょうか。
(永見キャスター)
「現段階で難波市長は、どのくらいリニアの問題というのは進んだと感じていますか?」
(静岡市 難波市長)
「水の問題は解決に近い。問題は生態系の問題。特に高山帯の植物にどういう影響がでるかというところは、詰めの議論が必要。大きく残ってるのは南アルプスの生態系」
難波市長はリニアのトンネル工事により地下水が少なくなるため、貴重な高山植物などにどのような影響が出るのか十分評価できていない、と指摘。副知事時代の部下だった織部元理事を“引き抜いて”、南アルプスの環境保全を担当する「環境政策監」に抜てきするなど、議論を前に進めようとしています。「南アルプスの環境」をめぐる課題は来年、解決の道筋をつけることができるのでしょうか。
(静岡市 難波市長)
「科学的根拠に基づいてきっちり議論すること。どのくらい影響が出そうかというのも大体見えますので。どういう方法で対処するかですね」
(永見キャスター)
「やはり最後に残った問題としては難しい問題ではある?」
(静岡市 難波市長)
「解決できない問題ではないと。全然回避できませんという話ではない」
2024年のうちに、静岡市として一定の解決策をまとめ県に提案する考えを示しました。リニア問題の進展につながるのか。難波市長がカギを握っているとも言えそうです。
リニア問題をめぐっては、28日も動きがありました。
JR東海の丹羽社長は、リニア新幹線の品川ー名古屋間の開業時期を「2027年以降」と変更した工事実施計画について、国交省から認可証を受けとりました。
これまで「2027年」としていた開業時期を「2027年以降」と変更することについて、国から正式に認められた形となります。変更の理由についてJR東海は「静岡工区の着手の見込みが立たないため」と説明していて、丹羽社長は「引き続き静岡工区着工に向けて真摯に取り組んでいきたい」と話しました。