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北海道6割以上が“消滅可能性” 止まらない人口減少 移住者増加で危機脱却のマチも

2024年5月31日 5:00
北海道6割以上が“消滅可能性” 止まらない人口減少 移住者増加で危機脱却のマチも

将来、ふるさとが消えるかもしれません。

人口減少が進む現状をうけ先月、北海道内では6割以上の自治体が“消滅する可能性”があるというデータが発表されました。

地域を守るために取り組む対策とは…?

新幹線開業でにぎわうマチ

今月2日。

北海道新幹線の木古内駅には続々と人が降りてきます。

このにぎわいは、駅のすぐ近くにある「道の駅」でも!

朝とれたばかりの新鮮なわかめやカキなど、地元の特産品がそろいます。

たくさんの人が並ぶ店が…

お目当ては…?

(北斗市からの客)「塩パンです」

木古内の海水から作られた塩を使った「塩パン」。

外はサクサクで、中はもっちりな食感が特徴です。

(北斗市からの客)「うん!おいしい!」

(函館からの客)「昔に比べるとにぎわっていると思います」

8年前、北海道新幹線が開通し、交通の利便性が向上しました。

人口4千人足らずのマチの道の駅に去年、過去最多の62万人の観光客が訪れました。

消滅の危機…10年で人口25%減少

しかし、地元はある課題に直面しています。

それは「人口減少」です。

(人口戦略会議 増田寛也副議長)「消滅可能性自治体の数は744」

「消滅可能性自治体」とは、2020年から50年までの30年間に、20歳から39歳までの若い女性の人口が半数以下になると見込まれる自治体のことです。

道内では179のうち、函館や釧路を含む117の市町村が該当すると発表されました。

将来、ふるさとが消えてしまうかもしれない。

対策が急務となっています。

木古内町の女性の人口減少率は、道内で2番目に高い82.8%。

この10年で人口は25%も減りました。

創業65年、町内の飲食店です。

お昼時はいつも客でにぎわいをみせます。

人気のメニューは、自家製の麺にピリ辛のあんかけがたっぷり乗った「南ばんラーメン」です。

木古内で生まれ育った店主の石川良一さん62歳。

地元の客は年々減っていると言います。

(石川屋 石川良一代表)「寂しいですね、あまり人が歩いていない。昔は本当ににぎやかでした」

かつては道路を囲うように軒を連ねていた駅前の商店街。

店の数は徐々に減り、働く場所も少なくなりました。

(地元の客)「本州の方に行ったりしています。(同級生は)2割残っているか、いないかです」

石川さんは将来、息子の純也さんに店を継いでもらいたいと考えていますが、厳しい現状は避けられません。

(石川屋 石川良一代表)「息子が手伝ってくれているけど、将来的にお客さんが来ないと成り立たない商売なので、続けていけるか厳しい感じはします」

人口減少をどう食い止めるか…

そこでマチが取り組み始めたのが「移住と定住」の支援です。

マイホームを取得する人に100万円から最大600万円まで補助します。

しかし、人口増加につなげるまでには道半ばといいます。

(木古内町 鈴木慎也町長)「この問題に全力で取り組まなければならない。少子化の原因は何かというと、お母さんになる人が少ない。公共交通の利便性や地域性を生かしてマチづくりを進めるべきだと、しっかり危機感を持っている状況です」

“消滅の危機”脱却 子育て世帯が注目のマチ

ほかの自治体に先駆けて対策を進めてきたマチがあります。

およそ5000人が暮らす上士幌町です。

今回発表された女性の人口減少率は「28.4%」!

「消滅可能性自治体」からは脱却しました。

はだしで元気に走り回る子どもたち。

町内のこども園です。

脱却したカギは、この場所にあります。

(講師)「What's your name?」

英語を学び異文化交流を進めるなど、子どもの教育環境を整えています。

さらに、こども園の利用料や給食費はすべて無料です。

(園児)「ニンジンもおいしい」

移住者増加…生き残りをかけた対策は?

実は10年前の調査で、将来消滅する可能性があると指摘された上士幌町。

この結果に危機感を持ち、財源であるふるさと納税も軌道に乗ったことから、先進的に「子育て支援」に力を入れてきたのです。

現在、こども園に通う園児およそ170人のうち移住者は4割を占めています。

さらに、こんなサポートも…

(上士幌コンシェルジュ 井田純子さん)「こちらの住宅が移住を検討している方に使っていただく体験住宅です」

家具や家電がそろっていて短期間、上士幌での生活を体験できます。

(上士幌コンシェルジュ 井田純子さん)「すぐに何も知らないところに飛び込んでいくことは勇気のいることだと思うので、ぜひ生活体験住宅を利用して、町の施設や人に積極的に触れ合いマチの人と繋がりをつくってほしいと思う」

この経験から移住を決めた家族も少なくありません。

岡山県から移住してきた渡辺さん家族です。

決め手となったのはやはり子育て環境でした。

(渡辺裕介さん)「子育てに手厚いところが1番魅力に感じた」

(渡辺雅美さん)「(支援は)とても心強いです」

母親の雅美さんは移住後、町内で唯一となる助産院を開業しました。

後押しとなったのはマチの「支援事業」です。

起業する際、最大300万円を町が補助します。

(渡辺雅美さん)「私は上士幌に来ていないと開業していないと思うと、ここに来たことで新たな働き方、子育てをしながら自分のやりたいことを両立できる環境は、上士幌だったからと思っています」

(渡辺雅美さん)「上士幌どう?」

(子ども)「楽しい」

(渡辺雅美さん)「どんなところ楽しい」

(子ども)「サッカー」

働きながら安心して子育てができる環境…

上士幌だから実現したいまの暮らしです。

(上士幌町 竹中貢町長)「時間がかかっても、自分の生き方などしっかり達成できる環境をつくる、しかも子育ても安心してやれる、任せることもできる。こんなふうにできるとその町が魅力的な町になってにぎやかな地域になると思います」

町全体で暮らす人たちが豊かさを実感できるような対策が求められています。

人口戦略会議のメンバーで北海道の人口減少問題に詳しい専門家は、出生率の低下を食い止めるために「働き方」が1つの大きな鍵になると指摘します。

(人口戦略会議 五十嵐智嘉子さん)「それぞれの職場においていかに仕事をしやすくするか、若い人・子育て世帯を支える地域をどう作れるのかということが1つ大きなことかと思う。少子化を抑えることは、相当時間がかかって、特効薬がないと言われている。あきらめずに続ける、やってみるということが必要だと思う」

歯止めがかからない人口減少と、どう向き合うかー

いま暮らしている私たちに託された課題です。