走れ!かぼちゃ電車 旧新潟交通電車線 あの頃の思い出を乗せて《新潟》
緑と黄色の車体が1年ぶりに動き出しました。
かつて、越後平野を走り抜けた「かぼちゃ電車」。
初めて乗る人、昔を懐かしんで乗る人…。
当時の電車線が開業して今年で90周年。
「かぼちゃ電車」は、思い出を乗せて、ゆっくりと進みます。
《乗車体験の参加者》
「すごく古い電車だったので乗れてとても楽しかったです。家族で乗れてよかったです」
1933年に開業した新潟交通電車線。
新潟市の白山前駅と燕市の燕駅を結んでいました。
沿線の住民は「かぼちゃ電車」に乗って学校や職場に向かいました。
「電鉄」の愛称で親しまれましたが自動車の普及などで利用客が減少。
1999年に廃線となり66年の歴史に幕を閉じました。
新潟市南区にある旧月潟駅。
ここに3両の「かぼちゃ電車」が保存されています。
駅舎の雰囲気は廃線となった当時のまま。
時刻表や運賃表などもそのまま残されています。
この日は、市民団体「かぼちゃ電車保存会」のメンバーが車両の補修をしていました。
保存会は、年齢や職業も様々、38人の会員がいます。
日々の掃除から車両の補修、イベントの開催などボランティアで活動をしています。
《かぼちゃ電車保存会 平田翼会長》
「交通機関としての使命を終えた電車ですが、
楽しんでもらえるような新しい役割を与えて喜んでもらえたらと思います」
イベントに向けた試運転の日。
「アント」と呼ばれる車両を動かす機械で往復100メートルほどを走らせます。
去年、23年ぶりに動いた「かぼちゃ電車」。
今年も乗客を乗せて走らせようと保存会のメンバーが打ち合わせを行っていました。
《かぼちゃ電車保存会 平田会長》
「異常時、不具合時、不明点がある時は必ず列車を止める。すぐに報告・相談する。
まいっか、大丈夫かな、というのは絶対やめてねと。
走行は必ず指令の指示・決められた手順に従ってください」
そして、試運転。
《運転士》
「はい、前方よし後方よし」
営業当時の本物の制服に着替えた運転士が乗り込みます。
アントで引っ張り、車両が動き出しました。
1年ぶりに走る「かぼちゃ電車」は順調な滑り出し。
普段は、駐車場にしているところを進んでいきます。
しかし、折り返し運転の時でした。
急に止まってしまいました。
《指令》
「空気圧下がりましたので空気充填します。
アントのエンジン一回切って手歯止め入れて下さい。」
《運転士》
「圧縮空気の方が足りなくなって、
緊急ブレーキの方が作動して動かなくなりました。
練習用に何回かかけてたんで足りなくなりました」
《かぼちゃ電車保存会 平田翼会長》
「何とか無事動いて安心していると共に、
もうちょっと色々調整が必要だなと、
まだまだ仕事が残っているところです」
9月24日、乗車体験の当日。
チケットは5分で完売しました。
《係員》
「切符を拝見いたしますので切符をお手元にご用意ください」
完全予約制の360席。
親子連れや鉄道ファンなどが次々と乗り込みます。
《乗客》
「すごく趣がある車内で雰囲気あっていいなと思っています」
いよいよ電車が動き出しました。
懐かしの「かぼちゃ電車」に乗って小さな旅へ出発です。
ゆっくりと過ぎていく車窓・・
歴史を刻んできた車両のぬくもり・・
子どもも大人も、かけがえのない、ひと時となりました。
《乗車した親子》
「こうやってあの廃車になった電車に自分の子供が乗るなんてこと、
その当時は思ってもいなかったんですけど、とてもいい思い出になりました」
《乗車した男性》
「現役の時、乗ったことがなく初めて乗ったのですが、
なぜかよくわからないけれども結構感動しました」
《かぼちゃ保存会 平田翼会長》
「小さい子どもたちもニコニコしながら手を振っているのを見て、
すごくうれしい気持ちになりました。
昔から乗っていた方が懐かしいって思うのと同時に、
若い方が楽しいとかもっと知りたい、
こんな雰囲気なんてエモいとか色々な感情で
新しい価値をみつけてもらえたらいいなと思います」
乗客たちの様々な思いを乗せて走った「かぼちゃ電車」。
緑と黄色の姿は、これからも世代を超えて残り続けます。