17年間で150人以上を救助している山形県警ヘリ「がっさん」 航空隊の1日に密着
青い機体とオレンジのラインが印象的な山形県警察のヘリコプター「がっさん」です。遭難者の救助や、災害時の支援などで活躍します。この機体を運用しているのが県警航空隊です。今回、特別な許可をもらい、同行取材しました。
南陽市でことし5月、県内で過去最大規模となる山火事が発生しました。
中川悠アナウンサー「発生から20時間が経ったが煙の勢いは止まらない。非常に広範囲にわたって山肌が茶色く焦げています」
機動力を生かし、地上からでは到達が困難な場所で上空からの調査を担う、県警ヘリ「がっさん」。それを支えるのが東根市の山形空港を拠点とする県警航空隊、そして7人の精鋭です。
県警航空隊・操縦士浦谷十字課長補佐「きょうの予定、午前中は尾花沢署との業務。午後からは短く2本立てで計画」
航空隊の活動は朝礼から始まります。出発前の天候、任務で必要な情報が共有されます。
県警航空隊・操縦士小山晴史さん「どうしても雨が降ると雲が低くなるので、雲の高さは一番注意する点」
現在の機体は2代目、2008年に導入されました。「がっさん」は、山形空港から酒田市・飛島まで、直線距離にして110キロメートル余りを最短28分で移動することができます。
午前中の業務でメインの操縦士を務める阿部徹さんです。「がっさん」は現役の警察官が操縦しています。
県警航空隊・操縦士 阿部徹さん「警察官3人が飛行担当、職員4人が整備担当。私と操縦士の浦谷さんはヘリコプターの免許を持って警察官になった」
機体の整備などは警察の職員が担当します。整備歴35年以上のベテラン・秋浜健一さんです。
県警航空隊・整備士秋浜健一さん「きょうも安全に飛んで、何事もなく帰ってきてくれるのが、整備士として一番のところです」
山形市出身の小山さんは、県警での選抜試験を経て航空隊に配属されました。操縦に必要な免許は持っていませんでしたが、防衛省に出向しおよそ1年半、必要な資格や知識を身に付けました。
県警航空隊・操縦士 小山晴史さん「警察官の中から操縦士を募集する機会があったので面白そうだと思って手を挙げました」
やりとり「小山さんは選抜されてここにきているので超優秀。ホープの中のホープです」「いやいや、もう違います」
現在は操縦士として経験者の先輩と同じ任務についています。
「がっさん」での活動は山岳遭難者の捜索・救助、上空からの調査・パトロール、災害時の物資の輸送など多岐にわたります。
県警航空隊・操縦士 阿部徹さん「午前中は災害危険個所の調査ですね山際とか。実際に災害が起きた時にいきなりそこだと言われてもなかなか目的地に到達できない」
災害に備え東根市内にある孤立集落の事前調査に向かいました。
今回、特別な許可を得て、「がっさん」に乗り込み、中川アナウンサーも同行取材しました。
中川アナウンサー「(Q聞こえますか)聞こえます。よろしくお願いします」Q・機内の広さは「思ったよりも広々、足を伸ばせるくらい。かなり余裕がある印象」
「がっさん」は操縦席に2人、後部座席に最大6人の合わせて8人まで乗ることができます。整備士も乗り込み、操縦士をサポートします。
中川アナ「こうやってヘリコプターに乗っていてもあまり速度を感じることはありませんが、実際にはけっこう、強い風が吹いています。かなり速いスピードで飛んでいることがわかります。ゆっくりと旋回しながら現場を見ている状況。目視して、双眼鏡を使って詳しく見ている」
ヘリコプターが着陸できるかどうか、物資の荷下ろしが可能かなど孤立集落内にある公民館周辺を調べた結果、あることに気づきました。
県警航空隊・操縦士浦谷十字課長補佐「意外と密集地が近いというのと、想定していたよりも近くの樹木が高いことに現地確認をして気づかされました。結果としては障害物が多いということで、着陸は困難であると判断した」
一度空港に降り立ち、続いて行われたのはー。
救助訓練「点検よし!」
警備2課の警察官との合同救助訓練です。
中川アナ「こちらでは訓練が行われています。実際に隊員がヘリコプターから降りてきて、要救助者を持ち上げ運んでいきます。いま無事救助され、隊員と要救助者がヘリコプターに入っていきます」
この映像は置賜地方で実際に起きた山岳遭難の救助の様子です。遭難者がとどまっていたのは地上からの到達が困難な断崖絶壁でした。
県警航空隊・整備士秋浜健一さん「県外の登山者が途中でルートを外れて、実際に下ろうとしたら非常に急な所を登ってきたので、 下るにも下れなかった」
整備士の秋浜さんはこの時、機内から救助隊員をサポートしました。
県警航空隊・整備士 秋浜健一さん「救助した人を中に入れドアを閉めた時は、自分の中ではかなり安心した状態です」
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、人の流れが回復したことで山岳遭難は増加しています。去年7月から8月の山岳遭難の件数は25件で、27人が遭難し、コロナ禍前の水準に戻りつつあります。遭難者のおよそ7割が県外の観光客でした。
県警航空隊・操縦士浦谷十字課長補佐「山形県は元々災害の少ない県だったが、台風の大型化や前線の活発化で水害も多くなってい。地上部隊との連携が必要なので、情報共有や連絡体制などしっかりとることを今心がけている」
17年間で150人以上を救助している県警ヘリ「がっさん」ー。そして、救助を担う隊員たち。県民の命を守るため、日々の活動が続きます。