「歌会始の儀」最年少入選 日常を短歌に紡ぐ高校生
先月、宮中で行われた「歌会始の儀」に、宮崎県延岡市の高校生・森山文結(もりやま ふゆ)さん(16)が参加しました。
国内・海外から1万6250首の応募があった中で、一般入選者10名の一人に選ばれた文結さん。
文結さんは今回最年少での入選。県内からの入選は、実に31年ぶりの快挙となりました。
■天皇皇后両陛下の前で披露された作品
題目の「夢」という文字を書いた際に、文字が掠れてしまっていたこと、ペンだこに墨がついた実体験をそのまま詠んだのだそうです。
日常の何気ない風景の中に、将来への不安や期待を織り交ぜたこの作品。
天皇皇后両陛下の前で披露され、特に「掠れた夢といふ字を見てる」という表現について「よく詠めていてよかったね」とお言葉をいただいたといいます。
短歌との出会いと創作の魅力
文結さんは短歌を始めてまだ2年ほど。
俳句をたしなむ母や祖母の影響で、幼い頃から俳句や短歌の世界に親しんできました。
俳句と短歌の違いについて、「俳句は情景を描くもの、短歌は自分の心情を表現できるもの。両方違った良さがある。」と語る文結さん。
普段から印象に残った言葉や感情をノートに書き留め、そこから俳句や短歌を生み出しているそうです。
文結さんが所属する文芸部・俳句同好会のメンバーは、文結さんの歌や句について「輪郭がぼやけていて、現実との境界線が曖昧な感じをすくい取って詠むのがすごく上手」と話します。
友人との会話から生まれる短歌
友人の恋愛話や、日常の些細な出来事も、文結さんの手にかかれば美しい短歌に生まれ変わります。
- 「この恋が 終われば死ぬと言い放つ 百物語みたいなあのこ」
- 「打ち込んだ 文字を消してはまた打って 少しの毒に気づいてほしい」
- 「マフラーと髪の隙間に光さす 切ったばかりの毛先が溶ける」
- 「歌にして 歌にして歌に 歌にして もう会うことのない君のため」
(もう会わない人のことを考えていても、歌にすれば形に残るから自分は覚えておけるよという歌)
友人との何気ない会話や出来事をもとに作られる短歌は、どこか儚く、それでいてリアルな感情が込められています。
文芸部・俳句同好会のメンバー、文結さんの母・栄子さんなどが参加して開かれる「句会」では、共通のテーマで詠んだ句を持ち寄り講評し合います。
将来の夢と短歌への想い
今回の歌会始の儀での入選を受け、文結さんは宮崎県の「県学生栄誉賞」も受賞しました。
文結さんは「短歌は自分の気持ちを残していける一つの手段。等身大の自分を変えずに趣味として続けたい」と話します。
将来の夢は「図書館の司書」なのだそう。
瑞々しい感性を生かした今後の作品にも期待されています。