×

【独自密着】海難救助のエキスパート「海猿」のリアル! 挑戦は29歳まで…3回の不合格を乗り越えた “新人潜水士” の覚悟とは(every.しずおか特集)

2023年12月22日 13:42
【独自密着】海難救助のエキスパート「海猿」のリアル!  挑戦は29歳まで…3回の不合格を乗り越えた “新人潜水士” の覚悟とは(every.しずおか特集)

10月、静岡・石廊崎灯台から20㎞ほどの海上で、航行中のタンカーが浸水する事故が発生!

(潜水士)
「結構、浸水量あるね。ちょっと急がないと」

現場にいち早く駆け付け、命がけで船員を救助するのは、海上保安庁の “潜水士”。海難事故の最前線で、救助や行方不明者の捜索を行う「海猿」と呼ばれ、“海難救助のエキスパート”。そこに、1人の新人潜水士がデビューしました。

海難救助のエリート集団「海猿」の新人潜水士に密着!過酷な訓練と、その裏に秘められた思いに迫りました。

“潜水士”のリアル

「海猿」の愛称で親しまれている海上保安庁の潜水士。10月に清水海上保安部に新人潜水士として着任したのが、柴田大介さん(25)です。

(清水海上保安部 新人潜水士 柴田大介さん)
「海が好きという事がありまして、海上保安庁の潜水士というのが、私の中で一番ビビットきた」

柴田さんは、潜水士になるための超難関と言われる選抜試験に4回目の挑戦で見事合格。その後、2か月にもおよぶ厳しい訓練を経て、現在は、巡視船「おきつ」の乗組員として勤務しています。

潜水士は、海上で発生した船の事故などで救助や行方不明者の捜索を行う、海難救助のエキスパート。清水海上保安部には定員4名の潜水士がいます。「海猿」 という愛称がついていますが、彼らの仕事は常に危険と隣り合わせなため、日頃から厳しい訓練を行い、もしもの事態に備えます。

ほろ苦い“初訓練“

10月8日、この日は柴田さんが潜水士となって初めての訓練。まずは先輩たちにあいさつです。

(清水海上保安部 新人潜水士 柴田大介さん)
「緊張していますが、ずっと目標に掲げていた潜水士になることができたので、一人でも多くの方を救助できるように、日々精進していきたいと思います」

訓練では、10㌔の重りを持ったまま立ち泳ぎをしたり、海上に張られたロープを体一つで渡ったりしていきます。

新人としてのやる気を見せようと血気盛んに挑んだものの、訓練は想像以上に過酷。選ばれて潜水士になったという自負から、先輩と同じメニューをこなそうと食らいつきますが、こらえ切れず、何度も海に落ちてしまいます。そして、休む間もなく水中訓練へ。

この日の海中の視界は1m以下。プールでの研修とは違う、本物の海の怖さを目の当たりにします。

(清水海上保安部 新人潜水士 柴田大介さん)
「研修でやっていた時よりも視界が悪くなって、自分が水平なのかどうなのか、地面までの距離などが分からなくなり、中性浮力とかも保てなくなったりしてました」

新人とはいえ、難関を突破したエリート。しかし、初訓練は先輩潜水士との力の差を肌で感じるほろ苦い結果となりました。

(清水海上保安部 新人潜水士 柴田大介さん)
「体力的にも、技術的にも、想定はしていたんですが、本当に全然まだまだ(実力が)足りないなということを、すごく痛感しました」

(清水海上保安部 潜水班長 原田雄平さん)
「新人潜水士にとっては、きょうは負荷の高い訓練だったとは思います。我々のフィールドが浸水転覆している、対象が船舶という場合もあって、加えて、海上が荒れていたり、劣悪な環境というのが十分考えられるので、自身だけじゃなく相手の立場になって、相手のために動ける潜水士になってほしい」

業務は多岐にわたる

厳しい訓練に明け暮れ、日夜、不測の事態に備える柴田さんですが、その仕事は潜水士だけではありません。実は柴田さんの本業は、船のエンジンなどを管理する機関士。この日は、海上で給油作業を行います。

(清水海上保安部 新人潜水士 柴田大介さん)
「潜水士のことだったり、機関科の作業だったりとか、清水の地勢など、いろいろ覚えなきゃいけない事があるので、その辺はちょっと大変だなと思う部分はあります」

“海猿”にあこがれて

海上保安庁の中で潜水士は、全職員のわずか2%の花形ポジション。そのため、潜水士になるには厳しい選抜試験を突破しなければならず、その受験資格も29歳までと、非常に狭き門です。中には人生を賭け、何度も挑み続ける職員も。

「おきつ」の調理担当、多田隼人さん(27)もその1人です。船内の狭い調理場で、毎日、約20人分の食事を作ります。そんな多田さんが潜水士を目指したキッカケは…

(清水海上保安部 多田隼人さん)
「小学生の時に映画の海猿を見て、潜水士になりたいと思いました」

小学生で抱いた夢を、今も追い続ける多田さん。しかし、現実は厳しくこれまで3回、選抜試験に挑みましたが、いずれも不合格。

Q選抜試験は難しい?
(清水海上保安部 多田隼人さん)
「難しいです。年々泳ぎが速い子が入ってくるので、そこに追いつくのも必死で、日々の業務の中で、いま以上に結果を出すのは、すごく難しいと思っています」

27歳となり、体力的な限界と今後のキャリアを考えた末、これがラストチャンスと決め、10月に4回目の選抜試験に挑みました。結果発表は年明け。それまでは夢の実現を信じて、これまで通りトレーニングに励みます。

新人潜水士の覚悟と決意

選ばれし海難救助のエリート集団、海上保安庁の潜水士。

(清水海上保安部 新人潜水士 柴田大介さん)
「ずっと潜水士になりたいと言っていて、一緒にトレーニングをしてきた仲間がいるんですけど、(選抜試験の)壁が高いこともあって諦めてしまったことがあり、そういった方たちの分まで、自分は(思いを)背負って頑張っていきたい」

柴田さんはこれから、たくさんの仲間たちの思いも胸に人命救助の最前線へ向かいます。

(静岡第一テレビ every.しずおか 2023年11月14日放送)