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“黄金の国ジパング”金山開発に揺れるマチ 外国資本が金の試掘調査を計画 住民から反発も 北海道 

2024年9月16日 9:16
“黄金の国ジパング”金山開発に揺れるマチ 外国資本が金の試掘調査を計画 住民から反発も 北海道 

かつて国内有数の金の産地として栄えた北海道のマチで、外国資本の企業が金の埋蔵量の調査に乗り出そうとしています。

地元では環境への影響を懸念する声も上がっています。

金山開発に揺れるマチを取材しました。

オーストラリア企業の子会社が金調査の「試掘権」取得

北海道黒松内町にあるグラッドニー牧場です。

代表を務めている森塚千絵さん。

4年ほど前から肉牛の飼育を始めました。

(森塚千絵さん)「2020年の秋に(牛を)買って冬から飼い始めました。電気牧柵を最初に張ったときにはイタドリがびっしり生えていたので」

自然豊かな土地が気に入り、牧場を始めた森塚さん。

夫婦で育てた牛は50頭ほどに増えましたが、いま大きな不安を抱えています。

山林に囲まれた森塚さんの牧場。

その近くである計画が浮上したのです。

それは「金の採掘計画」。

黒松内町と長万部町にまたがるおよそ14平方キロメートルにわたって、オーストラリア企業の子会社が金を調査する「試掘権」を取得しました。

日本はいまなお「黄金の国ジパング」

7月に開催された住民向けの説明会。

オーストラリアの企業の代表者も出席し、会場を撮影しない条件で取材が許可されました。

そこで配られた資料にはー

見慣れない地図に「JAPAN」の文字。

「キン・ギン エクスプロレイションは金鉱の発見を目指す企業」などと記されています。

(子会社のジャペックス 細川泰行さん)「キン・ギン エクスプロレイションという豪州の会社はですね、探鉱会社として設立されて、彼らのターゲットはですね、日本なんですよ。海外ではなくて日本です。海外の鉱山技術者はですね、日本は昔からのジパングだ、金の国だと。私どもとしてはなんとかボーリングまでさせていただきたい」

外国の企業とって、日本はいまなお「黄金の国ジパング」なのです。

調査の中で最も興味を示した場所がー

(子会社のジャペックス 細川泰行さん)「私ども一番関心を持ってここでやらせていただきたいなと思っているんですけども、ここは昔の採石場があります。はっきり言えばメインがここなんですよ。この場所にあるかないかを探りたい」

明治時代に発見された「静狩金山」

(青柳記者)「こちらの採石場跡地周辺が重要な調査地点の一つとみられます」

長万部町の静狩地区にある採石場の跡地です。

かつて、この周辺には静狩金山がありました。

静狩金山は明治時代に発見され、戦前の金の産出量は5089キロと全国9位の産出量を誇っていました。

調査のエリアに隣接する森塚さんの牧場です。

牧場の中を流れる幌加朱太川は、牛の水飲み場になっています。

森塚さんは、鉱毒で川が汚染されたり水が枯れたりするのではないかと、掘削の中止を求めています。

地元の住民は環境への影響を懸念

(森塚千絵さん)「ここに流れている水というのは本当にきれいなんですよ。それがもしかしたら枯れてしまうとか、鉱毒で使えなくなってしまうというのは絶対的にダメというのがありました。この環境を乱してほしくないということで、黒松内・長万部の静狩地区には入ってほしくない」

調査エリアの近くには幌加朱太川のほか、道内有数の清流として知られる朱太川が流れます。

(千葉進さん)「天然遡上だからねここは。放流は一切していない。朱太のアユはほかのアユより身は締まってるし香りはいいし」

アユ釣りが解禁となったこの時期、朱太川漁協の千葉進さんは、釣り上げたアユを客に販売しています。

掘削調査の説明会に参加しましたが、不安をぬぐい切れませんでした。

(記者)「企業側は有毒なもの出さないと言っていましたが」

(千葉進さん)「全く不安ですよそういうことは。いくら出さない出さないと言っても出るんですよ。それだけは本当にやめてもらいたいね」

掘削調査の説明会でも、オースラリア企業の説明に住民から反対の声が相次ぎました。

(説明会出席者)「何言ってるかわからないね!!」

(説明会出席者)「黒松内町及びその近隣での試掘、あるいは採掘は一切やめていただきたいと私は思います」

黒松内町の鎌田町長は、環境への影響を懸念しています。

(黒松内町 鎌田満町長)「率直に言うと、自然環境とかの影響は本当にないのかどうかというのが一番の我々の関心事ですし、どちらかというと不安感の方が強いと言ってもいいと思います。川ということに関しては非常にデリケートな問題として受け止めていると思います」

一方、静狩金山があった長万部町には、にぎわっていた時代の資料が保管されています。

およそ2000人の従業員が働き「金湧く静狩」と呼ばれていたといいます。

かつては「金湧く静狩」と呼ばれる

しかし、戦後は採算が合わなくなり、1962年に閉山しました。

(長万部町 木幡正志町長)「静狩地区というのはいま500人の人口を割っちゃっているけれども、一番鉱工業として栄えたマチ。そのマチの人からしたら、再来の夢がもう一回起きるのかなという希望もあると思う。みんなに聞いてみたら“知りたいよねあるかどうか”って。“うん知りたいな”なかったらあきらめる。あったらロマンだよね」

金の掘削は希望となるのか、それとも分断かー

企業側は今後も説明会を開き、理解を得られるよう努めると強調します。

(キン・ギン エクスプロレイション グレッグ・フォウリス会長)「私たちは黒松内が環境に対して非常に高い意識を持たれていることを認識していますので、どうやったら環境への意識が強い黒松内に受け入れてもらえるのかを探していきたいと思っています」

金の掘削は地域の希望となるのか、それとも分断を招いてしまうのかー

かつて栄えた金山の開発にマチは揺れています。