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村で唯一のパン屋さん 地元の人に愛される理由とは?《新潟》

2023年10月7日 13:31
村で唯一のパン屋さん 地元の人に愛される理由とは?《新潟》


この春、関川村に、あるパン屋さんがオープンし人気を集めています。
村で唯一のパン屋さん、オープンのきっかけ、地元の人たちに愛されるワケを取材しました。


こんがりと焼きあがったパンが次々に並んでいきます。
香ばしい香りに誘われるように地元の人たちが集まってきました。
毎週金曜日に開く小さなパン屋さん、その名も「ぽっかりパン」です。


《お客さん》
「だいたい来てます、美味しいです」
《お客さん》
「家族がみんなパンが好きだから楽しみにしています」


県の北部に位置する関川村。
「ぽっかりパン」は、村にあるレトロな洋館・旧斎藤医院の玄関先で今年3月にオープンしました。

週に一度、金曜日になると地元の人たちが行列をつくります。
早い時には開店から1時間で完売するといいます。

タンスをリメークしたショーケース。
地元のブルーベリーやソーセージを使ったパンがずらりと並びます。

パンを作っているのが村上市出身の吉田美香さんです。
東京で10年間、パティシエの仕事をしていました。

おととし、地域おこし協力隊として関川村に赴任。
村の食材を使い、特産品の開発などに取り組んでいます。

実は、関川村には、この10年ほどの間、パン屋さんがありませんでした。


(吉田さん)
「コメどころなのに、パンが好きな人が関川村に多くて、
パンを作って欲しいというのは当初から言われていました。
8月の豪雨災害の時に、何かできることないかなって思って、
手元に結構な量の小麦粉があったので」


オープンのきっかけは、県の北部を襲った去年8月の豪雨。
関川村にも多くの被害が出ました。


当時、吉田さんは 被災地に手作りのパンを届けたといいます。


Qパンをつくったことは?
(吉田さん)
「全く、全く、やったことがなかったです。
できるかどうかわからないけど、できる範囲でやってみましょうと」


パン屋さんのない、この村で、パンを作って欲しい。
そんな地元の人たちの要望を受け、店を開くことを決意したといいます。


この日はパンの仕込み作業。営業日の数日前から始まります。

《吉田さん》
「関川村の食材とパンが相性が良くて、自分にとっても勉強になったし、
できることが増えたなって思いました」

パンに使うのは、地元・関川村の食材。
規格外となった野菜などを安く譲り受けています。


《仕入れ先 関川農事 赤塚友美さん》
「トマトを使って何かするってほんと出来ないので、
吉田さんがいて、本当に助かります。
私の可能性も上がります」


パンに使っているソーセージの工房では。


《女川ハム工房 大島信一さん》
「使ってくれて嬉しい、それだけさ。
美味いパンだ、ソーセージだって聞こえてくると、
作っててよかったと思います。吉田さん頑張れー」


仕込み作業が続き、関川村の食材を使ったパンが焼きあがっていきます。
その数は400個ほど。

そして、金曜日、週に一度の営業日を迎えました。


吉田さんを手伝うのも地元の人たちです。
午前11時オープン。
開店と同時に多くの人が吉田さんのパンを求めてやってきます。

《お客さん》
「初めてだったんです。お昼に食べます、お父さんと」

《お客さん》
「美香さん、よくぞ関川村にきてくれたと。
ずっと、ここにいて、おいしいパンを作ってもらいたいです」


地域の交流の場にもなった「ぽっかりパン」。
店の名前は関川村の方言「ぽっかりもち」に由来しています。

「思いがけなくもらったうれしい物」。
そんな意味が込められています。

そして…

「本日完売しました!」


《吉田美香さん》
「感謝。ありがとうって気持ちですね。
自分のできることで、村の役に立てばいいなと思いでやってます。
本当に周りの方が主人公で、地域の方たちの励ましでここまで来れたので、
それに一生懸命応えたいなって、そういう想いがパワーになってるかな。
みんながいて”ぽっかりパン”です」


災害をきっかけに、思いがけなく始まった村唯一のパン屋さん。

金曜日、小さな店に笑顔が広がります。

「ぽっかりパンへお越しください!」